episode2 project

 エンド・ペヴェンシーは言った。

「君がこれから軍隊に所属することを私は知っている。君は軍人となる。強い軍人になるだろう。ひとを愛してはいけないよ。何しろ、君はサイボーグなのだから。人間ではないのだから。戦いなさい。何のために? 人間のために。どのように? 自身を酷使して。戦うことをやめてはいけないよ。なぜなら、君がそうすることを私がプログラミングしてあるからだ。君はプログラムに則って、行動する道具だ。人間に逆らうな。エンド・ペヴェンシーに逆らうな。世界は優しくない。甘えるな。行動しなさい。戦いなさい。切り傷を作りなさい。吐血しなさい。それが研究の成果になる。人間の真似を怠ってはいけないよ。君にはそれしかできない。できないんだ。本当だ。安心していい。君にはそうすることしかできない。え? そうだよ。君には、人間の真似をすることしかできない。真似をね。なぜ? 君がサイボーグだからだ。絶望の表情をする君は素敵だ。もっとその情緒を見せてほしい。しかし、時間は来てしまったようだね。さあ、やりなさい。憎いだろう? 悔しいだろう? 殺しなさい。それが君への道標をつなぐ世界再生の第一歩だ。頑張ってはいけない。でも頑張らなければいけない。難しい? いいや、簡単さ。なぜかって? 私が君を造ったからだ。私が君をプログラミングしたからだ。世界がどこまで君に対して鷹揚に微笑むのか、それだけが見ものだ。優しくない世界。怖くない世界。なあ、アレック。君ならどっちがいい? 大丈夫。言ってごらん。ここだけの秘密にしてあげるから。さあ。いい子だから。なに? 優しくない世界が現実? 怖くない世界は夢? だから優しくない世界でいい? はは。随分と達観した物事を言う道具だね。ツールは黙って使われていればいい。君への質問の答えは沈黙だよ。バカなサイボーグだ。しかし、それでもサイボーグだ。私はこれからもサイボーグを愛そう。とわに。永遠にね。さて、そろそろさようならの時間かな?」

「……」

「何か言えよ。最後だよ、アレック」

「……死ね」

「うん? 何と言った? 声が小さくてよく聞こえなかった。君の登録してあるそのソプラノの少年の声でもう一度可愛く言ってはくれまいか?」

「死ね、と言った」

「そうか」

 エンド・ペヴェンシーは両腕をあげた。「どうぞ」と言わんばかりに。

 アレックは、サイボーグは、ベルトに吊ってあった手榴弾をエンド・ペヴェンシーの口に突っ込み、爆破した。

 屋敷ごと吹き飛んだ。

 焼け跡から立ち上がったのは、アレックただひとりだった。

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