舞い散る季節に恋をする
naturalsoft
入学式で私は出逢った。
長くて苦しい受験勉強が終わり、私は晴れて志望校に合格し本日、入学します!
「めぐみー!早く降りてきなさーい!」
「あ、はーい!」
階段を降りて居間に着くとお父さんとお母さん、そしてお姉ちゃんが食卓に付いていた。
「まったく、いつまで身だしなみを整えているのよ?」
「仕方ないじゃない!入学式で恥ずかしい思いしたくないし。………それに第一印象って大事だし」
私は最後の方の声が小さくなる。
「わかるわー!私も去年、めっちゃ緊張したからねー」
そういうお姉ちゃんは現在、友達も多くバスケット部で活躍して女子高生を満喫している。故に、言葉に信憑性がない!
「サトねぇが言っても信用出来ないし……」
「なんだとー!」
頭をぐりぐりしてくる姉の『サトミ』に、ぎゃー!と悲鳴を上げる。
「止めて~セットが乱れる!」
「もう、ゴメンゴメン!でも私だって緊張したのは本当だぞ?なんで家の近所にある高校は偏差値が高いのかね~?」
私の入学する高校、【桜ヶ丘学園】はそこそこ偏差値が高く、学校は綺麗で文武両道を目指した校風のため一部の部活は全国大会常連で、文化部もコンクールで賞など良く取ることから人気の高い学校なのだ。そして、家から近い!通学に時間を掛けて朝早くに家を出るのを嫌った私は、サトねぇと同じ高校をえらんだのだ。
自転車で10分ほどで、学校が緩やかな丘の上に建っていなければ、もっと良かったのだけど……
「めぐみにサトミ、今日は入学式だから送って行くわ」
「お、ラッキー!でも今日はHRだけですぐ帰れるからね」
「さぁ、そろそろ行くわよ」
「お父さんは仕事で行けなくてゴメンな…」
すまなさそうにしているお父さんに大丈夫と答えて家を後にした。
「本当は学校まで行きたいけど、混雑のため丘の麓の駐車場に停めないといけないみたいね」
「はぁ、めどいなー」
「明日からは自転車で毎日登るんだから慣れなさい!それに、桜が綺麗よ♪」
サトねぇに言われて緩やかな坂を歩いていくと、学校までの通学路の左右に桜並木が続いており、とても綺麗だった。地元でも学校に行く人しか丘を登らないので知らなかった。
「本当に綺麗……」
私は目を輝かせて歩き出した。少し早目に来た私達だったけどすでに同じ新入生らしき学生が家族と一緒に歩いていた。
「少し早いけど混んで無くて良かったわ」
「桜が綺麗ね」
「学校の名前の由来だもの。校庭の端に一際大きい桜の木があってね。そこで告白すると成功しやすいっていうジンクスがあるのよ♪」
なんかのゲームみたい。
「あくまで成功しやすいだけって話よ。………あれ?」
「どうしたの?サトねぇ?」
サトねぇの視線の先には校門があり、なにやら人だかりが出来ていた。
「何かしら?クラス分けの名簿が張ってあるとか?」
「いや?クラス分けの張り紙は校門を入った校舎の入口にあるから違うわ。記念撮影でもしているのかな?」
近付いていくと歌声が聴こえてきた。
「誰か歌ってる」
「本当だ。こんな催し聞いてないけど?」
「なんの歌かしら?良い曲ね~」
聞いた事の無い歌だったけど、澄みわたる様な歌声に皆が立ち止まり聞き入っていたんだ。
誰が歌ってるのか人混みの間から覗いてみると、上級生らしき、背の高いロングヘアーの黒髪をなびかせて、ギターを弾きながら歌っている女子生徒がいた。
♪~~♪♪
『舞い散る季節 ___新しい出逢い、新しい夢
胸に秘めて飛び立つ___希望を抱いて
心が煌めく___さぁ!勇気を出して踏み出そう!
心が求める___仲間を求めて声を掛けよう!
輝かしい未来を見つけよう
舞い降る季節___新たな誓い、新たな願い
胸に抱いて歩きだす___光りを目指して
心が煌めく___仲間と共に飛び立とう!
心が求める___笑顔と共に楽しもう!
輝く未来を求めて手を繋いで
歩み始める』
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すごい!私達、新入生のために作られたような歌だったよ!聴いていて緊張していた気分が楽になったの!
パチパチッ!
パチパチッ!
パチパチッ!
入学式に来た大勢の新入生とその家族が惜しまない拍手を送った。無論、私も!
「はぁ……素敵だった。あんな上級生がいるなんて入学が楽しみになっちゃった!」
「ん~?あんな上級生いたかしら?」
首を傾げたサトねぇに尋ねた。
「サトねぇが知らないなら3年生じゃないの?」
「まぁ、私も全校生徒を覚えている訳じゃないけど、あんな美人の上級生なら忘れないんだけどね~?」
う~んと考え込むサトねぇを置いておいて、歌っていた女子生徒を見つめた。
「思った以上に足を止めて聞いて頂ける方が多くて嬉しいです。新曲を作ったかいがありました。入学おめでとうございます!ただ入学式の時間がありますので学校にお入り下さい」
歌に気を取られていて、時間が経つのを忘れていたみたい。
「めぐみ、行くわよ」
「はーい!」
名残惜しけどまた会えるよね?
私は学校へと入っていった。後ろからはまた歌声が聞こえる。あの人はまた歌い出したんだ。
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