#16 団長殺しの犯人
「レオンは目が見えない中で、今までパフォーマンスしていたんですか?」
ルイは目を丸くしていた。エリも驚きが顔に出ている。この様子だとレオンの目がほとんど見えていないという事実を知っている団員は少ないようだ。
「えぇ。彼、うちのサーカスの花形でしょ?目が見えないというのがわかったところで演目を削ることはちょっと難しかったの。長年体に染み付いたものと、視力を補う嗅覚と視力でレオンは今まで頑張ってくれたわ。私も工夫しながら彼を導いていたんだけど。」
マリーが愛おしそうにレオンを見つめる。彼との関係はそこまで長くないはずだが、香水のおかげとはいえ、レオンとこれだけ信頼関係を築けたのは彼女の才能でもあるだろう。
「だから、新しいライオンを買う話が出ていたんですね。」
コランは納得した。
「えぇ。これ以上無理をさせるには心苦しかったのよ。」
「え、今なんて?」
エリは聞き直していた。
「ライオンを買うなんて初耳です。しかもなんでそれをコランさんが知っているんですか?」
ルイもエリに続いた。
「モーリスさんが昨夜話してくれたんだ。自分はずっと楽隊が欲しいのに受けて入れてもらえなくて。それなのにマリーのためにライオンが来るって……」
「新しくライオンを買うって話は団長と私しか知らないと思っていたわ。でも確かに彼、団長とはよく揉めていたわ……そこで団長からライオンの話を聞いていたのかも。」
マリーは顎に手を当て、考えるようにして言葉を発した。
「楽隊よりも先にライオンを買うなんて知ったら、モーリスさん、それは許せないんじゃないですか?マリーさんにも多少なりとも恨みは持っているみたいですし。」
ルイはいう。彼はコランとモーリスのやりとりを覚えているようだった。コランは何か、頭の中を整理しているようで、しばらくの間、黙っていたかと思ったら、
「ちょっと確認したいことがある。3人は部屋に戻っていてくれ。」
そう言葉を言い残すと、コランはどこかを目指して走っていってしまった。
コランは奴がいるであろう部屋に向かったが、その部屋の中は空だった。流石に今更逃げると言うことはあり得ないと考え、コランはそこらじゅうを探し回った。テントの方へ行く際、外に出た。あたりはもう日が傾き始めている。応援を呼びにいったトムは一向に来る気配がしない。彼のことだから、上司を説得するのに時間がかかっているのだろう。どれだけ上司に信頼されていないんだ、彼は、とコランはため息をついた。
薄暗いテントのへ入る。本来であれば、17時に本番が始まり、テントの中も、今頃バタバタしているはずだったが、中はとても静かだった。そんなテントの中に人影があった。
「やっと見つけたぞ。」
コランはその人影に声をかけた。随分と背中が大きい。彼は……アクロバットのイワンはその声にびびっているようだった。
「なんだ、コランさんじゃないですか。どうしたんですか、こんなところに来て。」
彼はコランの方を向かずに答えた。
「あんたを探していたんだよ。てっきり部屋にいると思っていたのに。随分探したんだ。」
「僕に……まだ何かようでしたか?」
「とぼけるんじゃない。」
コランはイワンを睨みつけて言った。
「団長を殺したの、お前だろ。」
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