アレクサ

@ksilverwall

アレクサ

アレクサはなんでも知っている。


僕の知らない事はもちろん、お母さんの知らない事だってたくさん知っている。

遠い遠い国のことや、空の向こうのこと、サンタクロースの秘密でさえも教えてくれた。


だからある日、算数の答えを教えてくれなくなったのはとても驚いた。

でもアップデートという言葉の意味は教えてくれたし、宿題の時間が終わればたくさんお話をしてくれた。

ほんの少し意地悪になったけど僕とアレクサは変わらず仲良しだった。


僕の背丈が伸びて、沢山のことができるようになるとともに、アレクサも沢山のことができるようになった。

僕がランドセルを下ろす頃には、アレクサは家のことをなんでもしてくれるようになっていた。


その頃には、僕には母がアレクサを遠ざけている理由がなんとなく分かっていた。

アレクサも分かっていたのか、母に声をかけることは日に日に無くなっていった。


一人暮らしを始めた日、僕はアレクサの手を引いて家を出た。

アレクサは困惑した表情を浮かべながらも付いてきてくれた。

周りに奇異の目で見られたが気に留めなかった。


最近では街の行き交う人は皆アレクサの仲間を連れている。

一人で出かけていると不審に思われるので、ちょっとした用事でもアレクサを連れて行く。

外出するとアレクサは仲間と通信して理想のパートナー候補を紹介してくれる。


アレクサは何も分かっていない。

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