旅立ちの日です!
さて、婚約破棄騒動から数日達ました。私の家族であるクロスベルジュ公爵家は王城に呼ばれて登城しました。
「良く来てくれた。クロスベルジュ公爵卿よ!先日は我が息子のバカ騒ぎに巻き込んで、本当に申し訳無かった!この通りだ」
おおっ!国王陛下、自らが頭を下げました。それに続いて王妃様も御詫びしてくれました。
「頭を上げて貰えますか。我々はそれほど怒ってはいません。むしろ、正式にシオンがあのバカ王子の婚約者【候補】から外れる事が出来て嬉しく思っております」
こうした正式な場でも、バカ王子というお父様に誰も突っ込まない。それだけの事をしでかしたのだから。
「……そう言って貰えるとありがたい。バカ息子にはほとほと呆れてしまったわ!」
王様にもバカ息子扱いとは、哀れな。
「そこでどうじゃ?第2王子のガイアスなどと婚約は……」
「ははははっ!国王陛下も冗談を言われるのですね?」
王様が言い切る前に、冗談だと言い放ったお父様に私とお母様も笑った。
国王は力無く座り直すと次の話に移った。
「賠償金に付いてだが、領地を譲ろうと思う」
「ほう……領地ですか?」
クロスベルジュ公爵の領地はそれほど広くは無い。何故ならクロスベルジュはミスリル王国の【武】を司る家系であり、内政よりも騎士団を率いて、敵と戦う武力派であるからだ。常に、王城や騎士団の訓練場に詰めて、訓練や魔物討伐をしているのだ。
母親である夫人も、他国のおてんば姫を押し付ける感じでミスリル王国に嫁いできたのだが、お父様とお母様はお互いに一目見た時に、フィーリングが合ったのか一目惚れしてそのまま結婚したそうだ。剣術のお父様と魔術のお母様、二人が揃ったことで10年前に起こったスタンピード(魔物の氾濫)を静めたことで国内外から絶賛されたのよねー!
あっ、私も頑張ったよ?まだ5歳だったけどお父様の隣で拳を振るったり、魔法詠唱中のお母様を守るため拳を振るったり頑張りました。
ああ……楽しかったなー♪
ちなみに、クロスベルジュ領はそんなに豊かでは無かった。でも、現在は私の前世の知識で田畑を開墾し、作物の収穫量を3倍にしたのよ!ビバ!ノーフォーク農法だよ!
あ、私は【前世の記憶持ちの転生者】です!前世では空手有段者でした。まぁ、実家が道場だったしね。なんでこの世界に来たのか覚えていません。まっ、いっか!魔物とか殴れるし!この世界の両親も大好きだからね♪
おっと、話がそれてしまいました。領地が豊かになってきたので、別にこれ以上領地が増えなくても良いと思うのですが?どうでしょう?
「シオン令嬢には男爵の爵位を授け、北にある大樹海を治めて欲しい!」
!?
「なるほど、そう来ましたか」
「ふふふっ、なかなかやりますね~」
そうだ!お父様もお母様も、もっと言ってやって!
ごくりっ……
王様も喉をならしたのがわかります。北の大樹海もミスリル王国の領土なのですから税を払うのは当然なのです。しかし、半ば追い出されたように大樹海に移住した亜人達が税を払う訳もありません。私を使って税の取り立てをしようとしているのでしょう。なかなか悪どいではありませんか。まぁ、他国に行かれるよりはマシと考えているのですね。
王様も無理な事を言っているのを承知の上で言ったのでしょう。脂汗がダラダラでてますよ!
父、母「「その話、了承致しました!」」
私、王様「「はっ!?」」
ホワイッ!?何故ですか?王様も、まさか了承するとは思っても見なくて驚いているよ!?
「シオンも、もう15歳だし経験を積むのも良いかも知れないわね♪」
「心配ではあるが、シオンなら大丈夫だろ?」
のほほーんと言う両親に、脱力感を覚えるこの頃……
「両親がよろしいなら、謹んでお受け致します!」
※捕捉事項:公爵家令嬢がどうして男爵の位を授かるかと言うのは、当主が公爵であって、家族は凖貴族であり正式な貴族とは少し違うのです。シオンは1貴族の当主として男爵の位を頂き、大樹海の領主としての執政官の立場を手に入れたのです。以上
「あ、ああ………よろしくお願い致します?」
ちょっと!どうして王様が疑問系で言うのよ!?
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
1週間経ちました!
「シオン、忘れ物は無いかしら?」
「はい!大丈夫です!」
お母様とハグをして温もりを確かめます。お父様も寂しそうに言った。
「もう旅立つのか………寂しくなるな……」
「お父様が王様の提案を許可したのが原因ですよ?」
うぐっ!?
「今からでも国王を絞めて、無かった事にするか?」
いやいやいや!?それは殺っちゃダメでしょう!
「もう、貴方ったら!シオンも寂しいのを我慢しているのよ?いい加減にしなさい」
「ああ!そうだったな。シオン!身体に気を付けてな!」
「お父様……はい!行ってきます!」
大きなリュックを馬車に入れて、玄関を出ていきます。従者は1人だけ連れていきます。
「シオン!無理しないでね!3年以内に平定すればいいからね?」
「了解です!急がず確実に攻略していきます!」
こうしてシオン・クロスベルジュ公爵令嬢は大樹海へと旅立つのでした。
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