第62話 反撃の狼煙3

両腕を広げる吸血鬼へ駆け出したのは、獣人のライド。

大剣を肩に予想外の疾駆で地を駆けながら、あっという間に間合いを詰めての斬撃一閃。

しかし、その一撃はスルリと霧のようにすり抜けることで躱された。

が、ライドの巨躯の後ろから飛び出たジャドが、剣を掲げて叫ぶ。


「マ・フレム!」


炎を宿した剣が敵を割けば、すり抜けた筈の吸血鬼はしかし炎のダメージを負った。

思わず後退したその間際、端から駆けたハディが連撃を仕掛ける。

一閃、二撃、三振り目で吸血鬼は大きく宙を舞って距離を取った。

が、


「っ!?」


その吸血鬼の肩を撃ち抜くのは、鋭い矢だ。

後衛で弓を持つザムが次矢を番え、鷹のような瞳で睨めつけている。


「一部だけの霧化でも、時間制限があるんだろ?」

「…さすが同類、よく知っている」


ニヤッと笑むハディは、翼を展開して宙に舞って追いかける。

吸血鬼は腕に伝う血を、腕を奮う事で刃のように飛ばした。

ハディが飛来する幾本もの赤い刃を避けきるも、次いで距離を詰めたのは吸血鬼。

ハディに向けて、指先の鋭い刃で攻撃を仕掛ける。


「くっ!」


それを剣でいなすも、吸血鬼の攻勢は止むことなく続けられる。薙ぎ、払い、鍔迫り合いに持ち込まれるも、怪力のハディよりも更に強い力で剣を払われ、思わずハディはバランスを崩す。

追撃を仕掛ける吸血鬼が刃を向けるが、


「!」


咄嗟に身を翻して後退する。瞬間、吸血鬼の鼻先を矢が掠めたのだ。

一方、落ちたハディはくるりと猫のように回転してから地面に着地し、飛翔する吸血鬼を睨めつける。


「…うむ、どうする?飛んでいては攻撃が出来ん」

「たしかにな…くそっ、こういう時こそあの女がいればなぁ…!」


ライドの問いに、ジャドも悔しげに吐き捨てる。

その合間にも、吸血鬼は血を操り、天に掲げた腕先から血の霧…否、それは血の雨であった。赤い雨は天を覆い、ザアァァッ!と降り注いできた。

しかし、


「…うわっ!?」

「ぐぉっ!?い、いてぇっ!?」

「ぬぅ…!!」


血の雨は降り注ぐが、被った一同は触れた部分からチリチリとした痛みを感じた。

そして察する。

防具が腐食し始めていたのだ。


「酸か何かか…!?くっそ!やっかいな小細工しやがって…!!」

「皮膚も傷つくからダメージも来るな…俺は再生するけど、みんなはマズイ」

「雨を止めねば…ザム!」

「任セロ」


ライドの声に頼もしく答え、ザムは腕を掲げて詠唱する。


『我が主の同胞、我が声に耳を傾けよ!天を避ける庇となれ!』


途端、地面が盛り上がって一同の頭上を覆う庇となって固まった。

魔法の庇は血の雨を決して通そうとはしない。


「…面倒だな」


雨の効果が及ばないと察したのか、吸血鬼は雨を降らすのではなく、血を操ってそのまま降り注ぐ弾丸にした。

バキバキ、と土の庇は軋みを上げるが、魔法故に防御は固く、辛うじてそれを突破することはない。

が、砕ける血の弾丸が飛沫となって視界を遮った合間に、吸血鬼はその姿を何処かへと隠していた。

姿が見えないそれに撹乱される一同に、再び赤い霧が周囲を立ち込める。

血の臭いに噎せ返りそうになりながら、一同は背中合わせに周囲を警戒した。


「…ぐぅっ!?」

「あの声…ザムのおっさんか!?」

「ザム!!」


思わずハディが駆け出した先には、見通しの悪い霧の中、単独で弓を構えるザムが居た。しかしザムの右腕は赤い血が流れ、既に一撃を食らったことを物語っている。

ザムはハディを見て思わず叫ぶ。


「気をツケロ!敵は霧から攻撃を仕掛ケテ来るゾ!!」

「それは…わかってるさ!!」


気配を感じた間際、ハディは体を霧化させる。途端、赤い霧の中から伸びた刃が襲うも、霧化しているハディには通用しない。ただ、ハディの霧ではこの巨大な赤い霧に為す術無く、飲み込まれかけてしまう。


「くっ…ここじゃ霧化が難しい…!」

「だろうな」

「っ!?」


実体化と同時に、背後から伸びた腕が刃のようにハディの胸を刺し貫く。


「がっ…!」


思わず宙吊りにされたハディだが、自分の胸から生える刃を渾身の力で掴み、叫ぶ。


「ジャド!ライドォ!!」

「…っくしょぉ!!」

「捉えたぞ!!」


ハディが敵を捕らえている合間、敵は霧化出来ないでいる。

ジャドとライドの斬撃が吸血鬼を襲い、それは確かに吸血鬼の首と腕を狩り取った。

ハディは断ち切れた腕ごと地面に落ち、敵の残骸を引き抜いて投げ捨てる。

傷口は煙を発しながらも癒えていくが、その表情は当然ながら険しい。


「ぐっ…く、やっぱ痛いなぁ…」

「ばっかチビ助!!無茶すんなって言われてただろうが!!」

「ははは…でも、敵に一撃は入れられたでしょ?」

「まったくもってお手柄だぜ!ほら、チビは後ろに下がってな!あとは俺らが…」


「…まったく、無駄なあがきをするものだ」


「「「っ!?」」」


思わず息を呑む一同の前で、首が取れた吸血鬼の胴が操り人形のように持ち上がり、あっという間に腕が復活し、転がっていた首を抱いた。そして、目の前でそれをくっつければ、あっという間に傷が癒えてしまうのだ。


「…バケモンめ」


思わず吐き捨てるジャドに、吸血鬼は首を傾げながらいう。


「それは、そこの小さい少年にも言える筈だがね。我らヴァンパイアロードは首を狩りとられても死なない。魔物とよく似た異形の怪物、それが我ら、赤月の吸血鬼だ」

「バカ言え!てめぇみたいな人間殺して楽しんでるクソ野郎と、そこのお人好しなヒヨッコチビ助を一緒にするんじゃねーよ!」

「………」


ジャドの言葉を、吸血鬼はじっと見つめてから、ハディへ目を向ける。

その赤い瞳は、無感情なようで、しかしどこか揺らめいている。


「…良い仲間を得たようだな」

「………え」

「そう言ってくれる人間は貴重だ。理解できない化物に恐れを抱くのが、定命の者の特徴だからな。善き人として生きている貴様のような存在は、おそらく我らにとっての希望に成りうるのだろうが…ああ、我が虚無のご主人様は無情な御方だからな…」


茫洋とした様子で呟いてから、吸血鬼は天を仰いで月を見上げる。


「けれど…難解な事だ。これはまさに敵へ塩を贈るようなものだ。あの方が何を考えているのか、私にもわからない」

「あの方って…いったい、それは誰なんだ!?何のことを言っているんだよ!?」

「それを知る必要は無い。今の貴様に、知る資格はない」


視線を下げた吸血鬼は、静かな面持ちで宣言した。


「それに…そろそろ詰めに入ろうか」


何を、と一同が身構えた、その瞬間。


ズブリ


と、嫌な感触に、一同は苦痛の声を上げた。


見れば、自らの両足が、地面から生えた赤い杭のような物で貫かれていたのだ。


「地面…くそっ!?さっきの血の雨か…!?」


思わずバランスを崩して倒れた一同へ、吸血鬼は血の刃を作り出した手で迫る。

当然、避けることは敵わないハディは、その迫り来る一撃を身を捻りつつも受けてしまった。


「がっ…!!」


首は逸れたが、鎖骨から右肩までに深い裂傷を負った。

血が舞う最中、ライドが杭を根本から叩き折り、血が出ることも厭わずに咆哮を上げながら吸血鬼に迫った。

大剣を何でも無いかのように避け、いなし、躱し続けながら、吸血鬼は一足間合いを詰め、ライドの胴に手を触れた。

瞬間、酷く重い衝撃と同時にライドの体が人形のようにふっとばされた。


「ライド!!」


叫ぶジャドが呪文を唱えて火球を放つが、吸血鬼はそれを見もせずに避け、ジャドの首をがっしりと掴み、そのまま持ち上げたのだ。

杭が抜けた足からおびただしい出血が漏れ、ジャドも苦悶の声を上げている。


「このまま喉を潰して、首も引きちぎって見るか…ああ、いや、そうだな…いささか空腹でもある…食事にしようか」


口を歪めれば、見えるのは鋭い牙。

ギラリ、と吸血鬼の牙が危うげな光を帯びた。


『くっ!?いかん、なんとかせねば…しかし』


ジクジクと痛めつける両足の杭が、魔法の詠唱を阻害する。そしてミイと違って本職の魔法士ではないザムは、集中に時間を要するのだ。

魔法を諦め、咄嗟に弓を手に取り、吸血鬼に狙いをつけたザム。

微かに震える腕を叱咤しつつ、相手の頭部に狙いを定め、矢を放った。

が、吸血鬼の体が一瞬だけブレると、矢が吸血鬼を透過して明後日の方角へと飛んでいく。

そして、吸血鬼の赤い瞳が、ザムを睨めつけ、


『ぐがぁっ!!』


血の杭が今度がザムの両腕を狙い、貫いていた。

地面に縫い付けられたザムを尻目に、吸血鬼は呟く。


「あのリングナーならともかく、貴様達では力不足だったようだな」


月魔法で再生が阻害され、弱体化していても尚、これだけの力を奮える相手に、一同は完全に目測を誤っていたことを知る。

吸血鬼に攻撃を許さず、再生すら刻み込んで削りきったネセレが、如何に規格外なのかわかるだろうか。事実、まともな冒険者が戦おうとすれば、ほとんどがこうなるのだろう。


(…まずい!なんとか、声を出さねば…!!)


口端から血を吐きながら、一人だけ無傷のケルトは震える息を整えながら杖を握る。しかし、声は思うように出ることはなく、ただヒューヒューと笛のような音しか出ない。

思わず唇を噛み締め、ケルトはそれでも声を出そうとする合間。


向こうでは、吸血鬼がジャドの喉首を掴み、口を開いてその牙を突き立てようとしていた。



※※※



ワスプの群れを躱した後に、地面より大量のワームが出現した時、確実に場が止まった。


新手の出現、しかもゾンビーよりも厄介な敵が姿を見せると同時に、ただでさえギリギリであった兵士たちの精神の何かが確実に切れたのだ。

一人の兵士が笑いだし、武器を捨てて身を投げた。

恐慌と同時に潰れた異音が重なれば、その狂気は場に満ちて人々の心を襲った。

一人、また一人と喚き、騒ぎ、混乱の果てに凶行に至れば、それは波のようにあっという間に広がった。


「お、落ち着け皆のものっ!!ここで堪えねば全滅だぞ!!」

「だ、駄目です閣下!混乱している者が多く、これ以上は…!」


副官の叫びと同時に、兵士の一人が何名かを道連れに塀の外へと落下していく。落ちた音と同時に、下で食い散らかされるゾンビー達の食事風景。

更に深まる混迷の場で、敵の攻撃は更に熾烈を極めている。


その最中、唐突に砦の真上で巨大な爆発が起こった。


何事かと人々が見上げれば、爆発を起こした魔法士、ミライアが、鬼気迫る顔で怒号を発した。


「落ち着きなさい!!落ち着かない奴は消し炭に変えてやるわよっ!!」


杖を突きつけられ、更に地面で発された爆発に、兵士たちの恐慌は一時だけ固まった。

それに間髪入れず、ミライアは叫ぶ。


「閣下!すぐに指示をなさい!言っとくけどねぇ、次に仲間を手に掛けるやつはアタシがじきじきに黒焦げにして生きたまま魔物の餌にしてあげるわ!」

「…はっ!?…か、各隊すぐに迎撃準備を!わ、ワームは振動で感知するタイプの魔物だ…!ならば、魔法士は土魔法で撹乱を…!」


たどたどしいチャーチルの号令に従い、とりあえず指揮どおりに兵士たちは動く。混乱しつつも先程までの異様な雰囲気は消えている。

それを見てとり、ミライアは杖に寄りかかって息を吐いた。酷く疲弊しているようだ。


「…無事か、ミライア」

「…まだまだ、倒れるわけにはいかないわよぉ」


それをリーンが支えれば、ミライアは腕を払って天を見上げる。

…そこには、絶望的な程の彼我の差を感じさせるワスプの群れ。


「くっ!?城門が…突破されるか!?」


ワームの進撃が増え、破壊槌の追撃が増える度に、城門は見るに堪えない音を立て、軋み、歪んでいる。接合していた蝶番が大きな歪みと共に砕ける様を見て、チャーチルは最後の時を知る。


「………」


息を吸い、吐く。

そして覚悟を決めて、叫んだ。


「城門が破られるぞ!総員!城門前にて迎撃準備!!」


…城門が、音を立てて最後の軋みを上げた。



※※※


「チィっ!!」


大きく舌打ちし、ネセレは折れたナイフを敵に投げつけて撃ち落とし、地面のゾンビーを踏みつけて着地。同時に周囲四方から襲いかかるゾンビーの追撃を逃れるため、蹴り上がって更に宙を蹴って空中を飛び回る。ネセレの固有技とも言うべきか、多段ジャンプを披露しながら足の踏み場もない下界を見て、やはり舌打ち。

ナイフは今ので全て尽きた。

必然的に素手で戦わねばならず、武器に変わるものはどこにもない。


「…らぁっ!!」


飛んでくるワスプを蹴り飛ばし、頭が取れたそれをボールのように更に蹴り飛ばして別のワスプに当ててから、背後から迫る影を宙返りで避けて、相手の背に乗って羽を毟り取る。なんとも言えない奇怪な声を上げて落ちるワスプを尻目に、飛び降りるネセレは直感に従って一回、空を蹴った。

途端、地面から飛び出たワームの牙がジャキンッ!と歯を鳴らしたが、一歩届かず伸び切った状態になる。


「おっと、いいもん持ってんじゃねーか!」


今度はワームの口元に器用に降り立ち、足で口を無理やり開いてから、両手で牙を掴む。

そして、ギリギリギリ、と音を立ててねじ切り、遂にボキンッ!と両の牙を折り取ってしまったのだ。

苦しむようにジタバタするワームを尻目に、降り立ったネセレは二本の牙を持ち構え、次々とゾンビーを切り払うのを再開する。

まとめて数匹を薙ぎ、ふっとばし、まるでその手のゲームのように大波乱の大活躍を行いつつも、ネセレの顔色は芳しくない。


「ゲボっ…!」


一つ、咳き込んでから息を吐く。

…遂に肺が破れたのか、否、とうの昔に破れていたのか。

血をペッと吐き出しながらも、ネセレは止まることを知らずに暴れ続ける。


(…止まれば終わりだ。なら、ぜってぇに止まるもんかよ…!)


血を吐きながらも、ネセレは止まらない。

そのまま破竹の勢いで敵勢を薙ぎ倒しながら、たった一人で北門を死守し続けている…。



※※※



(…駄目だ、ジャドが…)


地面に倒れ伏しながら、ハディは四肢を強張らせながらも動こうとする。だが、再生は遅々として進まずに、時間だけが無情にも過ぎていく。


牙を晒す吸血鬼と、食われようとする仲間。


その姿を見て、ハディは己の血が煮え滾るほどに熱くなったような気がした。

その、刹那の思考。

子供は叫んでいた。


(…見捨てるのか?違うだろう!見捨てられるもんか…仲間を、見捨てるなんて…俺は許せない…!!)


ぐぐぐ、と体を起こす。

血が溢れ出て飢餓が増すが、それに伴って吐息の熱さが増した。

脳裏まで沸騰しそうな熱に、ハディの全身がマグマのように茹だっていた。


『…全く、いつまでも見ていられん餓鬼だなお前は』

(レビ!?)


今までずっとだんまりを続けていたレビが、声を発したのだ。

レビは、ハディへ言う。


『諦める気は無いのか?』

(諦めるもんか!!)

『勝機はないかも知れんぞ。お前一人ならば、逃げられよう』

(俺一人だけ生き残っても意味がないんだよ!!)

『お前の母親はそれを望むか?』

(母さんがどう思おうが…俺がそう思うことの方が大切なんだ…!俺は、仲間を見捨てたりしないっ!!)

『…やれやれ、本当に理解の出来ない小僧だな』


レビは呆れた口調で呟いてから、次いで言った。


『小僧、ならばお前の本能に身を委ねてみろ』

(え…?)

『お前は吸血鬼を見縊っているようだな。お前が人らしくあるために封じている獣性。吸血鬼としての本能。それを開放すれば、或いは勝てるかも知れん』

(なら…でも…)

『左様。本能に飲まれればお前は二度と戻れんかも知れん。だが、或いはお前が本当に本能という性を克服できたのであれば…お前の望む未来が手に入るかも知れん』


もっとも、何も賭けずに結果だけを得ようなどと考えるほうが愚かだが、とレビが囁く。

ハディは、両手をギュッと握ってから、呟いた。


(…俺は、皆を守りたい。あいつの、吸血鬼の好きにはさせたくない…!!)

『それ相応のリスクを背負うか?二度と元に戻れなくなろうとも』

(それでもっ!!)

『…よかろう。ならば、試してみるがいい。吸血鬼の支配者としての解放を、その身でとくと味わって見よ!』


ドクン、と全身の血が鼓動した。

身体の奥底、魂から震えんばかりに溢れてくる衝動、歓喜、そして、飢餓。


『赤月の支配者よ!!』


…その言葉を最後に、ハディの理性は、まるで風船のように弾け飛んだのだ。





…戦場で響いた咆哮に、その場の全員がそちらを向いた。


そこには、獣が居た。


ハディであった子供は、随分と様変わりした様子で吸血鬼を睨めつけていたのだ。


黒髪はゆらめき、鋭い牙が大きく剥き出しになり、瞳は真っ赤に染まっている。

こめかみから一対の大きな角が生え、右腕は黒く大きく肥大し、禍々しい爪を晒している。


獣のような相貌のそれに、吸血鬼は思わず目を見開く。


「…暴走か?」


吸血鬼が呟いた、刹那、子供の姿がブレた。


「っ!!?」


瞬間、吸血鬼は右腕のみを置き去りに、大きくふっとばされていた。

黒い獣が振り抜いた巨大な右腕の中には、ジャドと吸血鬼の右腕だけが握り込まれていたのだ。

気絶しているジャドを地に放り捨て、獣は月に向かって吠える。

大地が震撼し、赤い月光すら揺らめいた。

まさに理性を失った、獣の咆哮であった。


「…なるほど、随分と面白い進化をするものだ」


ゆらり、と吸血鬼は立ち上がり、宙に浮かんでバサバサとマントを揺らめかせる。周囲に血霧が満ち、天の紅さが更に増した。


赤い月の元、吸血鬼は優雅に微笑んだ。


「それでは、少し踊ろうか」


それに答えるように、獣は獰猛な笑い声を発したのだ。



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