第九節:遺体状態検診と記憶の品

「その状態を見せていただけないでしょうか? 可能性が太くなりました。DNA情報だけだと流石に難しく難易度がかなり上がってしまうのですが、しやと想い聞いてみた次第です。蘇るかも知れません確率論ですが御遺体がある状態なら、一年と掛らないで再生する可能性があります。蘇生措置は数十種考えてはいますのでその中に該当すればあるいは……」と侯爵がいう。


「エリーが蘇るなら俺は、徒党を組んでさえいいと思っている。本来孤高を目指したが故にこの始末だ次はねぇ。ならば可能な限りできることがしてやりたい」と師匠がいう。


「流石に術技をお見せする訳には行きませんのでそこは信用して渡していただくしかありませんが、御遺体をお預かりしても宜しいでしょうか?」と侯爵は師匠に聞いた。



「早くて一年、遅くて何年位でしょうか?」と師匠が聞く。


「遅ければ、DNA情報に頼ることにはなりますが。五年位でしょうか」と侯爵はいった。


「五年か、アスカ俺のオーロラの期限を五年まで延長してくれ」と師匠がいった。


「分かりました今すぐ申請します」『データパッド』を開いて剣術指南役の黒騎士様オーロラビジョンの五年まで延長申請とサラッと書きそこにまず自らのサインを入れた、アスカ嬢にも聞いたという内容の申請をしてもらうそして一番下に下線が現れる、それを師匠に渡すとスラスラと器用に肘と手首だけでサインしたそれをデータ通信網で直接ヨナ様に届けた、直ぐ返信が来る、延長許可を認める魔導印証が入ったモノが届いた。


 それを師匠に見せて「許可が取れました」という。


「よしでは案内しよう」といいながら肩に黒騎士のジャケットを羽織る。


 まだ肩が満足に動かせないのに器用にジャケットを羽織っていた。


 そのまま病室から出ると「少し案内して必要なものを渡してくる」と受付にいって出た、そのまま黒いFPTの前まで行ってスロープを登り暗証キーを叩きコンソールからドアを開いた。


 侯爵はFPBで近くまで来て、後部の両面開き扉を開けザイルより少し細めのケーブルを引っ張り出し規格違いのコンセントを幾つか袋に入れると一緒に入って行った。


「私達も行こう」といってアスカ嬢と一緒に黒騎士のFPTの内部に入るフロアの下側だった。


 比較的広く緩やかな傾斜の付いたスロープを降りていくと少しひんやりとした所に出るがもう少し先の様だった。


 侯爵がケーブルを持って一緒について行っているのでそのケーブルラインを追えばいいだけではあるのだ。


 そして少し小さめの部屋に辿り着く、エリー嬢がケースの中で静かな眠りについていた。


「力を貸してくれアスカ、エリーを運びたい」と師匠がいう。


 侯爵が状態を見ていた状況がしっかりと見えているようだった。


「再生可能な状態にあります。意識が戻るかは賭けになりますが」と侯爵はいった。


「俺が運べないんじゃしゃあねぇんだが、頼みたい」と師匠に二度言われた。


「分かりました、いつでもどうぞ」と答える。


「二九〇二〇製ですね規格が合うモノも保存に必要な規格もぴったり合います。細胞が死んでいない奇跡に近いですまだ可能性は存分に、後はDNA解析をさせてもらって蘇生を行います。特殊構造体をお持ちでしたら記憶が戻るかどうか直ぐに分かると思いますので、今日運び入れたFPBは専用の解析装置も積んで居ますので屋敷に帰り付き次第すぐに掛れると思います。まずは差し替えます、一瞬だけ電源が落ちますのでそこはご了承ください」といって一瞬で繋ぎ変えた。


ライトが一瞬またたくが直ぐに状態を維持した。


「運んでもらってもいいですか」と侯爵はいった。


「お任せください」よく見ると持ち手があった。


 取っ手が付いているのであるそこを持つと壊れそうでもあったので、あえて下から手を回し全てを持ち上げる。


「全部で合わせても百キログラムは無いですねかなり軽量です」という。


「では運びましょうか、ディシマイカル侯爵ケーブルを手繰たぐっていってもらえますか踏まないようにしたいので」という。


「心得て居ります」と侯爵がいって手繰り寄せる準備に入る。


 そしてFPTから出て侯爵のFPBに載せる。


「もう少し奥まで運べますか?」と侯爵はいった。


「では失礼して」といいながらFPBに上って運ぶのを継続した。


「そこの台の上に安置してください」といわれたので置くと台が若干形を変え落とさないようにフィットした。


 そこにさらに、侯爵がバンドを三本掛けて固定する。


「これで落ちない筈です。ありがとうございました」と侯爵はいった。


「では師匠の代わりではありませんがよろしくお願いします」と私はいった。


「一度外扉を閉めねばなりませんので、私もそこからいったん外へ出ます」と侯爵はいった。


 アスカ嬢もFPTから出て来ていた。


「アスカ? 浮かない顔だがどうしたんだ?」と私は聞いた。


「私も戦場でワルキューレを亡くしてしまったらと思うと……」とアスカ嬢が震えていた。


「今は考えなくていいよ、二人共いや三人とも守ろう」と少しだけ抱き留めた。


 アスカ嬢は泣きそうになっていた。


「君に涙は似合わない、笑顔の君が好きなんだ」といってハンカチーフで涙をそっと拭く。


「それにディシマイカル侯爵が付いているんだ、エリーさんもワルキューレも心配は無いよ」というと少し泣き止んでくれた。


「それに私とクララとアスカ、君とワルキューレはエリーさんが復活するかもしれないところに居合わせることができるかも知れない」といって空をを仰ぎ見た。


「だから泣かないでおくれ」といって頭を撫でた。


“バタン”と扉が閉まった音がした。


 師匠が侯爵にいった「ディシマイカル侯爵、エリーをよろしくお願いします」と師匠がいう。


「任されました必ずや再生否、蘇らせましょう他に遺留品があればお借りしても宜しいですか?『データパッド』等があれば記憶が戻る要因と成り得ますので」と侯爵はいった。


 師匠が『データパッド』と『チップメモリ』を数枚持ってきた。


「これで何とかなるでしょうか?」と師匠が侯爵に聞いた。


「後は愛用の品、いつも持っていたとか触ってから必ず出て来たようなモノはありませんか。復活した際に傍にあると記憶領域を刺激する要因になりますので」と侯爵はいう。


「そういえば髪は女の命といってよく使っていたくしがあったかな」というとFPTに戻って、年代ものの櫛を持ってきた。


「形や色といったモノは記憶を刺激する要因になりますのでお願いしたいのですが」と侯爵はいう。


「後は服位でしょうか? 今着せている服がよく着ていた服だったと覚えて居ります」と師匠がいう。


「分かりました、最善を尽します」といいFPBに乗り込み少々急ぎ目で研究室へ向かった様であった。


 そのFPBが視界から消えるまで師匠はその場に立ち尽くしていた。



第十三章 資料へ

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