放課後の通学路

月ヶ瀬 杏

黄昏時の通学路

 

 自転車のチェーンの鳴る音がカラカラと響く。


 学校を出てからずっと饒舌だった間宮くんが、別れ道が近付く五分前から急に静かになった。基本的に聞き役なわたしも間宮くんにつられて言葉数が減り、ついには二人して黙りこくってしまう。


 黄昏時の通学路。間宮くんの自転車のチェーンがカラカラと鳴る音が、わたしたちの沈黙の気まずさを助長する。


 いつも顔をあげて明るい表情を浮かべている間宮くん。そんな彼が、いつになく神妙な顔付きで足元にばかり視線を落としている。


 オレンジ色に染まり始めた太陽の光に照らされた間宮くんの横顔は、普段の彼とはまるで別人みたいで。ただでさえ緊張気味だったわたしを、ますます緊張させた。


 今日は中学の卒業式。

 別々の高校への進学が決まっている間宮くんと、こうやって並んで通学路を歩けるのは今日が最後だ。


 間宮くんと「さよなら」する別れ道までは、あと五分。

 

 中学校生活が終わる今日、わたしは間宮くんに三年分の想いを伝えようと決めていた。



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