過去話 ワイトラウド王国編

第九章:過去話前編 黒騎士と僕と神官戦士団

第一節:孤児は苗字を与えられ神学校へ行く

「よそ見するなヨ! こうするんだ!!」と言って黒服の男が腕を振り抜く、「これがインパクトブレイドだ、よしやってみろ!」街はずれだが元は結構いい身分の者のお屋敷であったらしい、黒服の男が少し怪我を負ってこの町の端にあるこの屋敷に逗留しに来たので在った。


 気まぐれで子供相手にナイツが混じってないか調べている様だった、その中に偶然だが僕もいたのだ。


 あの缶を弾き飛ばしたヤツにこれをやろう、と言って金貨壱枚を出して見せた。


 子供にとってはそれが何なのかはっきりわからないヤツもいたが、僕には分かった一ゴルト金貨だと。


 とりあえずやって見ようという輪の中に、入って行ったのを覚えている。


 風は起きるものの缶が、飛ぶヤツまでは居なかった。



 僕の前までは、そして見様見真似で指先にまで力を入れその黒服の男と同様に体の振りまで計算に入れて腕を振り抜いた。


 その瞬間缶が凹んだ上、吹き飛んでいった……“カン! カラカラカラ”と。


「ヒュー、やるなぁ坊主名はなんていうんだ」とその黒服の男が言った、「アスカ」と僕が平文を読むように抑揚を付けずに言った。


 近付いて来た黒服の男は左胸に十字架をクロスさせた紋章の様なものをしていた。


「この金貨はお前のだ」と言って僕にその金貨を渡してくれた、六歳半頃の話であった。


 すでに下級の貴族の家に引き取られることになっていた僕は、最期の遊びと称し孤児院を抜けだしてきていたのであった。


 引き取られるまでに、三週間程時間が有ったのである。


 凄く遠い所からの、引き取り申し出だったのである。


 他にも「お前には見所があるから、少しは教えてやると言われ……」それから少しだけ習い出したのであった確かに見所があると言われるだけあって、他のヤツより観察眼がたくましく一度見た技は二度目は見ずに放てたのであった。


 それから基礎技だけでは有ったがかなりその黒服の人といたため、分身や残像まで熟せるようになっていた。


 しかし「まだ自分は弱いことを知って置け、世の中にゃ強いヤツなんて沢山居るんだ」と言われていたので、その古びた街はずれの屋敷以外では技は使わないと決めていた。


 その黒服の人はミハエルと名を名乗ってくれたのは別れが訪れる寸前だった。


 その人の傷が癒えたのである。


 二週間半程は、居たであろうか……。


 もう半週間がたち、それと共に僕もその街を離れて行ってしまった。



 下級貴族の家に引き取られて行ったのである、そこでは今までの僕にとっては夢のような暮らしが待ってはいた。


 下級とはいえ、由緒正しき貴族の家柄ではあったのである。


 そこで与えられた名字は「これからはアスカ・ジークレフがあなたの名前よ」と言われ抱きしめられた。


 大叔母様からそう言われたのである。


 大叔母様に子供は居たが戦が流行っていたため、戦で二人の子を亡くしてしまったそうなのである。


 その屋敷に使えているメイドたちからは、「大叔母様の前で技や刀や剣を持ってはいけませんよ」と言われていたので持たなかったし技は封印した。


 代わりに、七歳になるまで勉学にはげみ、人並より上位にまでにはなれたのであった。


 いわゆる天才型では無くて、秀才型だったのである。


 学業もかなりできて来たが、この世界の成人年齢は普通十歳位だった。


 そこからさらに学問を続けようとすると、神学校に入るしか道が無かった。


 そのため神学校に入ることにした。


 元々孤児院育ちで祈りをささげるのが、日常だったのでそれ自体は苦にはならなかった。


 ナイツであるということが、逆に苦にはなっていて重みであるということも分かった。


 ナイツはナイツの学校へ行かねばならないのである六歳半くらいまでは、手加減はしていて、ちょっと喧嘩の強い子供くらいだった。


 それでごまかせてはいたのだが、成長期になるとごまかしがきかなくなっており。


 ナイツであるということを、大叔母様に打ち明けることになるのである。


 抱きしめてくれたのは覚えているし「貴方がナイツでも、私の子には違いないのだから」と言って、神学校にあるナイツの学校に入ることを許してくれた。


 神官戦士団を要するワイトラウド王国では、ナイツは神官戦士であるということをもっとうにしていたのでちょうどよかったとも言えたが。


 途中編入生である上に秀才だったので目立ち、虐めの対象になってしまったのであるが……。


 陰険ないじめも有ったが、元々孤児院育ちであるためか、その手の陰険ないじめには慣れっ子であったせいもあってとも思わなかったのである。


 その代わり力で来るヤツは技で決めて落とせ、という黒服の人の言葉通り。


 力に対抗するには技としてみたところ、強い上に頭も良いヤツが入って来たと噂にはくが着いてしまったのである。


 その箔を見た一部の神官戦士からはあの子は筋が良い、成長すればもっと腕は上がる筈だとクラスが次々と変わって行ったのである。


 最初はFクラスにいたのが、三カ月後にはAクラスまで上り学力にしても戦闘力にしても平均以上だ。


 平均どころか上の上級ですよ、あの子は大学を過ぎても院生にならないのであればぜひ神官戦士団に入れるべきだとも言われてしまっていたのである。


 大叔母様を悲しませない様に技は一切使わなかったが、技を知っているのでワザと喰らっても当たりが浅かったりほぼ見切って居るんじゃないか? という噂まで流れ出ていた。


 確かに一度見た技は直ぐに覚えてしまうと言う特技を持っていたためか、虐めるヤツが増えれば増えるほど使ってくる技を見抜きで見て覚えてしまい。


 技のレパートリーが増えて行って自分でも出せるようになってしまっていたことであるとはいえ、学生の使ってくる技に本気の技で対応することは無く斜に構えていることが多かった。


 そのためその態度が気にくわないとかで一度だけ、その学生の兄である神官戦士と対決してしまったことが有った。


(八歳半頃の話である)


 それを偶然見て居られたのが、当時の学長で現在の聖ワイトラウド国王陛下だったのである。


 モノモノしい神官戦士が学校内に進入してきたのだ、しかも武器まで持って。


 その時に神官戦士が持っていた武器は、魔導光剣であった。


 神官戦士の繰り出す攻撃技をどれも見抜きで避けつつ掠りもせずにそこに立っているだけでは有ったが、存在感が半端なかったらしい。


 その後その弟も魔導光剣を持ち参戦して来たが、二対一になっても戦力比が変わらないというものを目の当たりにした。


 学長は「飛び級でも良いから、神官戦士になって見ないか」といって来たが「学業を修めに入ってきたので、学業が優先です!」と跳ねてしまった。


「僕は戦いに来たわけでは、無い」と言って跳ねのけた上で「勉学を修めに来たのですが、そのために、喧嘩を売られるから負けないようにかわすのみです」と学長相手にいってのけた。


 学長は「分かった、では院生になるのかね」といわれたので「目指します、僕のためにも」と学長相手にいって退けてしまった。



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