第19話

「と、言う事で上に戻るぞ?」


「……上に? どうして?」


 ああ、と俺は頷いた。


「ここから下の階層は最深部――守護者まで一直線となっている」


「…………だから……どうしてと聞いている」


「守護者ってのは何者だ?」


「……ドラゴンゾンビ。死せる龍が……若い龍に屠られて黄泉の世界へと向かう。次の世代にバトンを渡す……これはそういう神聖な儀式」


「ああ、その通りだ。で……俺の手持ちの武器はナイフだけだ。それで……死したとはいえ、龍を狩れると思うか? 保存状態はほとんど生前と変わらない位に良いんだろう?」


 フルフルとリリスは首を左右に振った。


「……リュートは強くなったと思うけれど、流石に丸腰に近い状態で龍のウロコは突破できない」


「だから、一旦戻る。それに大ナマズにしろ武装ゴーレムにしろ……狩り残した連中もいるしな」

 

「……上に行ったり下にいったり……本当に忙しい。しかし……上の階層は貴方の放火で無茶苦茶となっている。本当に戻れる?」


 リリスは頭上の様子を確認して呆れ顔でそう呟いた。

 俺はその疑問に首肯で応じた。


「この迷宮の基礎部分は全てオリハルコンで構築されている。で……基礎と基礎のさらに根幹部分をつなぐ場所はオリハルコン製の階段と通路でつながっているんだ……そもそもの迷宮作成の際に作られたものだな」


「……オリハルコン。概念では理解できる。とても固い金属」


「これとドワーフの使役するホムンクルスの存在は……この迷宮みたいな無茶な建築を可能にする立役者だな」


「……まあ、それでもこの施設が建築されるには百年ではきかない程度には時間がかかっているはず。それを誰かさんは放火なんていう無茶苦茶で……」


 ジト目で俺をリリスは見てくるが、俺は動じずに上を指さした。


「それじゃあ上に向かうぞ? まずは……第一階層までだ」








 そうして俺は、ミノタウロスの倒れる部屋に辿り着いた。

 息絶えるミノタウロスの死体の傍らに転がる巨大な斧に手をかける。


 特殊金属で出来ている2メートル強の斧。



 重さは100キロか、あるいは200キロか……。

 持ち運ぶだけならレベル1の状態の俺でも簡単にできたが、この斧を実戦のレベルで振り回すのに十分な筋力があったかと言えば、それはない。


 でも、今現在の俺のレベルは99だ。

 しかも、職業:村人とはなっているものの、龍王の加護のおかげで成長率補正が賢者等の上級職に見劣りしない程度まで底上げされている。



 力を込める。

 斧を振ると、ヒュッと風切り音。


 ――良し、棒切れ振り回してるのと変わらねえな。



 剣術のスキルと体術のスキルが発動。

 色んな経験が上手い事に融合されて、斧を扱うに最適解を導き出す。



 当然、戦斧術か何かのスキルがあったほうが斧の扱いは上手くなるんだろうが、急場をしのぐだけなら……まあ、アリだろう。


 ビュンビュンと斧を旋風のように片手で振り回す。


 これなら……ひょっとして、俺もアレができるんじゃね?

 思い立ったら吉日とばかりにミノタウロスの部屋から出る。



 ――かつて15歳のコーデリアはナマクラの剣で大岩をバターのように切り裂いていた。



 そして、俺もまた、洞窟に転がっている大岩に向けて繰り出した。


 直径5メートル程の大岩。

 凸凹だった表面は猛スピードでなめされていく。


「すげえなコレ……バターナイフでバターを斬るよりも……抵抗が無い」


 そうして数分後、俺の眼前に直径3メートル程の石の球体が出来上がっていた。


 周囲には無数の岩の破片。

 何百という斬撃により、岩が削り落とされた結果だ。



 そんな俺を、リリスは絶句しながら眺めていた。


「……最初にここで斧を扱った時は……身体強化術を幾つも使って、何とか振り回すのがやっとだった」


 良し。

 手ごたえは十分だ。



「さて、行こうか」


 俺の呼びかけにリリスは疑問で返した。


「……どこに?」




「とりあえずは武装ゴーレムにリベンジだ」








 名前:リュート=マクレーン

 種族:ヒューマン

 職業:村人

 年齢:12歳

 状態:通常

 レベル:99

 HP :4321/4321

 MP :17850/17850

 攻撃力:1020

 防御力:985

 魔力 :3400

 回避 :1150


 強化スキル

【身体強化:レベル10(MAX)】

【鋼体術 :レベル10(MAX)】

【鬼門法 :レベル6】


 防御スキル

【胃強:レベル2】

【精神耐性:レベル2】

【不屈:レベル10(MAX)】


 通常スキル:

【農作業:レベル15(限界突破:ギフト)】

【剣術 :レベル4】

【体術 :レベル8】



 魔法スキル

【魔力操作:レベル10(MAX)】

【生活魔法:レベル10(MAX)】

【初歩攻撃魔法:レベル7(成長限界)】

【初歩回復魔法:レベル7(成長限界)】





称号

【地上最強の少年  :レベル10(MAX)】

【最年少賢者    :レベル10(MAX)】

【庶民の癒し手   :レベル10(MAX)】

【聖者       :レベル3(成長限界)】

【鬼子       :レベル10(MAX)】

【ゴブリンスレイヤー:レベル10(MAX)】

【エクソシスト   :レベル10(MAX)】

【外道法師     :レベル3】

【牛殺し      :レベル2】






・鋼体術使用時

 攻撃力・防御力・回避に+150の補正


・鬼門法使用時

 攻撃力・防御力・回避に+300の補正


・身体能力強化使用時

 攻撃力・防御力・回避に×2の補正





・ミノタウロスの斧 レアランク:B+

 攻撃力+500

 回避 -200

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