第57話  階段

フェリクス達が階段を下に降り始めて、結構な時間が経っているが、まだ、ドワーフたちの住処にはたどり着いていなかった。


「まだなの?さっきの倍は歩いている感じがあるけど?」

「それはこの階段が山を回る様に出来ているからだと思うよ」

「このちょっと曲がっている階段の事?」

「そう、俺たちは直線で山を登ったんだけど、今は山の周りを回りながら下っている感じだから、長く感じるんだ」

「なんで直線の階段じゃないのよ」

「それはドワーフの住処が、山より下だからだよ、直線で階段を作ると真下に落ちる穴になっちゃうよ」

「だとしてもこれは長すぎない?」

「シルフはちょっと気が短い気がするよ、少しはこの階段の作りの素晴らしさを感じたらどう?」

「この階段の何がいいのよ」


フェリクスの指摘にシルフは階段の何が素晴らしいのか、分からなかった。


「この階段には長い階段を飽きない様に創意工夫がされているんだ」

「どこがよ、同じ階段にしか見えないわ」

「この階段は、飽きが来ない様に一段一段色が変わっていて、しかも、光の当たり具合でさらに色の変化が起こるんだ」

「言われてみればそうかも知れないけど、退屈が無くなるほどとは思えないわ」

「これが分からないとは、シルフは美的センスがゼロだね」

「余計なお世話よ、それにしてもよく、こんな風に山をくり抜いて崩落しないわね」

「それはドワーフの技術の賜物だね、いろんな魔法も付与されてそうだから、普通の攻撃だとびくともしなさそうだな」

「そっちの方がすごいと思うんだけど・・・」

「まぁ、この光景でも楽しみながら、ゆっくり行こうよ、別に時間が迫っているわけじゃないんだから」

「確かにそうね」


フェリクスに言われ、シルフは周りの光景を注意してみるようになる。それが始まって1時間ぐらいたった頃、下の方から別の明かりが見えてきた。


「やっとだわ」


明かりに影が映った。近くに誰かいる様で、フェリクスは身構えながら、ゆっくりと階段の出口を覗いた。もしかしたら、ドワーフたちが勢ぞろいでフェリクスを待ち構えているかもしれないと不安が頭を過る。


「よう、誰かと思ったら、ダルクんとこの三男坊じゃねぇか」


数人の護衛と共にフェリクスを出迎えたのは、ドワーフの王、クライスト・カリヌーンその人だった。

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