第八節:隠れ家のようなホテルと紋章たち

 オーナーに聞いて見ることにした。


「オーナーどこか、いい宿を知りませんか?」と只で聞く訳には行かないので五ブロス硬貨を支払いながら聞いて見た。


「さっきのに追われているのかい?」と小声で話すオーナー。


「追われているわけでは無いのですが、さっきのよりも厄介そうなのに絡まれたので」という。


「そうか、では」といって地図をスラスラ見やすく書き出すオーナー。


「少し古めの宿だがいい感じだよ」といって渡してくれた。


「ありがとう御座います。夜の摘まみに何か最適なモノはありますか?」


「これなんてどうだい?」といって食後酒を出してきてくれた、それには「ありがとうございます、お幾らですか?」と聞くと「ちょいとまってな、と西方語でサラリと作り方も書いてくれる」これもやろう。


「お代は三十ブロスだよ」というので、「ありがとうございます」といって支払った。


「お世話になりました」と礼をして、「行きましょうかユナ御婆様、クララ」といってその店『潮風の当たる崖の上亭』をあとにしたのである。


 シティー内の道順であるためそのまま『データパッド』に読ませて探すこと十分くらいで直ぐに見つかった。


 確かに少し古びたアンティーク調の建物では有ったがバリっバリに新品という所よりは泊まりやすそうだった。


Guarisci la fatica疲れを癒して』という名前だった。


 すぐさま、フロントまで行くと老紳士が「いらっしゃいませお泊りですか、ご休憩ですか?」と聞かれたので「泊まりで二日から三日」といって、「一人部屋と二人部屋か三人部屋は空いているかな?」と聞くと、四人部屋なのですが一人部屋と二人部屋で分かれても泊まれますよ、少しお高くはなりますが」といわれたので「ではそのお勧めの部屋でお願いします」というと「先払いになります、一泊八シルズです二日から三日でしたのでどちらにしますか?」と丁寧に聞かれたので「三泊でお願いします」といって二十四シルズを支払うことにした。



 すると「物騒ではありませんでしたか? 今日この頃この街に黒服の集団が居るのです、ナイツポリスでは手が出せないようでして、でお客様には折角来ていただいているのにすぐに帰られてしまう方が多いのです」、「どうかお客様におかれましては、いい旅行を楽しんでもらいたいのですが」といわれたのである。



 すでに交戦撃破したあとだったので「そうなんですか確かに物騒そうですね。ご注意ありがとうございます。外に出るときは注意しておきますので」といってその場はそれまでにして。


 部屋の鍵を受け取ることにした「部屋は三〇三になります」と言って鍵を渡してくれた。


 二人のところに行って、「同じ部屋だが室内で分かれているから大丈夫といって行こうか」という。


 特に見られている気配も感じなかったため、特に気を張らずに普通の旅人で行くことにした。


 三〇三へは階段であったが、ユナ御婆様が大変そうだったので手を貸そうとも思ったのだがさっきの件も有るので敢えて手は出さないことにしてゆっくり先導して上がることにした。


 三〇三に着いて、直ぐに左の上等な部屋のほうにクララとユナ御婆様を案内してから「何かあったら直ぐに僕を呼んでくれ、そして僕が来るまでユナ御婆様を御守りしてくれクララ」とお願いすると自身は隣の右の質素な部屋に入った。


 アンティーク調のいい部屋では有ったので、すこし荷物を枕代わりに休むことにした季節は秋頃でちょうどいい天気でもあったのでうとうとし始めた頃であった。


 自身の勘が告げた、何者か来たぞと思った宿帳には敢えて本名を書いてあるのだ。


 飛び起き戦闘態勢にまで持っていく、だがこの部屋では無かったようだった。


 三〇二が何者かに襲撃されたのである、が誰も居ないのを確認したのか窓から飛び出し走って逃げ去った様であった。


 確かに物騒ではある。


 そのあと普通の警察が来て現場検証などを行っていった、その際に軽く聞かれたが旅行中の者ですがとだけ答え、隣の部屋に誰が入っているかというのは全く知らないと答えるとお邪魔しました。


 と帰って行ったのである。


 二食は付けてあるので遅くになってから夕食を済ませていたところ、今日は色々済みませんでした。


「ご迷惑もおかけしたようで、これはほんの気持ちですがどうぞお召し上がりください。我がホテル特性の、ジェラートにございます」と申し訳なさそうにいわれてしまったが。


 黒服の連中でなくって良かったと胸をなでおろすだけであった、最も表情には出さないが黒服の連中が束できたら手加減はしていられないからである。


 そしてその気にかけていることを、何となくクララ嬢は分かってもいるようだった、何も言わないが。


 クララはその手の紋章にもかなり詳しいのである。


 その様子を見ていたユナ御婆様が、「占って差し上げようか?」ともいわれたが。


「今はまだ気が乗りませんので、すみませんがまた今度に」と控えめにいったため「どこか調子でも悪いのかえ?」と心配させてしまった様であった。


 夜寝る前のことである、風呂を終えて。


 ベッドの上でごそごそと考えていると、クララ嬢が起きて来ていた。


 何かあったのかと思い「どうしたんだい、こんな時間に?」と聞くと、今日の黒尽くめの服に付いていた紋章にかなり気にかけてお居られましたので……。


 流石「お見とおしだったか……」と僕がいうと。


「あの紋章は『十三代目黒騎士様の、片翼の十字架』という紋章でございます」といった。


「『片翼の十字架』?」と聞くと、「えぇ片側しか紋様を書いて無いので片翼のと言われております」ふと疑問が浮いたので聞いて見ることにした。


「クララあの紋章に近くて十字架がクロスしている紋章を知らないか?」と、すると「!!」クララ嬢が絶句した。


「何か知っているのであれば教えて欲しい」とも聞く、どんな少ない情報でも構わない。


 少し逡巡しているクララに頼み込む「その紋章に関わったことがあるんだとも告げて。安心してくれ悪いことがらで関わったんじゃない。僕がこの世界に踏み込む切っかけをくれた人の紋章なんだ」と僕が少し強めにいってしまった。



 いつの間にかユナ御婆様も起きて来ていた「どうしたんじゃぃ、こんな遅い時間に……」と「いえ、似てるのは当然でございます。その方の名は、第十四代目の黒騎士ミハエル・Kケイ・カニンガム様の紋章のことでしょう、両翼の十字架の異名が付いた紋章でございます。基本的に二刀流を好まれ集団になること、特に徒党組むことを嫌われ孤高の黒騎士となった方の紋章なのです……、もし今日のその紋章のことで負い目を感じることはございません。むしろ叩き折って正解だったと思われます。ここに十四代目の黒騎士様がおられても同じことをしたでしょうから」と一気にクララ嬢がしゃべった。



 そしてこうも追加する「十三代目の黒騎士様は配下を持っておられましたが、黒騎士として十四代目の黒騎士様に道を譲られてからは引退なさったと聞いておりましたが今日の暴挙です。何かあったとしか考えられません、あの対処で間違ってなかったと私は思います。それに何が有ったとしても貴方に付いて行くと決めましたから。今の私に怖いものなどありません」とまで続けた。



「ありがとう少し気が収まったような気がするクララありがとう、次に十三代目が立ち向かって来たとしても全力で行く覚悟ができたよ。本当にありがとう」と僕が言った、そしてその日はお開きとなり寝るということになった。



第九章:過去話後編 第九節へ

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