ちいさな神さま

@sasamochiyoshiji

1.嵐の前のさざ波

 わたしたち人間と、似ているけれど少し違う「八百万の神さま」たちが暮らす、この世界。

 世界の東の果てに位置する、小さな島国。

 その国のある島に、ある夜、その国では見慣れない様式の船が、何隻か停泊しました。

 岸に停まった船から、夜闇にまぎれて何人かの人影たちが降り立ちます。

 彼らは辺りをうかがいながら、岩部のお社(やしろ)を通り過ぎつつ、島の内部へと進み出ました。

 手に鉈や弓を携え、小声で何事かささやき合いながら移動していたその時。

「誰か、そこにいるのか?」

 声がかかりました。

 浜辺の見回りに来ていた島の村人が、二人。船から降り立った者たちに、話しかけます。

「あんたら、何してるんだ?こんな夜更けに明かりも持たずに」

「待て、こいつらなにか変…」

 ヒュン…と音が響き、一人の喉元を矢が貫きました。

「う、うわああああ!」

 恐怖に駆られたもう一人の村人が、護身用の短刀を掲げます。同時に村人の手から炎が湧き出て、手にした短刀を包み込みました。

 襲い掛かってくる集団に対し、村人は火に包まれた短刀で必死に応戦しますが、多勢に無勢で追い詰められてしまいました。

「お、お前ら、一体…?」

 返答の代わりに、男性の頭上に大鉈が振りかぶられました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る