第19話 因縁
「え、嘘」
そんな驚きの声を上げているのはアリサ姫だ。
「ハハハ、やっぱりお前は面白いぞ、フィリクス」
その横でアベルは予想外の結果を見て高笑いをしていた。
フェリクスの呼びかけによって3人は校長の魔法空間に集まっていた。
2人の視線の先では神力を測る水晶がフェリクスの手に握られていた。その水晶からは強い緑の光が出ていた。その光は段々強くなり、水晶自体が赤くなりだした。
嫌な予感がしたので、フェリクスは水晶を遠くへめいっぱい投げた。
水晶が地面に着いた瞬間、轟音と共に爆発が起こった。
「なに、あれ」
「神力の量はアリサ姫といい勝負だな、アハハ」
「あれ、アリサ姫もやったってことなの、アベル?」
「・・・」
その横でアリサ姫は顔を真っ赤にしている。
「後で、あれの水晶の詳細を教えて下さい、全く同じもので返品させて頂きます」
「そんな、私が気を付けなかったのが悪いんです」
「いえ、商人としてしっかりと返品させていただきます」
フェリクスとアリサがあたふたしている中、後ろでシルフが
「それにしても神力を増えすぎなきがするけどね」
シルフが小さな声で呟いたが、フェリクスはその声をしっかりと聞いていた。
フェリクスの予想だが最後、シルフの神力を奪ったことが関係しているのだろう。それにより、格段に器が大きくなり、精霊の適性も風になったと考えられる。
「それでは、精霊使いについて、改めて教えましょう、フェリクス君」
「よろしくお願いします」
そこからフェリクスの精霊使いの修行が始まったのだった。
「フェリクス君、ちょっと相談したことが・・」
「なんでしょうか、アリサ姫」
精霊使いの事もあり、学校生活で話しかけることも多くなったが、周りからは疑念の視線が送られていた。勿論、疑念だけでなく、嫉妬の視線も交じっていた。
そんな中フェリクスは放課後、校舎裏に呼び出されていた。
「随分、アリサ姫と仲良くしているようじゃないか、平民の分際で」
呼び出した人は何時ぞやの貴族クラレンスだった。今日はしっかりと取り巻きを引き連れていた。
「別にそう言うつもりはないのですが」
「黙れ、お前に発言は許していない」
取り巻きがの一人が、フェリクスに対して叱咤してくる。
「お前、フェリクスだったか、名誉と思え、この露店で買ったこれの効果をお前で試してやる」
クラレンスがアピールしてきたのは腕に付いているブレスレットだった。魔法使いが付けているブレスレットなどの装飾品は基本的に魔法の補助や簡易的な魔法を込めることなどに使われる。しかし、クラレンスのブレスレットにはいい宝石と呼べるものは付いていなかった。魔法を使う上で、硬度が高いものが一般に効果が高いとされている。クラレンスのつけているものは魔法を暴発させるんではないかと思うぐらい雑な素材で作れていた。
クラレンスが魔法を放つ。
フェリクスの予想では普通に魔法が発動するだけで、それだけだと思ったがその予想は裏切られた。クラレンスの手から放たれた、火球はブレスレットが輝いたかと思うと3倍の大きさになってフェリクスに迫ってきた。
砂塵が立ち上るがフェリクスは砂塵の中から何事も無いようにやって来た。
「そのブレスレットどこで売っていたか、教えてもらってもよろしいでしょうか」
「お前、どう言う――」
またも取り巻きの一人が口を開くが喋りきる前にフェリクスの指が動く。高速で書かれた魔法陣から取り巻きの一人が一瞬で口と手首が縛られた状態となった。
「貴方には聞いていません」
「貴様――」
また、フェリクスの指が動く、それによってクラレンスの取り巻きたち、全員身動きが取れない状態になった。
「あまり手荒な真似はしたくないのですが、教えて頂きますか」
「ひっ」
「早く答えてもらってよろしいでしょうか」
口調は無駄に丁寧だが、やっていることは軽い脅迫だ。
「王都の南にある商店が並んでいる、道の中の露店で売っていたものだ」
「どうも、ありがとうございます」
フェリクスは早速、その場所に向かおうとするが後ろから弱弱しい声がかかった。
「貴様、こんな事をして、どうなるか、分かっているのか」
「さて、何のことでしょうか、貴方には何もしていないのですが」
「そんな言い訳が通用すると思っているのか、父上に言いつけたら、どうなるか、分かっているのか」
「それはこちらのセリフですね、我がクレソン商会は今やこの国で半分以上の物流を握っている状態です。今後の取引相手として、貴方の人格に問題ありなら、今の代で貴方の領地での取引は終了です。領民の皆さんには申し訳ないですが、暫くの間、物流がなくなるのは我慢して頂くしかありません」
「そ、そんなの俺には関係ないことだ」
「本気でそういっているのなら、今すぐ私たちは、貴方の領地から撤退することを会頭に伝えなければなりません。税収は民たちから、取っているのですから、当然、民たちの利益が少なくなれば、税収が少なくなるのは必然です」
「それなら、税収を高くすればいいだろう」
「そんなことをすれば、民がその領地から逃げ出すので結果的に税収はなくなってしましますが、よろしいんでしょうか」
「・・・」
「さて、私が何故それで貴方の性格をまだ商会に伝えていないと思いますか?」
「・・・わからない」
「それは貴方に問題があるのが性格だけだからです。貴方はこのセイレン学院に受かったのでしょう。実力でしか入れないと言われるこの学院に」
他の学校なら、いざ知らず、この学院は実力でしか入れないことで有名だった。学園長曰く、たとえどんな生徒だろうと、実力さえあれば入学を認めると公言している。
「私は貴方がこの学園生活で変わる可能性があると信じているからです。貴方がこの学園に入学出来たのは少なくともそれは貴方が今まで威張り散らしてきた親の七光りではなく、自分の実力のはずです」
「それは・・」
「本当に自慢をしたいのなら、親の七光りではなく、自分の実力を自慢することですね、私からは以上です」
クラレンスは何も言えず、口をパクパクさせるだけだった。フェリクスは自分にしては珍しくしゃべり過ぎたと思ったがそんなことを考える前に急いでその場を後にした。
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