魔王の顧問弁護士
四十万 森生
第1章 顧問弁護士への道
プロローグ
サイコパス。
彼らは感情の一部が欠如している。
自己中心的で、良心の呵責や罪悪感、共感性といったものが欠如し、また道徳観念や倫理観、恐怖などに関する感情もない傾向にある。
しかし、頭が切れ、冷静で、口が達者。表面的に魅力的な人物であることも多い。
他人に共感出来ないが、他人の心を理解する知性があり、他人を思うように操ることに長けた者である。
そして、成功した経営者や弁護士にはサイコパスが多いと言われている。
これは、サイコパス系弁護士が異世界転生により魔物となったことをきっかけに欠けた感情を手に入れる物語。
___________
僕がまだ子供だった頃、祖母が言った言葉だったろうか。
「悪いことをしていると地獄に堕ちますよ」
悪いことって何だろう。
当時も、そして38歳になった今でもよく分からない。
大学の法学部で4年間、その後法科大学院で2年。法律を学んだが、未だに『悪いこと』というものが分かっていない。
人間社会においては『法に触れ』なおかつ『捜査機関に発見され』そして『起訴され』『有罪』にならなければ『悪いことをした』ことにはならない。
それで充分だと思っている。
『法』にさえ触れなければいいんだ。
警察に分からなければいい。
分かったとしても起訴されないように根回しすることも出来る。
そして僕は何一つ『悪いこと』をすることなく生きていた。
___________________
そこは暗闇の中だった。
目が慣れるほどは見続けているが一向に何も見えない。ただの闇。
手足を動かしてみる。手足の感覚はあるものの、目視で確認出来ないため心元ない。
以前、事故で四肢を失っても手足の『ある』感覚だけは残るというレポートを読んだ記憶がある。
目視出来ない以上、本当に手足があるのかすらおぼつかない。手足を失った記憶はないので、恐らく手足はあるのだろうけど。
両の腕を重ね合わせてみた。
自分の手を触る感覚ではない。なんだこの固い毛の生えた腕は。毛というよりタワシのようじゃないか。
背筋に寒いものが走る。
身をよじって足に触れてみる。やはり同じような感覚。
それだけじゃない。
足…? 触られた足の感覚は確かにあるのだが、そのあたりに足が、2本ではない。もっと…数がある…? どの足に触れても同じような感覚。
一体これはなんなのか。
僕はどうしたのか。
なぜここにいるのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます