第16話 学園の秘密
放課後、フェリクスはアリサ姫に呼ばれて、とある教室に来ていた。
「こんな所にアリサ姫がいるのか」
フェリクスが放課後に呼ばれた教室はしばらく使われていないのか、机やロッカーが雑に置かれていた。しかし、流石、貴族の学校なのか、教室には埃一つ落ちてはいなかった。
「ん?」
フェリクスは一つのロッカーの取手が微かに光っていた。そのロッカーを開けてみると、そこには真っ暗な空間が広がっていた。フェリクスにはその空間について見覚えがあった為、躊躇わずそこに飛び込んだ。
「ようやく、来ましたね、フェリクス君」
中で待ち受けていたのは、フェリクスを呼んだアリサ姫だった。
「まぁ、校長も勿論、関わっていますか」
「何故、校長も関わっていると思ったんですか?」
「簡単ですよ、この空間魔法を使えるのが校長先生だけだからですよ」
そうフェリクスがロッカーに躊躇せずに飛び込めた理由はすでにその空間を見ていたからである。
「なるほど、貴方が精霊を見えることを黙っていたことは仕方ないと思いますがここでは何もしないので信用してください」
「?」
「この学園では、陰で精霊使いの育成を行っています」
「なんでこんなにこそこそと育成をやっているんですか」
「その反応を見ると貴方は何も知らないのですね。精霊使いはとても希少です。その力は普通の魔法使いの100人分とも言われています。その希少性から、その者を力ずくで手にいるようとする者の少なくありません。この学園はそんなものから精霊使いを守るために創立されました」
アリサ姫の説明を受け、なるほどとフェリクスは納得した。そして、もしかしたら、命を狙われていた理由の一つに精霊使いも入るかもと思った。いつも誘拐や殺しの危険が付きまとっていた為、フェリクスにはそれが商会目的と決めつけていて、精霊使いの可能性は考えていなかたった。
「なるほど、ひとつだけ質問してよろしいでしょうか、アリサ姫」
「はい、何でしょうか、フェリクス君」
「ここで学んだ精霊使いたちはこの国に所属していませんか?」
「それは・・」
アリサ姫はフェリクスの質問に言葉が出てこなかった。アリサ姫の言葉が本当ならこの国だって精霊使いが喉から手が出るほどほしいはずだ。そして、ここは国の育成機関だと言われたなら、指示に従わない者はどうなるか、分からない。
「君の心配はないと伝えて置くよ、フェリクス君」
そこに空間魔法を使い、現れたのは、学園長だった。
「何が心配ないんでしょうか?学園長」
「彼を見てもらえばいいかの」
学園長が指した先には隣の国の王子、アベルが居た。
「ここを卒業したものが必ずしも国に属すわけではない、この国に悪意があるようなものに教えることは出来ぬが、この学園が国に属せと強要したことはない」
「わかりました、学園長、今はその言葉を信じましょう」
そんな話をしている間にアベルがこちらに気付き近づいて来た。
「やっぱり、フェリクスもここに来たか」
「なんで、やっぱりなんだ?」
「平民で特待生に入る奴なんて、精霊使いしか思いつかないからな」
「まぁ、普通に考えればそうか」
実際には違うけどねと心に思いつつ、フェリクスは周りを見渡した。そこでわかったことは、今いるこの空間はこの前の学園長に閉じ込められえた空間の比じゃないほど広いということだった。しかし、そこにいるのは学園長を除くと5人しか居なかった。
「私はこれで失礼するの、後のことはアリサ君に任すわい」
学園長はそれでだけ言うと来た時の同じように空間魔法を使い去って行った。
「それでは、精霊を見せてください」
フェリクスは本を出し書かれている精霊の名前を呼んだ。
「シルフ」
「はーい、およびですか」
「やはり成人ですか」
「成人?」
「説明しますね、精霊には主に3種類います。成人、少年、小人の三種類で成人になるほど、力が強いです」
そこまで説明した所で、アリサ姫の背後に青色の精霊が現れた。
「貴方いったい、この100年何処に居たのよ」
「ウンディーネじゃない、いやー、この本に閉じ込められて、動けなかったの」
「はぁ~、くだらない理由だと思ったけど、4大精霊の貴方が閉じ込められたなんて、嘆かわしいわ」
「うるさいわね、貴方こそ、人は気持ち悪いから、契約はもうしないって言っていたじゃない」
精霊同士の言い争いが始まり、周りの人が取り残される。
話し合いがヒートアップして終わらないと判断したのか、アリサ姫は続けてフェリクスに話しかけて来た。
「フェリクス君、本契約はお済ですか?」
「契約?得に何もやってないけど」
「そうなのですか、ちなみに契約をすると体のどこかにマークがつくことになりますが、これだけは隠して下さいね、自分が精霊使いと証明しているみたいなものですから」
「そう言うものなのか、ふむ、シルフ、俺と契約するか?」
「いいわよ」
シルフは一端、ウンディーネとの会話を切り、フェリクスに手を差し出してきた。それにフェリクスが触れると、フェリクスの周りに風が吹いたと思ったら、手の甲に独特なマークが浮かんでいた。
「全く、貴方の気分屋ぶりも全然変わりないわね」
「そんなことないわよ、彼には私が認めたる力があるわ」
「貴方がそんなに言うなんて珍しいわね、なら私が確かめてあげるわ」
「ふん、いいわよ」
そこで話の流れがおかしい方向になっていることを感じたのだがフェリクスに止められるわけもなく話が進んでいく。
「そこの人間、そこに立ちなさい」
「はいはい」
「何よ、その返事は!私が今から貴方に一撃を入れます、貴方がシルフの期待通りならこの一撃止めてみなさい」
そら見たことかと、厄介事に発展しフェリクスはため息を零した。
そんな間にもウンディーネは力を溜めていた。
「ちょっと、待ちなさい、ウンディーネ」
アリサ姫の止めの一言が入るがウンディーネは効く耳を持たない。
「アリサ姫、少し離れないと俺たちも危ない」
力の大きさを感じたのか、アベルはアリア姫を連れて、その場から離れようとする。
「でも、フェリクス君が」
「多分、彼なら大丈夫ですよ」
アベルは何の根拠もなかったが、フェリクスならウンディーネの一撃を止められるのではないかと思っていた。アベルに引っ張られながらもアリサ姫は心配でフェリクスから目が離せないが、フェリクスは心配ないとばかりに手を振った。
そんな中、ウンディーネの一撃が放たれようとしていた。
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