第76話 魔法・必殺技解説:その3

◆魔法◆


◇【スパイク


 壁や地面、或いは武具や身体に魔方陣を展開し、その属性に応じた鋭利な棘を発現させる攻撃魔法。


 大抵の魔法は術者によって用途に個性が出るが、この魔法に関して言えば外見上の差は無いに等しい。


 棘を発現させるだけなのだから無理もないだろう。


 とはいえ術者の技量によっては、その棘を本来の用途である攻撃に利用するだけでなく盾や鎧、籠手といった防具に発現させて防御兼反撃の手段とする事も。


 本編中では、フェアトが中々起きない姉を起こす為に小さな雷の針を発現させ、それを刺していた。


 【火棘スパイク】なら触れるもの焼く真紅の棘を発現させ。


 【闇棘スパイク】なら身体に傷つける事なく魔力に紫色の棘を突き刺す事で、その者の魔力に異常を発生させる。



◇【ブロウ


 属性に応じた打撃を付与する攻撃魔法。


 クラリアが得意とする【スラッシュ】とは対極の位置にある魔法だが、この世界に限らず世の中には刃物より鈍器となる物の方が多い為、多少なり用途は限られる。


 ある時は斬撃武器に打撃を付与したり、またある時は打撃武器を更に昇華させる為に行使したりする。


 本編中では、ハキムが斬撃武器である大剣に土属性の打撃を付与して鋼鉄の大槌へと変化させていた。


 【水打ブロウ】なら強力な水圧で押し潰す打撃を付与し。


 【風打ブロウ】なら吹きつける真空の打撃を付与する。



◇【ブラインド


 属性に応じて相手の視界を奪う支援魔法。


 戦闘においては相手の力量差に関係なく一瞬の隙が命取りであり、その一瞬の隙を作る為の魔法である。


 ゆえに支援に長けた風や闇であっても、そこまで持続する事はないのだが魔法に打たれ弱いなら話は別。


 本編中では、リゼットが放った闇属性のこの魔法を受けたスタークが完全に視界を黒く染められていた。


 【氷眩ブラインド】なら視界を白く染めるだけで害のない、イミテーションのような吹雪を発生させ。


 【光眩ブラインド】なら取り扱いを間違えば網膜を焼きかねないほどの閃光を放ち、その光で視界を潰す。



◇【ウェイブ


 属性に応じた波動や波紋を発生させる支援魔法。


 一応、支援魔法に分類されてはいるのだが、その用途は戦闘から日常生活の助けまでと非常に幅広い。


 現に、本編中ではフェアトが濡れた髪や顔を乾かす為に風属性で行使していたが、これも加減をしなければ異常なほど局所的な気流を発生させる事ができる。


 【土波ウェイブ】なら地面を大きく揺らして地震を起こし。


 【雷波ウェイブ】なら電磁波で生物の身体に内在する生体電気を狂わせ、まともな思考すら封じてしまう事も。



◆必殺技◆


◇【溶岩太鼓アグニドラム


 ハキムが得意とする魔法ありきの強力な打撃技。


 自分の身体を【火強ビルド】で強化すると同時に、自慢の大剣を上述した【土打ブロウ】で変化させた鋼の大槌を地面との摩擦によって着火させ、その異常なほどの熱量を持って火山弾の如き一撃を相手にお見舞いする。



◇【因果応報シカエシ


 フェアトが修得した無敵の【盾】の必殺技。


 フェアトの身体に触れた相手の攻撃を同じ部位に同じ威力や効果を持って跳ね返す、唯一の反撃手段。


 一見すると彼女の守備力も相まって文字通りの無敵に思えるかもしれないが、いくつかの穴はある。


 最も大きな穴としては、その攻撃が自分の身体のどの部位に当たるのかをフェアト自身が見切れていなければ意味がなく、跳ね返す事もできないという点。


 とはいえ跳ね返せなかったとしても彼女は負傷する事がない為、ノーリスクハイリターンなのだが。



◇【竜剣一閃ヴルムソード


 剣と化したパイクを用いたスタークの斬撃。


 何らかの支援魔法を使うどころか微量の魔力さえも纏わせていない単なる斬撃だが、それでもクラリアが放つ【光斬スラッシュ】の威力を遥かに上回る超高出力の一閃。


 余談だが、かつての勇者ディーリヒトも同じ名前の必殺技を使っていたものの、これは完全なる偶然。



◇【犬牙咆哮ティンダーズハウル


 トレヴォンが魔族だった頃に得意とした必殺技。


 その途方もないほどの肺活量と声量を活かし、邪魔する者を喪失させたり吹き飛ばしたりする爆音波。


 しかし、それは彼が魔族だった頃の性能であり、トレヴォンが業炎へと転生した今、大音量は当然ながら異常なほどの熱気すらも纏う大熱波となっていた。



◇【迫撃両爪モータークローズ


 機械チックな竜の爪と化したパイクとシルドを両腕に装備したスタークが、いくつかの魔法とともに特攻し、この技の対象を目掛けて爪撃を放つ必殺技。


 派生元となる【迫撃爪モータースクラッチ】も【迫撃拳モーターノック】の派生技だったが、これはそれらの技を更に昇華させたもの。


 本編中では火と雷の二つの【エクスプロード】で加速し、水と光の二つの【スラッシュ】で業炎の犬に転生したトレヴォンを斬り裂いたが、それでも殺しきれていなかった。



◇【犬牙魂喰ティンダーズバイト


 魔王から称号を授かり並び立つ者たちシークエンスの一員となってから、トレヴォンが習得していた憑依の技。


 相手の身体に無理やり侵入し、その魂を内側から喰らう事で消滅させて身体の支配権を完全に奪う。


 【全知全能オール】を除く並び立つ者たちシークエンスの中で唯一、魔王カタストロの力と同じく蘇生不可の効果を持つ。


 この世界で最も優れた光の使い手たる聖女レイティアでさえ、この技を受けた者を蘇らせる事は不可能。



◇【鉄処女折りメイデンハッグ


 相手を思いっきり鯖折りにするスタークの必殺技。


 鯖折りとは本来、両腕で相手の胴回りを抱き込み締めつける事で背骨や肋骨に強い圧をかける体術。


 しかし、それをスタークの膂力を持って行使すると圧迫どころか上半身と下半身を真っ二つにするほどの凶悪な──文字通りの『必殺技』となってしまう。

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