第七節:雑魚と紋章と

 それとちょうどT字路の行きどまりで、三方から五人づつが現れたそこそこの腕はありそうな者たちだった。


 お決まりの文句が出た「てめーら有り金全部おいていけ。そうしたら許してやる」と……。


「はぁ、これがお決まりの文句か」といいながらユナ御婆様とクララ嬢を壁側に寄せる。


「聞こえなかったのか?? 、もう一度言うぞ有り金全部おいていけ!!」と強気でいったようだった。


「聞こえてる聞こえてる……そんなに耳は遠くないよ」というと。


「バカにしやがって」と全員が魔導光剣を抜いた。


「抜いたってことは何が起こっても、文句は言えないってこと知っているよね?」と僕が半笑いの顔を創るのと同時だった。


 そいつ等が飛び込んでくる「死ねやっ!!」と言いながら、その瞬間鏡面二重分身を使った僕が四人に分かれる。


「たかが四分身位で!!!」と言いながらそいつは十六分身したが僕の心眼はそいつの本体を捉えていた正面のA体はユナ御婆様とクララ嬢の護衛に残し、B体で十六分身したヤツの本体の周囲に三十六分身するついでに周りのヤツも一緒に素手で叩きのめす。


 右側も左側も同時に襲いかかって来た「只の分身には守れねーよヘッ!」といいながらユナ御婆様は、何が起こているのか判らない様であった。


 右側をC体で左側もD体で残った分身数十二ずつでそれぞれが、五人ずつを相手にする。


 A体は魔導光剣を抜いたところだった。


「乱撃って言うのはこーするんだ!」と僕が叫びB体で4人をしばき挙げて転がしリーダーらしきの男の頭をつまみ上げ分身を消す。


 B体の周りから三十六分身は消えたが、C体とD体の分身は消えなかった詰まり本当に四人いるのだ。


 A体も魔導光剣を抜きっぱなしである。


 C体側とD体側の敵が全て全滅した。


 手加減はしてあるので骨は逝っているだろうが、意識は失わせてあった。


 上からさらに降って来るところまで計算に入っていた、A体でそのまま跳躍して振って来た分身体二十四体を分身体二十四体で全て麻痺モードで叩き切った。


 流石に二重分身は疲れるのでC体とD体は消したが、A体とB体で鏡面分身の維持を続けて居たB体はサブリーダー格と思われる男を完全拘束した上で気を失わせる。


 B体を消して本体で上から降りてきて麻痺モードで全員突かれた上で痺れている最後の男と思わしきヤツを拘束する。


 そして僕がさらに跳躍した「クララ、ユナ御婆様を頼む!」といって上からさらにもう一人こいつは鏡面分身をしたので倍の鏡面二重分身で相手をする。


「てめぇ! ただの神官じゃなかったのか」とそいつがいった。


「誰がただの神官だと言った!」といいながら、分身数を一気にリミットまで上げる。


 合計六十四分身であった。


 そして全員が全員手刀で持って叩きのめす、当然当て身から合気から略全ての技が叩き込まれた。


 当然そいつの鏡面分身が解ける。


 そいつが気を失ったのである。


 そしてそいつも拘束した。


 結束バンドで全ての指をくくるという方法で、舐めてはいけないこうされて転がされるとほぼ動けなくなるのである。


 これは学生時代に修得済みであった。


 ふと見ると、そいつの左胸にシルバークロスの傾いたヤツが一個付いていた、そしてそいつら全員黒い尽くめであった。


 嫌な予感がしたので魔導的察知を行う。


 だが、周囲にはいない様だった。


 もしダブルクロスの相手が現れたら……俺はどうするんだろうか? と考えていると「お見事でした」とクララ嬢がいった。


 全ての分身を閉じ臨戦態勢を解除する。


「お主何者じゃ」というユナ御婆様のビビり顔がそこに有った。


「少なく見積もっても剣聖ではなさそうじゃ……、じゃが、助けてもろうたことに関しては感謝をせねばなるまい」というユナ御婆様。


「ここにはもうすぐナイツポリスが来るでしょう」と僕が気配を感じながらそういった。


「こちらへ。一旦場所を移しましょう」と言ってクララ嬢に預けていた荷物を担ぎ、ユナ御婆様にも手を指し伸べる。


 先ほどの悪魔のような笑みはもうそこには無かった。


「ユナ御婆様行きましょう、ここに居ても詰まらなくなるだけです」と僕がいった。


「そうじゃな一旦場所を移すとしよう」と同意したので、ナイツポリスの気配の無い道を選んで歩き。


 一軒のシーフード料理の店に入った。


「シティリアスに来たならば、シーフード料理を食べて行かないと損ですよ」とオーナーが出て来たチップを渡し、五ブロス硬貨(一ブロス[単位B:青銅貨、日本円換算で百円程])を渡しお勧めを三人前といった。


「ではコースで宜しいですか?」と言われたので「それでお願いします」と僕が言った。


「お主は剣聖ではないな、なぜあの技が使えるのじゃ」と小声でユナ婆様がいった。


「一度神域で修行をしたことがある身ですので、その時に拝見したのです」といった。


「見ただけで使えるようになるものなのか……」と絶句するユナ御婆様が居たが、不意に何か引っかかることがあり少し聞いて見ることにした「なぜあの技をご存じなのですか?」と小声で。


「聞く人から偶々聞いただけなのじゃが、分身ではなく身を分ける方法が剣聖の技にあると聞いただけなのじゃ」と若干焦り気味で小声で話すユナ御婆様が居た。


 流石に昼過ぎだけはあり客もまばらだったため「この会話は、幸いながら誰にも聞かれることは無かったのだが」全ての料理が来て一度に来たわけでは無いがカルパッチョから始まりサラダふうのピザ・フィッシュアンドチップス・若鳥のロースト・お任せパスタに終わった食後のワインが来たが僕はワインは開けずユナ御婆様にほとんど差し上げた。


 そして会計で百五十B(百五十ブロス[単位B:青銅貨、日本円にして一万五千円ほど])ですと言われたので二シルズ(二シルズ[単位S:銀貨、日本円にして二万円ほど])で払い釣を五十Bもらった。


 その上でさらにカフェ・ラッテをもらえませんか三人前といって、十五Bを先払いすると食後の一杯を楽しんでいる時だった。


 不意に殺気では無いが何か気配がした、ナイツポリスだった。


 がオーナーの計らいか、「ウチにはそんな物騒な方は居られませんよ」と切り出したのでナイツポリスは引き下がるしか無かったのである。


 どうやら情報通も、この店を利用するようであった。



第九章:過去話前編 第八節へ

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