きっかけ
勝利だギューちゃん
第1話
最寄駅から、学校までの道に、おもちゃ屋さんがある。
老舗のおもちゃ屋さん。
おもちゃというより、模型店と言った方が、適切。
店内は、所狭しと陳列されている。
ウィンドウには、ロボットのおもちゃが飾ってある。
デザインは、古い。
おそらくは、父が子供の頃のアニメロボットだろう。
値段は・・・
2万円か・・
『少年の心を持った大人たちへ』
あおりには、そう書かれている。
上手いこと言ったもんだ。
確かに、女子高校生には厳しい。
でも、なんだろう・・・
初めてのはずなのに、どこか懐かしい。
買おうかな・・・
一応、お財布と相談する。
「買っていい?」
「だめ」
断られた。
あきらめよう。
私は、学校へと向かう。
帰り道。
再びその模型店を通る。
「あれ?あのおもちゃ、無くなってるね」
「うん。ずっとあったのに・・・ようやく、嫁入りできたのかな」
同級生の友達と、そんな話をする。
そうね。
女子高生の私より、あのロボットアニメで育った人に買われた方が、
あの子?も幸せね。
でも、お小遣いが消えなくてよかった。
女の子には、おもちゃよりもおしゃれに使うべきね。
納得して、私は帰宅した。
そして、食卓の上に、あのロボットアニメが置いてあった。
間違いない。
あの独特のフォルム。
間違えるはずがない。
まさか・・・お父さん?
ゴルフしか趣味のないお父さん?
まさかね・・・
「私よ」
振り返る。
「私が、買ったの。」
「お母さんが?」
「そうよ。悪い?」
意外だった。
お母さんに、そんな趣味があったなんて・・・
「このロボットアニメの、パイロットが、お母さん好きでね」
「うん」
「今でいう、腐女子かな・・・とにかく、燃えていたわ」
お母さん・・・
「でも、よくお父さんが、許してくれたね」
「当然よ。お父さんもファンだったもん」
「お父さんも?」
「お父さんは、ロボットそのものが好きだったけどね」
お母さんは、ロボットを見つめる。
「お父さんとお母さんが結婚できたのは、このロボットのおかげなの・・・」
夕飯時、お父さんとお母さんに、その馴れ初め話を聞かされた。
きっかけ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます