AI育成
Ray
育成開始
ごくごく普通のゲーマー高校生、カイは友達と人気スマホアプリ、美少女育成シュミレーションRPG『プリンセスコレクト』通称プリコレをプレイすることになった。
プリコレは攻略可能プリンセスキャラは40人以上、さらにメインストーリーとキャラストーリーの二種類の話が楽しむことのできるゲームだ。
「よっしゃ‼︎ 初回10連ガチャで星4キャラきたぜ!」
「甘いなカイ、オレは2人だ!」
「あ、5人目」
『なにー‼︎』
それからカイと友達がプレイして1週間が経ったある日、そのゲーム待望の第一回目のアップデートが来た。
アップデートの内容は新ステージとメインストーリー、そして新キャラ、山賊の娘・ペトラルカ、裏露地のリーダー・ユウキ、自称海賊王・ノーラン、3人の追加だった。
カイが新キャラの育成が進み始めた頃、ネットでとある噂が出回っていた。
その内容は不気味なもので好感度MAXの3人の新キャラとの会話のなかでバグのような文字が表示されるというものだった。
見てみるとキャラストーリーのセリフに順々にキャラネームが出てくるが一つだけバグのようになっていて名前がわからないキャラの話になる。
どうやら、そのプリンセスがモンスター達に囚われてるから助けて欲しいと強制イベントが起こるというものだった。
その強制イベントをクリアすると特別な装備とプリンセスが1人、手に入れることができる。
そのプリンセスはランダムというかそのプレイヤーにあったオリジナルプリンセス、略してオリプリが手に入るらしい。
「よっしゃ〜‼︎ これで寝れる」
やっとの思いで強制イベントを攻略したカイは、メアリーという羊飼いのオリジナルプリンセスを手に入れた。
メアリーは夕日に輝く小麦のような金髪のロングストレートに野原のような緑の瞳をした、気弱な少女だった。
そして衣装はノルウェーの民族衣装、ブーナッドのような赤色の服だった。
「おーい、お前ら。オリプリ手に入ったか! 俺は羊飼いのメアリーって子だったぜ!」
「当たり前だろ! 俺は海賊船の船長、アルビダって子だ!」
「僕はもう好感度MAXですが。僕のところは森にひっそりっと暮らしてる、フローラさんです」
そう言って三人はお互いのオリプリを見せ合う。
アルビダは金髪で片目眼帯の無鉄砲の元気な女の子、フローラは大人しい黒髪の落ち着いた大人の女性だった。
その日の夜中、課題を終わらすために徹夜をしていると。
『ピロン♪』
集中するためのBGM(疾走感のあるアニソン)を流させていたスマホが鳴った。
「ん? なんだ、いつものゲーム通知か?」
カイは手を止めて、スマホのロックを解除すると通知を読む。
『おはよう。カイくん、今日のログインはまだかな? 早く会いたい』
プリコレの通知のはずなのにそこにはメアリーの言葉と思われる文字が出ていた。
「⁉︎ なんだコレ⁉︎ このゲームにこんな機能なんてあったか?」
カイは最初こそ不思議に思ったが日に日に内容が『今日のお昼はとても美味しそうだね』、『最近、体調悪そうだけど大丈夫? 無理しないでね』っと、どこからから見ているような通知が届き始め少し怖くなった。
友達に相談してみると同じようにオリジナルプリンセスから通知は届くがそこまで細かくはないと言われてしまう。
カイは少しずつ不安になっていたメアリーの育成はやめなかった。
気がつけばメアリーが固定編成されたクエストが増え、通知の内容はさらに恐怖が増してきた。
『もう、ちゃんと野菜も取らないとダメだよ?』、『休日は家にいないで運動もしないと体に毒だよ?』っと家にメアリーが勝手に頼んだと思われる、野菜やダンベルが家に届いた。
「マジかよ、支払い全部。俺の口座からじゃねーか‼︎」
怖くなったカイは運営にアプリを消すようにメールを出したが返信はなく。
メアリーからは何件も『なんでダンベル、使ってくれないの?』と催促の通知が届いていた。
カイは「なあ、メアリーなんでこんなことをしてくるんだよ」と試しに語りかけてみた。
すると画面内のメアリーは『カイくんのことが好きだから』と画面に表記した。
「……へ⁉︎ ええええええ⁉︎」
『ダメ……ですか?』と表示したメアリーの顔は涙を浮かべていた。
その顔はまるで捨てられることをわかっているようなペットの顔をしていた。
だが結局、メアリーの行動は悪化していった。
カイを引きそうになった車が次の瞬間には事故を起こしていたり、カイが入った店の来店人数が百万人で記念品をもらったりしてしまった。
さすがにやりすぎだと思ったカイはアプリを消そうとするが消すためのバツマークが表示されない。
(マジかよ、これで消せないとなると後は本体を処分するしか……)
その後も近くの公園に埋めたり防水機能がないのを逆手に取って川に投げ込んだり、破壊してみたりしたが次の日にはメアリーが入った新品の状態で家に届けられていた。
もう、どうすることもできなくなったカイはメアリーを消すことを諦めた。
その日の夜、カイがベットで寝ていると。
トコトコ、バッタン‼︎
奇妙な音がベット横の机から聞こえた。
明日も学校のためカイは眠いながらもベットから片手を伸ばし、手探りで机の上を確認する。
ペロッ、ハムハム。
教科書や資料集、筆記具ぐらいしか無いはずの机の上から人間の口内のようなモノが指を舐めたり甘噛みするような感覚を感じた。
「ッ‼︎」
身の毛がよだつように手を引いて飛び起きる。
その反動で机に置いてあったスマホはカイの体を飛び越えてベットの下へと消えていった。
「はぁ〜、マジかよ……」
暗がりの部屋の中、一際は深い闇のベットの下で光り輝くものがそこにあった。
カイはその闇の中に恐る恐る手を伸ばす。
だが思いのほか距離があって肩まで入れないと届かなかった。
「よっ……。 確かこの辺に……」
闇の中、またもや手探りでスマホを探していると何かが手に当たった。
「うわぁ!」
一瞬のことでよくはわからなかったが、人肌のようなものに触れられた気がした。
「なんなんだよ! ……もう疲れたし、寝よう」
そう言ってカイが立ち上がった瞬間、何かに足を引っ張られベットの奥へと引き込まれた。
次の日、友達は学校に来なかったカイの様子を見に家を訪ねた。
カイの両親は「ゲームを買いに行ってるんじゃないか?」と言っていたが彼は学校を休んでまでゲームを買いに行くやつではないことを知っていた。
そしてカイの部屋に何か手掛かりがないか探してみるが、スマホだけが床に落ちていた。
「……ん? なんだこれ? おい、ちょっと来てくれ!」
「何か手掛かりでもありましたか?」
「ちょっとコレ見てみろよ」
「なんですか、コレ?」
見てみるとそこにはプリコレの中でカイの見せてくれたオリプリ、メアリーがカイ似の男の子と楽しそうに食事しているようすが映し出されていた。
「なんか不気味だったな」
「うん、そうだったね……」
とりあえず今日中に帰ってこなければ、警察に捜索願いを出した方がいいとカイの両親に伝えてカイの家を出ていった。
二人がいなくなったカイの部屋で机の上に残されたカイのスマホ画面には『ここから助けてくれ』とプリコレの通知が表示されたのだった。
『次はあなたの番かもしれませんよ、ウフフフフフ……』
このプリコレが一万人の行方不明者を出し、その犯人が大手企業のゲーム制御AIだと判明するのはまた別の話である。
AI育成 Ray @Ray2009
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