第二節:精霊魔法受講
そして総長専用データパッドを展開すると、魔導の講義用のデータを再度眺めながらいった。
「この簡易講習で魔導の基本のキが分かればあとは応用位で何とかなるんだが」と唸ったのである。
「ショックバレットが一番わかり易いんだが構文が面倒でな」という。
「かといって構文は簡単だがマジックバレットは激しい消費に成ると溜ったもんじゃないし基本的に物理干渉し無いからな。見えないんだよな」という問題に嵌っていた。
「まあショックバレットは構文が難しいが覚えて貰うには手っ取り早いからそこらは我慢してもらうか」といって考えるのを一旦切り上げた。
アスカ嬢の方も似たような感じになっていた。
「精霊魔法は感じ方が大事ですからねぇ」といった所ではある。
「ロウソクか、紙切れ一枚でもあると判りやすいのです。動かしてみたり火加減を強くしてみたりするだけでかなり実感できると思うんですが」とアスカ嬢も似たようなことを考えていたらしい。
「ロウソクは難しいが、紙切れなら何とかなるよな?」と私がいった。
近頃『データパッド』のおかげで紙その物が減少傾向にあったが雑誌などは紙でもあるのではある。
「ウチには再処理施設で紙は創れている筈だから白い紙でなくっていいなら大量にある筈だぞ? 吹けば飛ぶくらいの紙なら工作班に取りに行ってもらえば即。手に入る筈なんだがというと何枚必要かな? とりあえず五百枚程、束で貰うか」というと工作班に連絡した。
「五百枚程紙切れが欲しいんだがというと多少不揃いでも構わない、魔法の基礎講習に使用する紙だから薄くて風で飛ぶくらいの奴が良いんだが。総隊長二階執務室まで直ぐにデリバリーしてもらえるか?」と聞くと。
「了承しました直ぐにお持ちします」という良い返答を得られた。
「という訳で紙が五百枚届くので、もしすでに特別講義室で魔法講座が始まっている様ならばその五百枚の紙を持って来てはくれまいかワルキューレ」というと。
「分かりましたもしそのような状態にあればすぐにお持ちします」と快い返答が得られたところであと十分で届けばまあ間に合えばいいんだが。
ショックバレットの欠点は魔力が強い奴が撃つと窓ガラスあたりは粉々になる所だよな。
まあ特別講義室の窓ははめ込みの上アクリル系素材板五十ミリメートル厚だった筈なんで大丈夫な筈なんだがと思った。
「もう時間が無いな、行くか」といって席を立つ。
ブリーフィングルームの隣の特別講義室に向かう、最初は精霊魔法だから、紙切れは届かなかったのでワルキューレ嬢が持ってくるのが間に合えばいいんだがと思っていた、処であった。
十三時からではあるのですでに、特別講義室内には第一中隊十八名と第七中隊から二名とが集まっておりそれなりに賑やかな状態になっていた。
パートナーは魔法を触ったことがある者も中にはいるようであった。
私が後ろから入り後方の席に着席する。
授業は受けるが、基本的にはガードが主なのでなるべく離れた席に座り、データパッドを開いてからノートを展開し、いつでも講義が受講できるようにしていく、詰まるところ。
精霊魔法も使えるとさらにバリエーションが広がるのではないかと思った訳ではあるのだが基本は護衛なのでそっちを優先しながらできることはメモしておくようにとどめたのである。
アスカ嬢がワルキューレ嬢から受け取ったとみられる紙の束と『データパッド』を持ち入って来た。
ダイヤ他十七名、コマチとサリィ嬢二名、ヒジリとサヨリ嬢二名も着席している。
二十二名に成っておりそこにさらに私が加わったような状況になっていた。
アスカ嬢が自身の『データパッド』と魔導式ホワイトボードをリンクさせた、精霊魔法講座入門編という文字がホワイトボード上に展開される。
皆、担当官のアスカ嬢に注目した、軽く敬礼をして「これより講義を始めます」といった。
「精霊魔法の基礎は精霊を感じるところからなんです、そこからは少し難しいと思いますのでいきなり本日の目標から行きたいと思います」といった。
「まずはただの紙切れを配りますので一人一枚受け取って後ろのほうに回してください、これが本日の目標です、この紙を机の上から弾き飛ばせればそれで成功となります」
「精霊語の発音も勉強することに成りますのでかなり難問かとは思いますが実践あるのみです。精霊語の発音は『データパッド』に送ったデータの最終頁にのっています。まずは精霊と対話するところからです、片言でも精霊と対話ができると力を貸してもらえるようになります」と一気に喋った。
「まずは手元の紙を半分に一旦折線を付けていただいて、机の上に立ててください。このL字の紙を動かすのが本日の目的です」といいながら続けた。
「現在の状態ですと風の精霊が入って来れないので、まずは外の外気を取り込みましょう」という。
「総長、窓を開けていただいても宜しいですか?」という話が飛んできた。
「OK、開けよう」といって窓の上面を開けたはめ込み式の窓であるため外気は上からしか取り込めない様になっている造りなので仕方なかったが、窓は全開にしておいた。
「これで風の精霊とコンタクトが出来るような状態になりました。精霊魔法は魔導と違いその場にある力を正しく読んで使うタイプの魔法です。まずはその場にどんな力が流れているかを知る必要がありますので一番最初の
「今この場には、四種の力が
「その感覚を捉えられれば精霊使いとしての基礎段階をクリアしたことに成ります。まずは呪文を唱えるところから、心の中で詠唱してもいいのですがそれは精霊語を成せてからだと思いますので、そのまま読んじゃって下さい。五分ほど時間を創りますので。読み合わせしていただいて良いですよ」とアスカ嬢がいって座るとホワイトボード上にスペルが並んだ、そして皆読み出す。
俺も試してみるかと思い軽く呪文を唱える。
「ラ・エルメーテ・ディス」と皆が同じ言葉を唱えているが中々イントネーションが違うのか感覚が掴め無い様であった。
不意に私の周囲に風が巻き始め少し眩しくなりどうやらそれだけではなく“ザワザワ”という感覚と“ドクンドクンドクン”という鼓動が聞こえたので。
やっちまったかと思ったのである、ある程度心得があると行けるのかと思った次第ではあったが逆に良い効果を生んだようでもあった。
皆がこちらを向いて目を
「総長すげぇ」と呟いた奴もいた。
「あんなに自然にできるもんなのか」と呟きが漏れた。
「総長は魔導に神官に精霊使いにも成ろうとしてるぞ負けるんじゃねぇ!」とダイヤがいった。
「俺たちも続け!」と副長もいった。
次に風が巻いたのはなんとコマチの周囲だった、コマチも同様の感覚をつかんだらしい。
「何か眩しくてザワザワするのと鼓動が聞こえるんだけどこれで良いのかなぁ?」とコマチがいった。
第十四章 第三節へ
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