⚓夢と幻想 月の向こう側

春嵐

夢と幻想

 生きてきたけど。


 ちょっとだけ、つらくなってきた。


 何か、あったわけではない。仕事も普通だし、ごはんも美味しい。よく眠れている。恋人との関係も良好。


 普通の人生。普通の生活。


 でも、それが、ちょっとだけ、つらくなってきた。


 普通は、ほんの少しずつ、自分の心を崩していった。


 わたしは。


 生きてきた。


 もう、充分生きた。そういう感覚にとらわれる。生きたから、もう、しんでもいい。


 だから。


 あの月の向こう側に。わたしを。連れていって。もう大丈夫。つらくてくるしくなる前に。わたしを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る