第49話 VS ヤクザ屋さん その6
同日。
村山家襲撃の4時間後。
サイド:島袋光
俺の名前は島袋光。
趣味はウェイトトレーニングで黒Tシャツがトレードマークだ。
昨日、メスガキに蹴られた顔面が陥没してフランケンシュタインみたいな顔になっているが……俺はタフだけが売りなので今日も普通に出勤している。
で、事務所に詰めていた俺は日課のトイレ掃除を終えて親子丼を食べていた。
いつもウチの事務所は店屋物の配達丼で、俺は親子丼を食べることにしている。
本当はカツ丼が好きなんだが、今まで警察に何度もお世話になっているので……嫌な思い出が蘇ってくるのだ。
だから、親子丼。
まあ、親子丼も嫌いじゃないから別に良いんだけどね。
ってか、この店の親子丼はマジで絶品なんだ。
俺が親子丼に舌鼓を打っているその時――。
「島袋さん? 村山家に送ったチンピラからの報告はどうなりましたか?」
「へい、兄貴。報告はありません」
「アレ等は無茶苦茶しますからね。ひょっとしたら連中……命令を無視して娘を強姦しているかもしれませんね」
「とはいえ……今時……荒事を請け負ってくるのはアイツラくらいですから」
「まあ、だから半グレのチンピラ連中を使ったんですが……暴力ごとはアウトソーシングに限りますね」
「おっしゃるとおりで。あんまり暴れまわっているとすぐにお手手がお縄になっちゃいますからね」
「で、さっき……森下とかいうクソガキの家に向かわせた連中は?」
と、そこで俺の携帯が鳴った。
「はい、こちら島袋」
「し、し、しま……島袋さん!? 話が……話が違うっ!?」
「え?」
「黒髪……女子高生……ゴルフバックに日本刀……指か耳か鼻……全員斬られ……っ! ぎゃっ! 来るな! 来るな! 来るな来るなっ! この拳銃が目に入らない……え!? 拳銃斬られたっ!? ぎゃっ! ぎゃあああああああっ!」
と、そこで携帯が切れた。
女子高生が日本刀? 拳銃斬られた?
一体全体何を言ってやがるんだこいつは。
「どうかしましたか島袋さん?」
「森下家に向かわせてた連中ですが……アニメか漫画の見すぎみたいです」
「なるほど」
と、そこで事務所のチャイムが鳴った。
ピンポーン。
ピンポーン。
ピンポーン。
俺は親子丼を置いて立ち上がった。
ピンポーン。
ピンポーン。
ピンポーン。
はいはーい。
そんなに何度もピンポン鳴らさなくてもすぐに出ますよー。
事務所のドアを開くと同時、俺はギョっとした。
そこには3人の男が立っていた。
全員がパンチパーマにサングラスでド派手なスーツ。
なんていうか……俺らよりもテンプレなヤクザっぽいっつーか……。
「どちらさまで?」
白髪交じりのサングラスの男はニコリと笑った。
「どもー警視庁の暴力団対策室でーす。任意と言う名の強制捜査に参りましたー」
えっ?
一瞬固まった俺の肩にポンと男は掌を置いた。
「テメエラ下手打ったな。ガキと思って舐めてかかって雑にカタに嵌めようとしたんだろうが……あのガキはマジで容赦ねえぞ」
男は懐からUSBメモリーを取り出した。
「最近のスマホってすげえな。脅迫やら恫喝やらの証拠は全部映像記憶で詰まってる。まあ、ゴリラ……お前の顔面が陥没している原因の映像については……削除されているけどな」
「兄貴っ! ガサ入れですっ!」
俺が振り返ると同時――兄貴は……現金の詰まった高飛び用のバッグを片手にビルの2階から飛び降りていた。
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