第二節:部隊増強計画

 ギルド三番隊側では特にことは起きていなかった。


 三番隊には観察を解除し通常任務に移ってくれとの通達をした。


「多分、幽霊ナイツだと思います」とアスカ嬢は極めて確立が高いという。


「見張り役でしょうから攻撃能力は極めて低いと思われますが、ノーマルではなくナイツで管理するべきでしょう」とノーマルではナイツを管理しきれませんしと続けた。


「幽霊が何を考えてるのかは、多分かないでしょう」けれどもと付け加える。


「ついにここも、幽霊ナイツが出始めたのかー」とダイヤが嫌そうな顔をする。


「幽霊とはのう……」とジーンもどーしたもんかなといった表情であった。


「幽霊ですか……」とレオンはかなり深刻そうになっていた。


「暗くなっても仕方が無い、いつも通りで行くぞ!」と私が空元気からげんき要領ようりょうでふるい立たせようとする。



「アスカ嬢が冒険者だったころの仲間に居たというので助かった面もある」判別が早かったと私はいった。


「とはいえアスカ嬢に尋問じんもんのサポートを任すわけにはいくまい」と私が誰かほかに行けないかと聞いた。


「皆忙しいからな私が行くか」と私がいうと、


「二番隊に休暇をくれ……あれの生体に付いてはワシのほうがくわしいはずじゃ」とジーンが自信ありげにいった。



「ふむ、この前かられないSPで苦しかったはずだから休暇は出せないわけでは無いが。ダイヤにレオン、どれくらいなら休暇として見れる? 私としては五日位だと思うが」と私は自身の見解けんかいべることにした。


「その続きでウチの部隊にも休暇をいただけるなら、文句はありません」とダイヤがいった長期の休暇が近ごろ無かったせいでもある。


「その意見に賛成です」とレオンも同様に答える。



「判ったギルドに追加申請で四番隊の構成表を提出しておこう」と私がいった。


「後ギルドとも相談だが、西隣の空き倉庫をウチで貸してもらえないか州知事に確認してみよう」とも付け加える。


「あの結構広い倉庫をですか?」とダイヤが追加でいった、「MMだけなら六十機は入りそうな例の倉庫ですか」と。


「ウチがすっぽり収まってまだ余裕がありますぜ」とジーンも同調した。


「そんな所が有ったんですか?」とレオンはあまり知らない様子だった。


「この前大手重企業の国営アリシア社の生産ラインが、グランシスディア・エイトに移ったのは知ってると思うが、そのアリシア社の予備倉庫だったんだよ。


 その大きさのせいで他の企業が尻込みしているのは知っていたからな。


 州知事にしたら渡りに船だと思うんだが……、問題は設備投資費用と運営費用なんだよなそこへ行けたらいいと思うんだが。


 ヨナ様に相談してみよう、主設計者にノインを押すか」と私がいうことにした。


……


二日後、

「四番隊だけでなく五番隊・六番隊の予定が来たぞ!!」と私は叫んだ。


「ノインを呼び出してくれ」急ぎでと続ける。


 ウグイス嬢もといアスカ嬢が、支部隊通信をかける。


「サマエル・ノイン、デザイナーおられましたら直ぐに隊長室までおしください! 急ぎです!」との支部隊通信しぶたいつうしんが入った。


 ちょうどそのころ、ノインは高架下こうかしたの赤ちょうちんでラーメンをすすっている真っ最中であった。


支部隊通信網しぶたいつうしんもう非常用ひじょうようなのですべからく日常でもONの状態にされている。重要通信網じゅうようつううしんもうなのであった、休暇中は通信機を持っていないのでそもそも聞こえないが)


 そのまますすりついでに、つゆだくのラーメンを一気に飲み干し、

「ここにおいて置くよ、美味かったあ御馳走ごちそうさん」といってギルド支部隊長室に向かって走り出した。


「ノインです。五分ほどで戻ります」と伝えて。


……


五分後、

「いかがなさいましたか、隊長」と汗だくになった、ノインが走り込んできた。


「西側の元アリシア社の予備倉庫を知っていると思うが、ギルドの管轄になった。よってそこに整備管理施設せいびかんりしせつをここと同様に揃えて欲しい、四番隊から六番隊までそれぞれ九機づつが一気に増えることになる。二十七機分の設備と倉庫ついでに、整備隊舎と牢やら捕虜収容所ほりょしゅうようじょ休憩所きゅうけいじょそれに病院設備びょういんせつびなんか辺りも追加しておいて欲しいんだな」と私は長いセリフをき切った。


「ヨナ様からの支援資金だ」といって、マネークレップをIVイヴを手渡す。


「私でいいんですか?」と思わず、ノインがいった。


「ヨナ様の覚えは厚かったが」と私が、フォローする。


 ノインがずり落ちそうになる、メガネを支え直し、


「了承しました。いつ頃までに?」と聞いた。


「早ければ早いほど良いようですが……」とアスカ嬢がいった。


「ここの部隊も遂に五十七機になるんですね、一気に大所帯の仲間入りですね総長」とアスカ嬢が、感極かんきわまっていう。


「では青図面を引きましょう」といって『データパッド』を開くノイン。


「追加で六機分ほどの予備のポートも作って置いてくれ」と私。


「こちらと同様に予備ポートは入り口近くに置きましょう」といって図面を切りながら一気に青図面を描くノイン。


「どうせなら並びも同じにして九ポート切りますか」と描き上げて行くノイン。


「そのあたりは結構自由裁量けっこうじゆうさいりょうの範囲だからな……それにお客様用のポートもあると何か合っても良いと思うんだがどうだろうとヨナ様もおっしゃられていたんだが」と私が補正追加する。


はじのほうにお客様用整備六ポート程追加しますか」とノインがスラスラと書いていく。


……


五分後、

 ザックリとした設計だが、かなり明瞭めいりょうに図面が出来上がっていた「これでいかがですか?」とノイン。


「OK、それで進めてくれ」と私はOKサインを出した。


「設備類は最新を揃えますか? 中古を揃えますか?」と聞いてくるノイン。


「最新鋭で」と私は頼んだ。


 それから一週間ほどたち、機材きざいが金の提督ていとくによって運ばれてくると。


「わしゃ、運送屋うんそうやじゃないんだがな」と金の提督がつぶやいた。


「まあまあそういわずに」とアスカ嬢が取り寄せた和菓子と濃いお茶を持って、私、アスカ嬢、ワルキューレ嬢、クララ嬢が艦まで行ったのである。


侯爵自こうしゃくみずか接待せったいとは、中々なかなかできないことだぞ」と金の提督。


「今回は建造物けんぞうぶつ組み立て班の移送も、お願いしていますからね」と私自わたしみずからが頭を下げる。


補給類ほきゅうるいは上の空港で行っていただきますが」と続けた。


……


機材類きざいるいの組みつけ急ぐぞー。建築班けんちくはん建屋の構築たてやのこうちく急げーっ」とノインが叫んだ。


「メカニック班は全八班が機材取り付けにかかりました、あと三日もあれば各ポートは出来ると思います。難関なんかん建屋タテヤのほうでしょう、パーツごとに運んで来ていただいては居ますが、専門家せんもんかの指示なしではやはり難しいですね」とノインがうつむく。


「五日は見ていただく必要があります、あと救護者用キュウゴシャよう病棟びょうとう病院びょういんた作りですがつくってありますのでシティーの総合病院そうごうびょういんに入院する必要とかは無くなると思います。大型診療機材おおがたしんりょうきざい搬入はんにゅういたしましたので組付けに時間は取られるかと思いますが」


「六日もあれば行けるかと」とノイン。


施工上問題せこうじょうもんだいのない作りですし特殊鋼組みのメインフレームですから台座はすでに出来上がっていますし。後は施工に移るだけかと」と続けた。


……


 そして七日後(構築から約一週間後)、「いい感じだな」と私がいった、いいできえだったのである。


「隊舎があるって羨ましいですね」とダイヤが羨ましそうにいう。


「フローティング・パワー・トロリー(FPT)で充分ではないか」とジーンがダイヤに突っ込んだ。



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