第二〇節:活け造り
「とりあえず店に行こう予約が待っている」とウキウキしながら店に行くと。
「いらっしゃいませ、よく来てくださいました大将!奥の座敷へどうぞ」分かったといってコースのサインを出しながら、「活きのいいやつ頼むよ!」と声かけを忘れなかった。
「タイショウって?」とヒジリが不思議そうに聞くと「アレは接客の一種でな景気が良いことから大将って呼ばれたりするのさ」と私がいっておいた。
「さて色々来るぞ一括で来るから目を回さないようにな。今回は四分割にしてもらってはいるが。一回一回がズドンズドンズドンと来るからな」とも続ける。
すでにアスカ嬢は、セットアップが終わっていた様であった。
お箸を器用に使って前菜の脂ののった刺身から平らげていく。
サヨリ嬢もお箸は使えるようだった、ヒジリが少し扱いが怪しかった。
一旦皿が綺麗にかたずけられ、机の上には醤油小皿と箸だけになる
「さてくるぞメインディッシュが大きな奴がな」というとマジで四人がかりで
「一旦俺が退くか」といってズドンとした厚み五センチメートルの漆塗りの板の上に朱のデカいものが載った状態で運ばれてくる。
「卿ありがとうございます」といって縦一.五メートル横一メートルもある板を運んで来て載せて行くアスカ嬢も慣れたもので脇にスッと寄っていた。
「まだ動いている!」ヒジリから悲鳴が上がった。
アスカ嬢がいった「これが東国名物活け造りでございます」と私のセリフを取ると同時に「イッチバーン」といいながら初動で背中の身を取ると美味しそうに食べるのであった、「卿どうぞお座りください」といわれたので「頂こう」といいながら「尻尾のこの辺りの身が美味いんだ、筋肉全開だからな」といいながら動く身を食べ出したのであった。
サヨリ嬢は東国出身なのか特に驚くようなことは無かったのだが、一番に驚いていたのはヒジリで、プルプルしながらぴくぴく動く身を摘まみ漸く口の中に入れていたが。
「美味いのはいいんだが動くのには慣れない」といっていた。
「こればかりは慣れだからなぁ」と頷く私が居たという。
因みに海老の身の内四十パーセントをアスカ嬢が食べたため「味噌もおいしいのですよ」といって海老味噌も食べていたため、ヒジリが引きかけて居たという一面もあったのだが。
出身地一つでかなり変わるため、致し方なかった。
三番目は寿司であった。
上ものの活きのいいものだったシャリも銀シャリで酢が程よく効いており、美味かったことだけは告げておく。
寿司はスシといいながら、ヒジリも食べていたので大丈夫そうであった。
四番目は今日の残りものを汁に全て付け込んで出汁を取った、赤味噌汁であった。
中身には具がこれでもかという程入っており、かなり良かったとだけは告げておかねばなるまい。
締めには扶桑茶の上ものが出たため、アスカ嬢は大層上機嫌であった。
休憩込みで十四時にしかなっていなかったが、天候要報の都合上ホテルに戻るほうが良さそうだった、大雨の降雨情報が載っていたからでもあった。
「車に戻ったら、即出すぞ」といって店の横にある駐車場に即駆け込んでいった全てが前払いで済んでいるため、出がけに「御馳走さん又来るぜ」といって出て行くことになった。
「車を回してくるからそこで待っていてくれ」と私が変更したため、「何かあったのか?」とヒジリがいった、アスカ嬢がそれに答えた「雨が降り出した様ですね、天候要報も偶に変わるので要確認なのです」と繋いでくれたためヒジリの疑問は解消された様だった。
事実、自車を回してくる頃にはそこそこ降っており車に乗るのも少しは濡れるのを覚悟しなければいけなかった。
一方通行であったため車を回さざるを得なかったわけだが、左側で付けられるのでまだましだった。
助手席にはヒジリが、後席にはアスカ嬢、サヨリ嬢の順で乗ったのでまぁ自己紹介が影響したかと思うことにした。
そこから十分ほどで戻りホテルの車寄せにいったん止め先に居りてもらい「アスカ、ホテルのフロントで五〇〇一の鍵だけ四本もらっておいてくれ。車を止めてくる」といって車寄せを離れ、空けていてもらっている一番に自車を止めに行く。
すでに滝のように雨が降っていたため、ホテルのロビーに戻った時はずぶ濡れであった。
すぐに部屋に戻ることにし、合流すると「かなり濡れているが大丈夫か?」とヒジリが聞いて来てくれた、それには「シャワーで熱いのを被れば大丈夫だろう」と答えておいた。
第十一章 第二一節へ
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