鍛冶講座ですわ♪

工房と家が一緒になっている建物に入ると、カーン、カーンと剣を打っている体格の良いドワーフがいた。手を止めてシオンを客間へ案内した。


「ふぅ、こんな所にやって来たのは高ランクの冒険者以来お前さんが初めてだ。何のようだ?」


族長のガゼフまた名刀を打ってくれという依頼だと思っていた。


「御初に御目にかかります。この度、大樹海の領主に任命されたクロスベルジュ公爵家が長女シオン・クロスベルジュと申します。この度、男爵の位を頂いております」


「何じゃと?領主?」

「いえいえ、本当ですわよ?これが王様からの委任状です」


羊皮の用紙に掛かれた任命書を見せた。するとこの場にいたドワーフ達が一斉に笑だした。


「そんなもんがここで何の役にたつのじゃ!」


がはっはっはっ!と笑うドワーフ達を冷めた目でみるシオンだった。そして微笑みながらドワーフ達にいった。


「ええ、そうですわね。私もこの任命書は身分証の代わりとしか考えておりません。ただ、私がここに来たのはドワーフ達に新しい鍛冶の技術をお教えする為ですわ♪」


ピキッ!!!!?


「………なんと言った?」

「あら♪聞こえ無かったのかしら?まだボケが始まるには早くてよ?現在のドワーフの鍛冶技術を見直し、最新の鍛冶技術スタイルに変更してより高次元の【魔剣】を生産して頂きます!」


ピキッ!ピキッ!


「なんじゃと!ふざけるな!!!!貴様に何の権利があって、どの口が物をいうのだ!」

「そうだ!俺達の鍛冶技術は大陸1だ!」


ドワーフ達は各々、私を罵った。しかし私に手を出さないのはワイバーンの事が伝わっているからだろう。


「さて、ではこうしましょう。族長と私で鍛冶勝負をしましょう。1週間掛けて名刀を作り出し、ここにいる皆さんで判定してもらうのです」


ピキッ!ピキッ!ピキッ!ドッカーーーーーーーン!



「やってやろーじゃないか!ワシらをなめ腐りやがって!!!?」

「では負けた時は私のいう事を聞いて貰います」

「いいじゃろう!貴様が負けた時は一生涯ここでこき使ってやるわい!」


こうしてドワーフと私の鍛冶勝負の幕が切って落とされたのだ。


「私に工房を貸して欲しいのと、鍛冶の手伝いが出来る者を10人ほど貸して下さい」


「いいじゃろう。だが、10人とは些か多いのう?」

「実際、鍛冶をしてもらうのは2~3人だけです。後は私の【最新鍛冶技術】を学んで貰います」


「この!いけしゃしゃと!」


シオン達は、工房の1つを借りて泊まる事になった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そして次の日─


工房に集まったのは鍛冶見習いが5人いるが、後の5人はベテランだった。ドワーフは鍛冶技術に誇りを持っており、不正はせずに正々堂々と勝負するようだった。


「さて、私の指示通りに動いて貰いますね」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【シオンの簡単!鍛冶講座♪】


まず、インゴットからすでに剣に利用する鉄板を切り出しておきます。意外に知られていないのですが、1つの素材・・例えばメジャーな鋼鉄などの素材をカンカンと叩いて剣が出来る訳ではない。中央の刃の部分になる素材と両側に地金となる別の素材鉄板を溶かしながら溶接して刃物にしていくのです。┃│┃こんな感じ!


その時に鍛接剤として【ホウ砂】と言うのを使う。ホウ砂は900℃弱で融解し、酸性の液体になる。むろん、その他の方法もあるので一例として考えて欲しい。


芯となる刃の部分を作り、折れないように地金を張り付けていきます。その芯となる刃にはこの世界にはまだ無かった【超合金】を私は作り出していた。通常の純金属をただ叩いて鍛えるより、複数の素材の粉末などを混ぜ合わせて強さ・耐食性・耐久性などの改善したのだ。


この異世界ではミスリルやオリハルコンなどの希少鉱石を使うのが強力な名刀を作る主流だが、材料が高価で数も少ない。しかし、私の超合金は鉄にミスリルと炭素の粉末化合物を混ぜるだけなので、まだまだ安価で大量生産出来るのだ。



以上、解説終わり!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ってな感じでお願いします♪」

「本当に、こんな物を混ぜるだけで耐久性が上がるんですか?」


「ええ、1度試して頂ければわかると思いますわ。今後はより最適な混合配分を調べながら試作していってもらいます」



こうして戸惑いづつも、シオンの指示に従い新しい技術を見てみようと、好奇心旺盛なドワーフは従っていくのだった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る