電子音
[31,536,000]
「ピッ。」
電子音が鳴った。
[31,535,999]
◇
「ピッ。」
電子音が鳴った。
友達と遊んでいる時だった。
小さな音だったけれども、私だけには大きく聴こえた。
その音を聞いただけで、さっきまでの楽しさが一気に消えた。
「ピッ。」
電子音が鳴った。
テスト勉強をしている時だった。
短い音だったけれども、私の中には長く鳴り響いた。
その音を聞いただけで、さっきまでのやる気が一気に消えた。
「ピッ。」
電子音が鳴った。
家族で
小さな震動だったけれども、私には殴られたような衝撃が走った。
その音を聞いただけで、さっきまでの賑やかさが一気に鎮まった。
「ピッ。」
「ピッ。」
「ピッ。」
[15,768,000]
毎回同じ時間に、同じように電子音が鳴る。
1週間の周期で、同じように電子音が鳴る。
その小さな音が私を
ポケットの中のタイマーは、余命1年を宣告された時から、ずっと時を刻み続けている。
私が呼吸を止めようと心臓は止まらないように、このタイマーを止めたところで時間は止まらない。
「ピッ。」
今週も来週も再来週もその次の週も、忘れずに鳴り続ける。
それがいつしか日常に溶け込むように。
しかし、
そうしているうちに
[00,025,200]
「ピッ。」
その音を最後に、電子音は鳴らなくなった。
◇
[00,000,000]
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