妹は抱き地蔵(セックスの体位)の体勢じゃないと寝れない体質で一緒に寝ている内に好きになったらしい

しゆの

妹と一緒に寝る

「眠い……」


 眠気を抑えながら、椎堂優介しどうゆうすけは自室のベッドの上でスマホを弄りながら欠伸をした。

 二十三時を過ぎて明日も学校があるから今すぐにでも寝たいが、未だに寝れないのには理由がある。


 トントン、とドアをノックする音が聞こえたので「どうぞ」と言うと、ネグリジェ姿の女性が頬を赤くして部屋に入ってきた。

 普段は下ろしている長い髪を二つのお団子状にしており、明らかにこれから寝る格好だ。

 この部屋にシングルサイズのベッドが一つしかないため、二人して一緒に寝ることになる。

 高校生の男女が一緒に寝るのであれば恋人同士が普通だが、優介たちは付き合っているわけではない。


「兄さん……」


 ゆっくりとこちらに近づいてくる彼女──椎堂氷天しどうひそらは優介の妹なのだから。

 両親の再婚によって兄妹になったため、容姿や性格など全然違う。

 優介はどこにでもいるようか髪は黒で瞳は茶色だが、氷天の髪のサラサラして限りなく白に近い銀色、瞳は美しい藍色だ。

 もちろん他にも違いがあり、優介の肌は少し黄色っぽい誰が見ても日本人と分かる容姿、氷天は北欧人みたいに異国情緒溢れる雪のような白い肌をしている。

 氷天の容姿は母親からの遺伝で、色素が薄いのを受け継いだかだ髪や肌が白いのだろう。

 義理の兄妹である優介たちは同じ高校の一年生で、あることが理由でシスコンとブラコンとカップルが混ざったシスブラップルと周りから言われている。

 実際は付き合っているわけではないため、言われる筋合いはないのだが。


「早く寝たいからとっとと済ませよう」

「うん……」


 ベッドを軽くポンポン、と叩くと、氷天は頷いて優介の横に座る。

 お風呂上がりだからかシャンプーの香りが漂ってきて、本当に同じトイレタリーを使っているのか不思議なほどだ。

 いや、氷天はシャンプーやリンス、ボディソープの他にもスキンケア商品を使っているだろうし、血の繋がりもないから自分とは別の匂いがするのは当たり前だろう。


「うう……恥ずかしいです」


 耳まで真っ赤にした氷天は、自分の頭をゆっくりと優介の肩に乗せる。


「もう慣れろよ」


 寝る前にイチャイチャするのはいつものことだが、氷天にとっては未だに恥ずかしいらしい。

 彼女の体が熱くなっているのはお風呂上がりだからだけではないだろう。


「高校一年生になっても兄妹でこうしないといけないから恥ずかしいんです」


 小学生低学年くらいの兄妹が一緒に寝ることは良くあるだろうが、氷天は優介とイチャイチャしないと寝ることが出来ない体質だ。

 兄妹になったばかりの小学三年生の頃、優介は両親が寝室で裸で抱き合っているシーンを目撃してしまった。

 しかも母親が普段は出さないような甘い声を出しており、何となく声をかけずらかったのを覚えている。

 小学三年生の男の子に両親が何をやっているかわかるわけもなかったが、何故か少し興味を持ってしまって妹である氷天に同じことをやってみたいと言ってしまった。

 流石に裸ですることはなく、服を着たまま抱き合ったりしてしまったのだ。

 その時に感じる温もりが氷天には良かったようで、寝る前にイチャイチャしないと彼女は眠れなくなったらしい。

 小学生の時ならともかく、今も一緒にいないと寝れないというのが恥ずかしいのだろう。

 いくら小学生の時で性に関して無知だったとはいえ、思春期になった今では凄く後悔している。


「おかげでシスブラップルと言われるけどな」

「あれは不覚でした」


 シスブラップルと言われるようになったのは、小学六年生の時に氷天が兄妹で一緒に寝るのを友達に言ってしまったからだ。

 聞いた友達の中にシスコン、ブラコンという言葉を知っている人がいたようで、次の日からシスブラップル、と言われるようになってしまった。

 優介たちは実家から高校に通っているため、同じ高校に通っている小学生からの友達もいる。

 その友達は単に茶化しているだけだろうが、氷天が美少女過ぎてあっという間に学校中に広まった。

 だから優介は学校の男子から毎日一緒に寝やがって、と嫉妬の視線を向けられる。


「てか早くいつものようにしてくれない?」

「あれが一番恥ずかしいんですよ」


 氷天は普通にイチャイチャするだけでは眠れなく、ある体制でないといけない。


「いきなりは恥ずかしいから、こうして軽くくっついてからするんです」

「もう七年くらい毎日してるのにな」


 小学生の時は無知のために大丈夫だったようだが、シスブラップルと言われるようになってから氷天は急に恥ずかしがり始めた。

 兄妹揃って寝るのを恥ずかしがるのは仕方ないかもしれない。


「こんなんじゃ氷天に彼氏出来ないな」

「出来なくていいです。こんな体質知られたくないですし」


 あくまで一緒に寝ることだけを言ったので、学校の人たちは氷天がイチャイチャしないと眠ることが出来ないのを知らない。

 シスブラップルと言われる氷天であるが、美少女であるために告白されるようだ。

 高校に入学して二ヶ月ほどしかたっていないが、氷天は既に二十回ほど告白されているらしい。

 その全てを断っており、今は誰とも付き合うつもりはないようだ。

 もしもシスブラップルと言われていなかったら、今の倍は告白されていたかもしれない。

 高校一年生ながら学校一の美少女、と言われているのだから。


「ほら、さっさとするよ」

「うう~……わかりましたよ」


 恥ずかしくも頷いた氷天は、ゆっくりと動いて優介の太ももの上に座る。

 向かい合って座っているから氷天の足はがに股に開いているせいで、白くて綺麗な太ももがネグリジェの裾から姿を現す。


「恥ずかしいならせめてズボンにすればいいのに」

「私は昔からネグリジェが好きなんです」


 ネグリジェのゆったりとした感じが好きらしく、氷天の寝間着は全部ワンピースタイプだ。


「キス出来そうだな」


 普段は身長差があるが、今の氷天は太ももに乗っているから目線の高さが同じ。


「な、何言っているんですか。兄さんのバカ」

「一緒に寝ていると漏らした本人が何を言うか」


 図星らしく、氷天は頬を膨らますだけで何も言わない。


「もっとくっつかないと眠れないんだろ。早く」

「はい」


 氷天は腕と足を優介の背中に回し、彼女との密着度がさらに増す。

 彼女は優介の背中に腕と足を回してギューって抱き締めないと眠れない体質だ。

 小学生の時に見た時に両親がこのような体制だったため、初めて氷天と濃厚に触れ合ったのが抱き地蔵の真似だった。

 抱き地蔵は四十八手の一つであるが、実際には真似のために兄妹で行為をしているわけではない。


「ほら、おやすみ」


 耳元で囁いてあげると、氷天は頷いて瞼を閉じた。

 すぐに寝息が聞こえてきたので、もう氷天は夢の中に入っていったのだろう。

 抱き地蔵の体勢になればすぐ寝てしまうため、しばらくこのままでいて、もう起きないと判断したら氷天をベッドに横にさせる。

 これがいつものルーティーンで、優介は氷天を寝かさないと自分も寝ることが出来ない。


「さて、俺も寝るか」


 欠伸をしながら優介は氷天をベッドに寝かせて自分も横になった。

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