我慢には限度があります!

大樹海の手前で馬車を降りました。ここからは徒歩です!


「お嬢様、重くないですか?」


唯一の従者であるクルスが尋ねてきた。


「大丈夫よ!さぁ!行きましょう!」


大きなリュックを担いでいざ行かん!未知の世界へ!!!


てくてくっ、てくてくっと歩いて行きます。すると、狼さんが襲って来ました。殺ったぜ!お肉ゲットです!サクッと殺りまして、皮を剥ぎ肉を解体しました。


「お嬢様、解体くらい私がやりますよ!」

「いえいえ、これからは自分で何でもしなければならないのですから」


嬉々として狼を解体するシオンを見て、軽くため息を付くクルスだった。


「お嬢様、口調が変わってますが?」

「ここは貴族社会の外よ。拳がものを言う世界で綺麗な言葉を使っていられないわ!」


解体が終わり、肉をしまうと歩き出しました。2時間ほど歩くと、小川の流れる開けた場所に獣人族の集落がありました。簡易版な門が設置されて集落を木で出来た囲いで魔物の侵入を防いでいるようです。


「何者だ!!!」


門番の方が言って来ました。


「私はミスリル王国の国王陛下から大樹海の領主に任命されたシオン・クロスベルジュ【男爵】です!自分の治める領地を視察に来ました!」


シオンは国王陛下から頂いたサイン入り任命書を見える様に開いた。


「ふざけるな!ここは俺達の土地だ!王国の奴等の好きにはさせない!」


あらら、交渉もしてないのですがファーストコンタクトは失敗かな?これは遂に、私の黄金の拳の出番ですわね♪


ワクワク♪ワクワク♪


「お嬢様、どうしてそんなに嬉しそうなのですか?」

「だってこれから楽しいパーティー(血祭り)の始まりですもの♪」


「はぁ、さようでございますか……」


私はクルスに少し下がっているように伝えて、今にも門を開けて襲ってくる気配の獣人達に、ワクワクしていると、村の方から族長さん?がやって来ました。


「何事だ!?」

「族長!この者が訳のわからない事を言って来たのです!」


かくかくしかじかであります!


「ほう……大樹海の領主に任命とは、確かに面白い。どのような奴じゃ?」


あら?目が会いましたわ。私の姿を見た族長さんは慌てた様子で指示を出しました。


「すぐに村の者を全員呼んでくるのだ!装備も忘れずにな!」

「族長、どうしたのです?こんな小娘に?」

「いいから早くしろ!あの御方がその気になれば門など意味はない!蹂躙されるぞ!」


!?


「は、はいっ!」


村にある鐘の音がなり、わらわらと獣人達が大勢入口に現れた。


「待っておられたのは余裕の表れですかな?」

「いえいえ、大勢の前で話た方が手っ取り早いですからね」


ざっと50人ほどでしょうか?なかなか居ましたね。


「もう1度言いますよ!この度、私はミスリル王国の国王陛下から大樹海の領主に任命されたシオン・クロスベルジュ【男爵】です!自分の治める領地を視察に来ました!」


!?


「ふざけるな!俺達を奴隷にして無理矢理働かせようとした王国の奴等を許せるか!ここは俺達の土地だ!さっさと出ていけ!」


獣人達は一斉に暴言を吐いてきた。うん!これは仕方がないね。


「その節は、一部の王国貴族がご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」


シオンはその場で正座をして頭を下げた。いわゆる土下座である。


「そんなことで住む土地を奪われた俺達の気が済むと思っているのか!」


族長さんも不思議そうに言った。


「何故、貴女が頭を下げるのですか?」

「同じ王国に住む貴族としてのケジメです!」


誰かが石を投げてきた。石は私に当たりましたが、鍛えているのでどうって事はありません。しばらく我慢していると、後ろにいた従者のクルスに弓矢を放って来ました。石が届かないと判断したのでしょう。幸い、弓矢はクルスの腕を掠めた程度でした。



プッチーン!



おや?何かが切れた音がしましたね。まぁ良いか………


シオンはゆっくりと立ち上がると獣人達に言った。


「王国がしたことで、私に石を投げられるのは仕方がない。でも……」


一呼吸置いてから大地が震えるような声で叫んだ!


「私の大切な無関係な従者に弓矢を放った奴は誰だ!!!お前達も無関係な者を害するクズ共なーのーかー!!!!」


シオンの怒りの殺気に腰を抜かす獣人もいた。


「やはり、間違い無かったのか!?」

「族長!奴は何者なんですか!!!」


「容姿からまさかとは思ったが、【アレ】は【虐殺姫】じゃ!!!?」


!?


「マーダープリンセス!!!!!!!?」



シオンは魔力をみなぎらせ、髪の毛が逆立ちしている。まるで鬼のような姿である。


「許さない………!」


拳を振り上げると木で作られた入口を殴り飛ばした。


ドッカーーーーーーーーン!!!!!!



「ひいぃぃぃぃ!!!!」

「拳で門が!!!?」

「嘘だろう!!!?」


慌てる獣人族はやっと理解した。触れてはいけない龍の逆鱗に触れたのだと……


ゆっくりと歩いて中に入っていくシオンに、勇敢な獣人族の若い衆達が取り囲み攻撃を仕掛けた。


「慌てるな!奴は1人だ!取り囲んで一斉に仕掛けるぞ!」


リーダーぽっい獣人の指示で、一斉に襲い掛かった!


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