第七節:いいコンビというか、いいお相手

「さてと、と最後の書簡はこれも私宛と、アスカ秘書官長宛か」と私が呟くと、アスカ嬢が


“ギギィッ”


 といった感じでこちらを見た。


「私宛ですか? それはどこからでしょうか?」とアスカ嬢がいった。


 それに回答する形で答える「国元からだな。ニス家の紋様がデカデカと後ろに入っている。そして妙に分厚い」、アスカ嬢が慌てて「う、受け取ります」といった。


 そんなに慌てなくてもとは思ったが、「はい。これだよ」といって渡した、因みに私宛も同じニス家からではあるのだが紋章などは特になく公爵の魔導印証が押してあるモノだった、署名を見ると男性の字と思われる筆文字でレスト・アラ・ニス公爵と書いてあった。



 ふとアスカ嬢のほうを見ると長い巻物を芯抜いて折り畳んだ様な書状を流麗な文字が躍っていて私には読めそうにないなと思った訳ではある。


 アスカ嬢が読んでいるところを見ていると段々と顔が赤くなり最後の辺では耳の先まで赤く染まっている様では有った。


 倒れないだけ前回よりは耐性が付いて来たかな? と思わせる状態では有ったが暫くは目が泳いでいたことは記しておかねばなるまい。


 アスカ嬢の心配するよりこちらも読み出さないと不味いなと思い目で読みだすわけでは有るが、こちらのほうは達筆ではあるが読め無い訳ではなくちゃんと読めるように書いていて下さるようであった。


 色々書いてはあるのだが要約するとうちの娘をどうか嫁にもらってやってくださいませんかという内容であった。


 確かに嫌いか好きかでいうなら好きに該当する好意は持っているが、私のほうからアプローチしたほうが良いのだろうかと思案する羽目になった。


 男女の仲というのは難しいのである、しかしこのタイミングで来るということは、上層部のヨナ様にはこの話漏れているよなと思わせるタイミングであったりしたので一瞬聞こうかとも思ったが、野暮になるのは目に見えているためその考えは斬り捨てることにして、どのようにアプローチすべきかを考え出してしまうことにした。



 因みにクララ嬢には筒抜けであったのはいうまでもない。


 それは「アスカさんを見て居れば分かります」と一言で締めくくられてしまった。


「それにヨナ様が噛んで居そうな案件ですから、私は手は出しませんよ? サポートはするかもしれませんが」ともいわれてしまった。


「それに四番艦が来たらお引越しですのでケースを大量に出して服や何かでよく使われるもの以外は仕舞い込んで置きますね、それ以外にも色々ありますがよく使われ無いものは見たらわかりますのでそちらも格納しておきます。家の引っ越しと同じくらいの荷物量にはなりますので注意してくださいませ」とクララ嬢がいった。



「色々あるが、こればかりは仕様だから仕方が無いか」と私がいった。


「いいコンビというか、いいお相手だと存じますが?」とクララ嬢が突っ込んだ。


「悪くない取り合わせで、尚且つ条件も宜しい」とそこに続けた。


「私はもう三度も貴方に救っていただいて居ります、それだけでも付いて行く条件にはなりますし。アスカさんの窮地きゅうちを救うのも一つの手だと思いますが。ここは男らしく腹をくくっていただかないと」とクララ嬢が私に止めをさした。



「ふぅ、そういうモノか?」と私がいうと。


 クララ嬢から即答えが返って来た「そういうモノですよ」と。


「分かったアプローチの仕方を考えるとしよう」と私がいうに留めたためか、今一状況に付いて来れていないヒジリとサヨリ嬢が居た。


 もう少ししたら二十時という所まで来たなと思っていた所、内線に着信があり「ミヒャイルⅡは残り外装だけに成りましたので本日の作業は終了します」とのことであった。


「ご苦労、四番艦が明日か明後日の筈だからそれまで埃避けを付けて置いてくれ」と私がいうと「埃避けだと背中側が抜けるのでシートを巻いてあります。とのことだった。残るは内装装甲と外装装甲と外装オプションだけとのことであった」


「ヒジリMMは装甲とオプションを除いてほぼ完成した様だ、今見に行ってもシートで巻いてあるそうなので無理だぞ」というと。


 サヨリ嬢が新しい『データパッド』に「今までのミヒャイルⅠの運用データはありますかできればいただきたいのですが」とのことだったのでクララ嬢に「昔のデータは在るかい? 改造前のモノでいいと思うんだが?」というと。


「ありますよ。お渡ししましょう。現行機とエンジン出力が違いますので制御データが参考になるかどうかはわかりませんが」といいながらデータを渡していた。


 そして追加する「こちらにいる間はA級機のエンジンをツインクロスさせてそのまま高性能チューンナップを掛けてありますので、かなり出力制御がピーキーになると思います。のでそこいらの制御は見直さないとダメかと思いますが」と注意事項の一番重要なところを述べるに至った。


「さて二十一時だ今日の職務はここまで」と私がいって、続けた「流石に他の部隊の皆が動いているのに私だけ定時って訳にはいかないからな」ともいう。


「指令小隊は基本的に雑務や運用記録などのデータ取りや周辺危険度調査などは無いが、何かあれば前線に居るか後衛に居て後陣にいるかしないといけないからな。明日は昼から第一中隊の皆と一緒にコマチ少佐とヒジリとサヨリ嬢に魔法講義を精霊魔法から魔導の順で教えないといけないからな、それが済んでも続きで二番隊が来るのでそのまままた同様の順で教えないといけないから十三時から十七時までは動かせない予定があると思ってくれ。明日は結構最初からハードだぞ二十二名の受講が一本目だからな、第二中隊は十八名だが共にパートナーを含んでこの数だから。まぁそのおかげで朝来るディシマイカル侯爵に失礼をせずに済みそうなわけだが」という。


「そこまで読んでらしたんですか?」とアスカ嬢がいった、それに答える形で返答する。


「そういう訳では無いが、偶然空いたって感じかな? それに無理をして我々が体を壊してしまうようでは、皆に申し訳が立たないしな」と私がいうとアスカ嬢は納得した様だった。


「さて皆を送って行こう」といってヒジリとサヨリ嬢をまず送った。三階に上がるだけなので直ぐなのである、次にクララ嬢を先に送った。


 そしてガラゴロとものを引っ張っているアスカ嬢をPtまで送る、異常がないか確認するのは忘れない、「異常ありません」とアスカ嬢がPt内を確認してからいった。


「分かった何かあればすぐ呼んでくれどのような方法でも必ず行く」というと。


「明日は朝から忙しいからサポート色々頼まなくてはならないから。宜しく頼む」といって別れた。


 周囲に何か居るか気配を読むが何もいない様だった魔導感知も実施するが特にこれにも引っ掛からなかった。


 勘にも頼って見るも、勘も囀らなかった。



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