新、作家さんと編集くん

渋谷かな

第1話 グダグダ

「燃え尽きた。」

 作家さんが灰色をしている。

「久しぶりのジャパロボ10万字を書き終えたんですから、疲れるのは普通ですね。」

 編集くんは作家さんの労力を理解してくれている。

「短編賞狙いで、短いのを書き。いつの間に溜まりに溜まった10万字。」

 正に物語を書くのに命を削って書く作家。

「昔、書いた同作品を読み返して比べれば成長もしてる。」

 実際に現在販売されてる小説も分からんのが多いが、昔の自分の作品も同じくらい物語が分からん。

「もっと細かく。もっと分かりやすく。誰にでも分かりやすく。」

 もっと細かく細かくせねば。

(作家って、大変なお仕事なんだな。)

 編集くんは作家さんの苦労と努力を目で見ているので実感している。

「さあ! 次の新作を考えましょう!」

 書き終えると自分の作品を無性に忘れたいと思うのは私だけだろうか?

「もう次の新作ですか!? もう少し休まれた方がいいんじゃないですか!?」

 作家さんの健康を心配する編集くん。

「低速でいいから、何か新しいことを考えないとね。ファンが待っているから。(いないけど。)それが仕事だから。」

 最近はこった作品も無く分かりやすさか、最初のインパクトだけで作品が売れる時代で、一般大衆は表舞台にある作品から視聴する作品を選ばなければいけないのだから。

「がんばれ! 作家さん!」

 もうジャパロボで投稿ミサイルは腐るほどあるので、このまま新作の構成を書こう。


「以前に書いたように47都道府県×1話2000字として約9万4000字。物語の始まり2000字と終わり2000字、その後2000字で10万字完成!」

「さすがです! 先生!」

 合いの手を入れる編集くん。

「これを剣と魔法にするか、アイドルにするか、何にしよう?」

「両方なんかどうですか? 全部乗せです。」

「そのアイデア、いただき。」

 ちょっとせこい作家さん。

「次の課題が、1話2000字で何ができる? という疑問点である。」

「後、主人公の全体を通した目的、目標ですね。」

「あ、忘れてた。アハッ!」

 意外とうっかりさんな作家さん。

「「俺は海賊王になる!」からの「私はアイドル王になる!」かな?」

「アイドル王!? でも剣と魔法を足すと、物語のアイドルの定義が変わってしまいますね。」

「歌って、剣と魔法が使える。それがアイドルだ! ワッハッハー!」

 このノリで新しいモノが完成されていくのが恐ろしい作家さんの才能である。

「でも、アイドル王って、全国行脚をしないとアイドル王になれないんでしょうか?」

「ご当地のアイドルを倒して天下を統一するというのはどうでしょう?」

「それなら、相手を倒すか、相手とお友達になるか、の方が盛り上がりそう。」

「共通の敵で悪の秘密結社ショッカーを作りますか?」

「それいいね。いただき。」

 ちゃっかり者の作家さん。

「となると、47都道府県よりも始まりの2000字が大切だね。」

「47都道府県はスマホゲームのガチャのおまけです。アハッ!」

 なんとなく概要ができた。


「それでは試作品を書いていこう。」

「題材は沖縄ですね。」

 昔「制覇!」という作品で書いたような。ああ~高校野球モノも書いたような。刀と高校野球とジャンルが違うだけで結局、中身は同じか。アハッ!

「まあ、ジャパロボも書き終えたし、ゆっくり考えようっと。ちゅかれた。」

「おやすみなさい。」

 zzz。


「まず敵役として、ショッカーの改造人間として、ゆるキャラを調べる。」

 不可。敵役として向いていない。あと知名度など小粒過ぎて悪役には向かない。

「真面目に創作しないといけないのか。はあ・・・・・・疲れる。」

「まあまあ、がんばりましょう。」

 なだめる編集くん。

「沖縄怪人。だけではダメなのか?」

「難しいですね。イカ怪人イカデビルとか、蜘蛛男。」

「沖縄怪人と蜘蛛男は同義語。違うのは蜘蛛男にはショッカーの怪人という前置きの言葉がある。」

「ということは、悪の組織や始まりの2000字を考えるのが先か。」

 ほとんど何にも決まっていないのが現実である。


「沖縄剣?」

 なんか思い出した。

「タイトルは、都道府剣47?」

 アイドルと剣と魔法の融合。

「主人公が旅に出る動機が必要だ。」

 海賊王になる? おじいちゃんの形見のボールを探す? 世界の平和? 姫が魔王にさらわれた? 妹が鬼になったので助ける?」

 強制的な旅立ちである。


「1話2000字で歌を歌うシーンは無理。1話で最初? いや、1話の最後に歌を一行だけ歌って終わるか? 10万字書き終えた時に1曲の歌になる。作詩は1曲だけ。」

「先生、素晴らしいアイデアです!」

「文字は文字。小説は小説。何か発想の転換で新しいモノを生み出さないとね。」


「タイトルは、都道府剣47。」

 決まったのはギャグタイトルだけ。

「主人公は少女。」

 これも決まった。

「年齢は定番の16歳。職業は女子高生。」

 決定。

「少女の夢は・・・・・・日本一のアイドル? 世界一の剣士? 騎士? 侍? 魔法使い?」

 夢と夢のぶつかり合い?


「悪役は? お友達? 敵?」

 2人3人がくっついている。分解しなくっちゃ。

「1話2000字で無駄を省きまくって、全部収める?」

 無理じゃねえ? 

「書いてみないと分からない。」

 諦めたら、そこで終わりですよっと。


「主人公は日本らしい方が良い。日本剣? 日本刀?」

 日本らしさが世界で受ける。

「でも今は侍モノは毀滅と被るからな~。」

 熊った。侍はやめて、忍者にするか?

「侍が忍法を使えればいいのか?」

「さすが先生! 素晴らしい!」

「もっと褒めて!」

「即断即決!」

「アハッ!」

 もう本編を書いて手直しするしかないのか?


「魔王が甦ったですって!?」

 かつて世界を滅ぼしかけた魔王が復活した。

「何とかして魔王を倒さなくっちゃ!」

 少女はかつて魔王を倒した勇者の末裔である。

 没。


「アイドルになるためには仲間をたくさん作らなくっちゃ!」

 少女の夢はアイドルになることだった。

「47都道府県を渡り歩いてお友達を見つけよう!」

 そのために日本各地を巡り一緒にアイドルをやってくれる仲間を探す旅に出る!

 こっちの方が新鮮。


「もっともっときっかけがいるな。普通に女子高生としてアイドルになることを目指していた。そこに魔王が甦り弟の体を乗っ取る。弟の体から魔王を追い出すためには47都道府剣を集める必要があった。」

 もっと始まりが必要だ。

「一石二鳥! アイドル仲間を探すのと47都道府剣を集める旅に少女は出る。」

 ペキカン。

「一石二鳥! 一石三鳥! を主人公の口癖にしようかな?」

 徐々にできてくる世界感。

「そういえば、まだ主人公の名前を決めていなかったような。」

 真面目に考えよう。


「少女は弟と渋谷に買い物に来ていた。」

 魔王は要らないな。敷居が高くなる。やめよう。

「弟が駅前のハチ公像と記念写真を撮った。弟は意識を失って倒れてしまう。近くの神社にお参りに行くと。ハチ公の呪いと教えられる。弟を助けるためには都道府剣が47本いると言われる。少女は弟を助けるために旅に出る。」

 できた! アハッ!


「名前も法則だ! 悩むな! さっさと決めよう!」

 弟の名前が蓮。姉の名前が杏。名字は鈴木でいいっか。


「良くない。」

 真面目に考えよう。

「親しみ易さ? とある売れっ子漫画家が言っていた。「名前は覚えてもらえないから、良く危機馴染みのある普通の名前が良い。」と。」

 ということは誰でも知っている様な名前。

「東京都出身者の名前、芸能人、有名人、地名、なんやかんや。」

 名前を決めるだけで大変だ。鬼門。

「赤野火? 焔? 炎?」

 からの。

「蒼井藍」

「七色虹」

 かな?

「それとも東京都は武蔵の国だから北条か?」

 名字は昔の地名にしよう。

「主人公の名字、北条に決定!」


「名前を調べるが決まらない。」

 代わりに氏神なる近所の神社の神が登場。

「主人公を北条氏康から、北条氏子?」

 可哀そう。

「弟の名前を氏家。」

「北条康子。これにしよう。」

 兄弟で家康。北条氏康なのに、徳川家康ができた。

「我が家は北条家ではなく、徳川家の末裔なんじゃない?」

 ああ~できた! キャラクターの名前の法則。


「決戦の舞台は、お城?」

 江戸城? 小田原城? 渋谷城?

「観光地で決戦? ステージ?」

 

 戦うアイドル? 


 これは良いキャッチフレーズ。

「渋谷スクランブルスクエア、スクランブル交差点とか。」

 舞台設定には困らない。

「北条康子。16才。高校1年生。実家は神社。渋谷神社で巫女のアルバイト。」

 ダメだ。疲れで思考回路がショートしてる。

 zzz。

 次はなんだ? 康子の家族構成か?


  北条康子・・・16才、高校1年生、巫女見習い。

  北条氏家・・・6才、小学校1年生。

  渋谷神社


 頭を2000字で旅に出てもらわないと困る。

 とりあえず書いてみよう。

「あ~。」

 そう考えると作家さんと編集くんは使い勝手が良いな。


「できた! 2000字で第1話!」

 無難にまとめた。

「もう、これ以上は動かさんぞ! 絶対に! 欲しがりません! 勝つまでは! 勝ち意思だ!」

 書き直すのが面倒臭いだけなのだ。


 次、第2話を考えよう。

 その前に。

「1話2000字の制約は厳しいな。」

 ほとんどの要らない所が要らない。

「まず、康子が沖縄県にやって来る。」

「どこにあるんだろう? 沖縄剣。って、ダジャレかよ。」

 首里城、美ら海水族館、宮古島など観光スポットを回、ゴーヤチャンプルーやサーターアンダギーを食べる康子。

「これじゃあ、ただの沖縄旅行じゃない!?」

 剣を持つ少女と出会わない・・・・・・。

「安室結衣」「新垣奈美恵」

 沖縄県を支配していた戦国武将が中国人みたいな尚さん。地味なので沖縄出身の芸能人で調べる。

「安室結衣にしよう。」

 ニュータイプみたいだ。コナンでも使用しているし、良いのだろう。

「売れっ子漫画家が言った。」

 名前は覚えてもらえないので、誰かが聞いたことがあるような普通の名前がいいと。それに準ずる。

「沖縄県。花はデイゴ。木はリュウキュウマツ。鳥はノグチゲラ。魚はグルクン。蝶がオオゴマダラ。」

 ちなみに東京都は花はソメイヨシノ。木はイチョウ。鳥はユリカモメ。

「秘剣! ユリカモメ!」

 これに救われる。康子が剣を振ればソメイヨシノの桜がきれいに咲く。


「アムロレイに、いや、安室結衣にエピソードがない。」

 ゲストキャラクターのエピソード。これはいったい2000字の内、何字を使うというのだ!?

「首里城が燃やされた。再建中。」

 結衣は悲しい。でも、負けない。

「はっ!?」

 二人の共通点は・・・・・・宮益坂47! の熱狂的なファンだった!

「まさか!? こんな所で予想外にアイドルが結びつくとは!?」

 はっ!? 次の問題が。

「いいよね! 宮益坂47! 康子は誰推しなの?」

「推し!?」

 推しとは、グループの中で1番好きで自分が推しているメンバーのことをいう。

「ゲゲゲッ!? 宮益坂47のメンバー47人分の名前を決めなければいけないじゃないか!?」

 先に進まないから気づかなかったことにしよう。 


「私たちは悪の秘密結社! 宮益坂47!」 

 恐ろしいアイドルの売り方。

「マジか!?」

 確かに敵役は必要だが、これでいいのか!?

「歌の力で世界を征服するアイドル! それが宮益坂47だ!」

 展開的には悪趣味だが面白い。

「なんでこんな展開になるんだ!?」

 正道ではない。

「私たちは悪の秘密結社! 歌の力で世界を征服するアイドル! 宮益坂47!

 2つのキャッチフレーズを1つに合わせると完璧。

「こっちの物語の方が都道府剣47より面白そうなんだが・・・・・・。」

 作品タイトルを今すぐ変えようか?


「青春の都道府剣47!」

「悪の秘密結社! 宮益坂47!」

 20万字書くか? 表版? 裏版?

「こんな事が思いつくなんて!? なんて恐ろしいんだ!?」

 アイデアの神降臨し過ぎ。

「ていうか、沖縄はどこにいった!?」

 忘れてます。


「徳川家子。」

 宮益坂47の不動の4番でセンター。それは野球だろう。ビシッ!

「どうして私だけ?」

「生きていても楽しくない?」

「死にたい。」

 地味で人生が終わっている家子。それでも徳川家の末裔。

「末裔ばっかりにしよう。」


「秘剣! ユリカモメ!」

「忍法! イチョウ!」

「咲き誇れ! ソメイヨシノ!」

 康子の剣術・忍術。

「デイゴ!」

「リュウキュウマツ!」

「ノグチゲラ!」

「タカサゴ!」

「オオゴマダラ!」

 結衣の剣術・忍術。

「サーターアンダギー!」

「ゴーヤチャンプルー!」

「那覇!」

 尚ともえの剣術・忍術。沖縄県の時は、沖縄怪人


「おまえの願いを叶えてやろう!」

 悪の秘密結社の首領モヤイ像。

「憎いハチ公! 呪ってやる!」

 全てモヤイの人気のハチ公像に対する逆恨みから始まる。


「う~ん。1話2000字って、かなり無理があるかも?」

 もう書いていって手直しした方が良いレベルかな。

「それよりも問題は、宮益坂47だ。」

 こっちの第一話を創作して書いてしまおうか? 書けなくはない。ただ作業量が10万字から20万字になるだけ。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 悪の秘密結社の名前が変だ!

「悪の秘密結社ジョッカー。悪くはないが・・・・・・違和感が。」

 聞き覚えもあり検索もされやすいんだろうけど。覚えてももらいやすい。

「イベント用はできた。」

 掴みはOK。

「宮益坂47を英語に直す。」

 パレス、スロープ、47・・・・・・。

「はっ!?」

 アイデアの神が降臨される。

「AKB! 秋葉原! なら宮益坂は・・・・・・MYA! 悪の秘密結社MYA47にしよう。」

 悪の秘密結社問題は解決か?


「悪の秘密結社MYA47は、悪の秘密結社のままでいいのか?」

 夢を奪う者。

「私たちは悪の秘密結社! 歌の力で世界を征服するアイドル! 宮益坂47! 

 結局は文字の並びのきれいさか。

「私は悪の秘密結社MYA47! あなたの夢を奪う者! 沖縄少女だ!」

 これ完成形?

「夢を奪う者? 悪の使途? 悪のアイドルのメンバー?」


「第2話! 書き終えました! ドンドン! ピュウピュウ! パフパフ!」

 後はこれの繰り返し! アハッ! 

「・・・・・・ちゅかれた。」

 それでも、まだ弱気な作家さん。

「どこかで康子が秘剣! ユリカモメ! を使えるようになるために修行をしなくっちゃ。」

 まさかの主人公、必殺技使用無しで終わってしまった。

「それに裏、宮益坂47版の1話も考えなければ。」

 やること多いな。


「ダメだ!? 第2話をコピー貼り付けで第3話を作成しようとすると、飽きた! 面倒臭い! 続かない!」

 ということで、ここで終了。

「後、ここも5000字を超え、下までカーソル移動するのが面倒臭い。」

 適切な字数は2000字から3000字ぐらいか。

 終わる。

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新、作家さんと編集くん 渋谷かな @yahoogle

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