第十六節:邪眼対抗策

「今回アスカにかけられたのは邪眼だと思う」と執務室に帰って開口一番そういった。


 ヒジリはサヨリと一緒に一応何事もないとは思うが、ということで基地内病院に掛かっている最中だった。


「ありゃー何だったんだ?」と師匠がわけわからんというふうにいった。


「あれは悪魔ですか? それよりは魔人に類するもののような気がするんですが?」とはガーシュタイン卿の言葉だった。


 それに私が答えた「多分魔人であっていると思いますが」とかろうじて言葉を紡いだ。


「魔人か、狙われている理由は分かっているのか? あんなんに何度も襲撃されたらかなわんぞ?」と師匠がいう。


「多分理由はアスカでしょう」と私がいった。


「以前ギルドマスターにも似たようなことを言われましたが、多分ヨナ様は何か知っておられるのでしょう。多分ですが。私が四十六時中張り付いていられればいいんですが」ともいっておく。


「邪眼除けのネックレスでも作っておきましょうかね」というに留めた。


「指輪二つとも見つかりました」とアスカが上って来た。


「アスカ。最後に見たのは赤い目ではなかったかな?」と聞いてみる。


「赤く光る眼だったような気がします」という言質が得られたのであった。


「やはり邪眼だったか」というだけいっておく。


「邪眼ですか?」とアスカから聞き返された。


「物理的に精神干渉する魔法の一種だよ」と答えた。


「直接侵入してくるとは思わなかった、次はない。いや同じてつは踏まない」といい切ったのである。


「危ないので一度様子を見に行った後は、クララさんとワルキューレに任せてきました」とのことであった。


「今日は一日ここにおります」とアスカがいった。


「夜のうちに邪眼に対抗できるアイテムを整えておこう、アスカは何か欲しいアクセサリーはあるかい?」と聞くことにする。


「指輪は頂きましたから、ネックレスの短めのものなどがいいでしょうか」とアスカが答えたのであった。


 長めのものでは赤ん坊の世話に問題が発生するであろうから、ということから短めのものという定義を付けたらしい。


 短めというと四十センチメートル程の長さかなとイメージを起こしていく、もちろん執務をこなしながらだ。


 こういう作業は慣れているのだ最大四つまでなら、並列作業ができるようになっていたのである。


 人族は環境適応能力というモノについては、新人族と同じくらいに優れているのである。


 そして早速チェーンだけ先に取り寄せた。


 魔導転送により郵便が発達し過ぎているので、余程特殊なものでもサイズが小さければエルフィニアからでさえ一瞬で届くのである。


「魔導転送機に何か来ましたね」とアスカが取りに行こうとしたので、「私のほうが近い」といって取ってしまうことにする。


「何が届いたのですか」と聞かれたので「硬質ミスリル製のチェーンだよ」といっておく。


 合点がてんがいったようで「アクセサリーのですか?」と聞かれてしまう。


 惜しげもなく「そうだよ」と答えた、チェーンくらいなら作れるわけではあるが、私が作ると全ての円環に魔力か術が入ったモノを作りそうだったので自身で作るのを諦め発注としたのである。


 オンラインショッピングとしたため、エルフィニアの高級チェーン専門店舗に繋がったのであった。


 そして今日は白騎士ガーシュタイン卿も、黒騎士こと師匠もこちらを気遣って下さって執務室に居るということにした様だった。


 そしてヒジリも「特に異常はなかった。失態かな?」といってサヨリ嬢と一緒に戻って来たのであった。


 師匠からは「緊急回避の仕方を教えなきゃダメかな」といわれてしまっていた。


「緊急防御でもいいんだが、リスクが大きい時は回避を優先するんだ」とおっしゃったのである。


 それには白騎士殿もうなづいておられ、いかに回避が重要であるかの講義に発展したのであった。


 そしてその夜アクセサリーを作る私がいたわけではある。



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