思い出を噛む
神崎 ひなた
迸
その日は少し、特別でした。
普段はいくら飲んでも酒に
とはいえ、何が特別だったのか――それすらも
これはいかん、と思って目を
やがて私が、かび臭い洋式トイレに顔をうずめるまでには、時間というものは途方もなく引き伸ばされているようでした。しかし、本当に長いのはここからでした。私はこみ上げる灼熱が絶えるまで、迸るがままに勢いを任せ続けなければいけませんでした。
前後不覚。
己の吐しゃ物と、そして便器と向き合う哀れな老人こそが、私でした。
もしかするとこのまま死ぬんじゃないかという想いが、暗闇の中で廻り出します。馬鹿げているとは思いながらも、ひたすら不快感が襲ってきて止まないものですから、ちょっとは現実味がありました。
あぁ、人はこういう風に死ぬのかもしれない、なんて馬鹿なことを思いました。
――普段なら、ここまで酒に
――今日に限って、どうしてこんなに飲みすぎてしまったのか。
――もう、それすらもよく思い出せません。
私はなんでもいいから
――忌々しい。
こういうことだけは、よく覚えている。
恐ろしいですね、お酒の力は。
そんな言葉を呑み込む代わりに、また胃の
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