プロローグ


巻き起こる戦火を、俺は忘れたことは無い。

理不尽に積み重なる暴力。

無限に積み重なる死体。


苦難を強いられ。

守ることを強いられ。

殺すことを強いられ。

そして犠牲になることを、俺たちは強いられた。


死にかけた、当たり前のように俺は大地を這いずった。

戦火の際に、恐らくは剥がれた・・・いくつもの竜の鱗。

本来人間だったはずの俺は、それを喰らった。

何が起きるか分からないまま、ガムシャラに。


・・・生涯、これを超す体の痛みは無い。

内側から喰われてしまうような感覚、叫び、泣き、吐いた。

終わらない苦痛に、やがて慣れた。

・・・俺は、不老の存在になった。



いつしか戦争は終わった。

この光景を見て、俺は一つ大きな目的を掲げた。

この苦難から、解き放てる世界を創ろう。








500年、成果はほとんど無かった。

魔法に研鑽を積み重ねた。

奇跡というモノがあったが、それは既に俺には不可能だった。

ならばもう、魔法でのアプローチでしか結果は出せない。

それならば、その魔法を無力にする者たちでさえ抑えるものとは何か、課題になった。



そんな時、俺は運命に出逢った。




彼女は、人魚だった。

時折、変な言語が出るが、それ以外は他の誰とも変わらない、と思った。

いつから俺は惹かれたのだろう。

毎日俺は、彼女と話していた。


彼女は美しかった。

彼女は儚かった。

彼女は・・・残酷なほどに、優しかった。


俺たちはいつしか惹かれあい、遂には子も出来た。

それから数年、いつものように幸せな日々を過ごしていたある日、別離が訪れた。


海の向こうの国から来た輩によって、俺たちがいた国に多数の犠牲者が出てしまった。

明らかな侵略行為に、一時はなすすべも無く、俺は無力ながら抵抗しやがて終わった。


犠牲者は生きていても、長く持たない、そんなのばかりだった。






歌が、聞こえた。

そして全ての傷が、なくなった。

最後に、歌が終わったその時に。


・・・最愛の人は、泡となった。








子が独り立ち、俺は姿を消した。

そして、とある地にて研鑽を幾度も積み重ねた。

あの日、彼女に誓った言葉を果たすために。

三千世界の光輝を見せる為に。

彼女の犠牲を無駄にしない為に。

あらゆる過程に意味があったことを、証明する為に。


俺が人でなくなって2000年。

彼女の死から、1500年。

見えているか?

俺は、頑張ってるよ。

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