mc2020.12.6 クウコと事の顛末
結論から書く。
昨日出会ったキツネの少女、クウコの正体は神様だった。
いや、語弊がある書き方だな。訂正する。
正確にいえば、彼女は人間界の極東『ジパング』の国において、神社と呼ばれる神を祀る聖域にて、大昔から人間界に身を置いてきた魔族だった。
遥か昔のこと、まだ魔界という存在が認識されていない頃にまで話は遡る。
魔界から人間界に降り立った彼女の祖先は、人間とは異なる容姿と魔法を用いることで『神の遣い』と崇められ、現在に続くまで人々の信仰の対象となっているらしい。だからクウコは巫女衣装に身を包んでいたんだな。
つーか、人間界でも昔から魔族が居たなんて知らなかった。
人間と魔界の戦争後にも、クウコたちを『魔族』と知りながら神として信仰していたとかで、ジパング……神秘の国だぜ。
……って、話が脱線したので本題に戻す。
何故、クウコが一人で魔界に向かっていたのか。
どうやら彼女の母親が病に倒れ、その治療のため魔界に運ばれたらしく、クウコはそれを追いかけて来たというのが事の顛末だった。
クウコは自分のお小遣いで船や馬車を乗り継ぎ魔界に向かったものの、お金も無くなり、自らの足で魔界への道を進んだが、ついに力尽きて俺の店で倒れたとか。
全てを知ったのは、クウコとダークリングの到着後。
クウコが魔界の大治療院である『中央治療院』を探し始め、そこで入院していた母親と再会後、理由を打ち明けてくれた。
ちなみにクウコが魔界へ行く理由を隠していた理由は、神様の遣いでありながら行き倒れになってしまった恥じたこと、一人で母親を探しに来たことがバレたらジパングに戻されてしまうと思ったかららしい。
最初から事情を話してくれれば、もっとスムーズに事が運んだんだけど……子供だし仕方ないか。
あと、個人的な話だけどさ。
クウコのお母さんめっちゃ美人。
いやホントに。
なんだろ、絶世の美女ってああいう方を言うんだろうな。
もっふもふの大きな尻尾も魅力的だったけど、透き通るような肌と声、優しさに満ち足りた雰囲気、正直に書くけど、母性にあふれていた……みたいな。
クウコの母親だけあるわ、ほんと。
なんだか見てるだけで照れちゃうんだよ。
母親は「何かお礼をさせてください」と言ってたけど、その場に居ることも余裕が無くって、二人に別れを告げて治療院から飛び出してきちゃった。
慌ただしく帰ってきちゃったけど、もう十七時過ぎ……今日も店は休みにするしかねえや。
店休続きだけど、クウコが幸せそうな顔をしてたからそれでヨシ。
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