第50話 精霊たちの遊び
ウンディーネ、アリサ、ノチスの3人は湖から離れ、森の中を歩き回っていた。
「ほかにはどんなところがあるのです、ウンディーネ」
「それは見てのお楽しみよ、アリサ、ほら、見えてきたわ」
「あれは何なんですか?」
3人の目の前に広がってきた光景は、大人の精霊たちと子供の精霊たちが戯れて遊んでいる姿だった。あちこちで炎や風といったものが飛び交っていた。
「あれはノチス大人の精霊が子供の精霊に力の使い方を遊びとして教えているのよ」
「そんな風に教えているのですね、見ている側からしたら、微笑ましいですね」
「楽しそうです」
ノチスはまるで遊びに加わりたい子供の様に精霊たちの様子を食い入りように見ていた。
「加わってみたい?」
その様子を見ていたいウンディーネはノチスの気持ちを汲み取って聞いてみた。
「大丈夫なのですか?」
しかし、当の本人は、心配なのか、質問を返してきた。
「大丈夫よ、同じ精霊よ、それに私はここに長年いたのよ、何か言われてもすぐに言い返してあげるわ」
「本当に、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫よ、私が100%保証してあげるわ」
「な、なら、行ってみたいです」
ウンディーネの言葉に勇気が出たのか、ノチスは自分からハッキリと意思を伝えることが出来た。
「それなら、行って見ましょうか、ノチス」
「はい」
「アリサは流れ弾の可能性があるから、ここにいてくれるとありがたいわ」
「わかりました、ノチスちゃん、楽しんできてね」
「楽しんでくるー」
ノチスはトコトコと歩いて、精霊たちの輪にウンディーネと入っていった。精霊たちはそれぞれの遊びを楽しんでいた。よく観察してみると、遊びには4種類に分かれえているようだった。
「皆、私たちも仲間に入れてもらえるかしら」
「「「あ、ウンディーネ様だ――」」」
子供の精霊たちはウンディーネの姿を見るとわらわらとウンディーネを囲ってきた。
「これはウンディーネ様」
そこに遊びを一緒にやっていた大人の精霊がやってくる。
「この子も一緒に参加していいかしら」
「勿論、大丈夫です」
「ノチス、いろんな遊びがあるけど、どれをやってみたい?」
「えーとね、あれ、楽しそう」
ノチスが指したのは、子供たちが一つの玉の色を変える遊びだった。
「色変えね、あれはね、神力を流し込んで自分の色にする遊びよ、何人でも出来るから、今すぐ入れるわよ、行って見て話しかけて見て」
ノチスは子供たちに近づいていき、話しかけた。
「わ、私も一緒にやっていい?」
「いいよー」
「やろやろー」
ノチスの心配を他所に子供たちはすんなりとノチスを受け入れてくれた。子供たちの神力によって玉の色が様々に変わる様子は幻想的で綺麗だった。
「無事に加われた様で良かったです」
遠目にノチスの見ていたアリサは、子供の中に加わった様子を見て、少しだけ涙を浮かべていた。
「どこの親目線よ」
いつの間にか、アリサの近くに戻っていたウンディーネはアリサに思わず突っ込みを入れずには入れられなかった。
一通り遊んだ後、ノチスは子供の精霊と別れを告げ、アリサたちの所に戻って来た。
「楽しかったー」
「別の遊びもあるから、また遊びたいなら後で来ましょうね」
「また、来る~」
ここに最初の来た時とは違う元気な姿に、大人の2人はほっこりしていた。
「それにしても色んな遊びがあるのですね」
別の場所に移動しながら、アリサはさっきの精霊たちの遊びについて気になっていた。
「色変えの他にも、玉遊び、鬼ごっご、玉当ての3種類の遊びがあるわ」
「見ているだけなら、ただの遊びに見えますね」
「まぁ、傍から見ているとそう感じるかもね、でもちゃんと精霊としての力を鍛えるものであるのよ」
「そう考えると遊びを考えた人はすごい人ですね」
「考えた本人なら、近くにいるけどね」
「え、そうなんですか?」
「ええ、あの遊びを考えたのはシルフよ」
遊びを考えた本人が近くにいた事に、アリサは驚愕の表情を浮かべる。
「何と言うか・・」
「以外でしょ」
「そうですね、今の姿からはかけ離れると言ったら失礼でしょうか」
「大丈夫よ、なんでも、暇すぎて面白い遊びを考えたとか言っていた気がするわ」
「それで考えた結果がずっと精霊の訓練になっているのがすごいですね」
「妙な所で才能を発揮するのよね」
ノチスは話の内容は分からないが単語だけを理解しているのか、単純な質問をしてきた。
「シルフ姉ちゃん、すごいの?」
「そうよ、シルフお姉ちゃんはすごいのよ」
それに同調するように、ウンディーネはノチスの言葉に同調する。
「すごい、すごい」
「そう、すごい、すごい」
話している間にも3人は次の目的地に着いた。
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