第52話 黄金の果実
「今回も勝負は俺の勝ちだな」
『『『また、負けた』』』
小人の精霊たちはそろってがっくりと頭を落とし、フェリクスの周りをぷかぷかと飛んでいた。
「精霊相手に何をしているんですか、フェリクス君」
呆れた顔でアリサはフェリクスの方を見ていた。
「何って、真剣勝負だよ」
フェリクスの声に同調するように3人の精霊は声を上げた。
『『『勝負、勝負』』』
「口を出した私が間違いでした」
精霊たちとフェリクスの様子からアリサは自分の発言を少しだけ後悔した。
「まぁ、フェリクスもここまで来たなら、一緒に森を見て回りましょうよ」
「一緒に・・・」
ノチスは一緒と言う言葉に目をキラキラさせている。
「ま、いいか、それで次見て回る場所ってもしかして、ここ?」
フェリクスたちの目の前には黄金の果実をつけた黄金の木が広がっていた。
「そ、ここが次の目的地、黄金林よ」
黄金の木に日の光が反射し、辺り一帯がさらに輝いていた。
「輝いて綺麗ですね」
「そうか?黄金がギラギラして、見づらいだけだろ」
「うざったいわよね、あのギラギラ」
「アンタらの感想でいろいろとぶち壊しよ」
「綺麗ですー」
「ノチスちゃんの感想は素直で癒されるわー」
ウンディーネはノチスに抱き着くとすりすりと顔をくっつけていた。
『この果実美味しいよ』
『おいしい』
『食べよー』
いつの間にか、小人の精霊たちは黄金の木になっている果実を一つ取って、3人で仲良く食べていた。
「俺たちが食べてもいいのか?あの果実」
「別に大丈夫よ、結構おいしいから、どうぞ、ご賞味あれ」
「この果実を食べるのも久しぶりね」
シルフやウンディーネはもうすでに黄金の果実を手にして食べようとしていた。その様子を見た、フェリクスとアリサも果実を取った。
皆に黄金の果実が行き渡った所で一斉に黄金の果実を食べ始めた。
「おいしい」
「うまいな」
「おいしーですー」
フェリクスの口の中には僅かに酸味と盛大な甘みが口の中に広がった。その味はこれまで食べたどの果実より美味しかった。
「この果実にはね、神力がたくさん詰まっているのよ」
「そうなんですね、だからこんなにも体に力が沸いてくるんですね」
「こんな果実があるのか」
「どうして、ここにこんなに便利な果実があるかというと、それはね、ここの精霊の森の役割にも関係しているのよ」
「役割ですか?」
「それは、ここ精霊の森が移動することにも関係しているんだろうな」
「その通りよ、ここ精霊の森は各地の神力が溜まる場所から神力を吸い取っているのよ」
「吸い取っている、ですか?何で吸い取る必要があるのですか?」
「それは神力が溜まってしまうとその辺の地域や魔物とかに悪影響を与えてしまうのよ、だから、この森が定期的にガス抜きをしているのよ」
「そんな理由があったのですね」
「つまり、吸い上げた神力がこの実になっているってわけか」
「その通りよ」
説明を終えたが、皆はまだまだ、黄金の果実を食べたいらしく、新たに果実を取った。
「この黄金の果実、高く売れそうだな」
フェリクスがボソッと呟いた言葉に皆から非難の声が飛んだ。
「フェリクス君、見損ないました」
「そうよ、ここをそんな目で見るなんて、私はユグドラシル様に申し訳が立たないわ」
「お・・」
「流石にそれはマスいわよ」
「ご主人様・・」
一方的な非難が飛び、フェリクスの声は簡単にかき消されている。
「話を聞け、お前ら」
流石のフェリクスも話を聞かない皆に、声を張り上げる。
「いいか、別にこの黄金の実を独占してひと稼ぎするなんて俺は発言してないだろ、ただ、この実が高く売れそうだと言っただけだ、それだけで何も悪いことをしてないのに、あれよ、あれよと人の信用を落とすな」
「でも、売ることは考えたんですよね」
アリサはまるで売ることを考えた時点だ、ダメだと言うような言い草だった。
「あのな、売ること自体を考えるのが悪いことなのか、俺は商人だ、物の価値を日常的に考えるのが普通だろう、それにな、うちの商会は公平な取引を信条に取引をしているんだ。仮にこの黄金の果実を取引するにしても、その分、同価値の何かするだけで、悪徳商人のような真似は絶対しないと言える」
フェリクスの言い分に一同、反省の面持ちを浮かべた。
「わかってくれたなら、俺はそれでいい、さ、食事の続き」
若干の気まずさが流れるが、フェリクスは気にしないと言った感じに次の黄金の果実を手に取って食べ始めた。
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