第7話 感情との出会いは宝物

 演劇の経験はありませんが、私は映画やドラマやお芝居を観るのが、大好きです。


 物語全てに、興味がありますので。


 映画やお芝居の新作をチェックすると、時間や懐事情と相談をしながら、自分へのご褒美のひとつとして、劇場や映画館へ足を運びます。


 行く前はワクワクしちゃいますね!


 ストーリーや舞台(世界)作りはもちろんのこと、俳優陣の演技力には目を見張るような魅力がありますから。


 なにせプロですからねー。


 魅せるお芝居をしてくれた時には、感嘆のため息を漏らしてしまいます。


「はぁ……。この俳優さんの演技ってすっごく深い! 思わず心の何かが激しく共鳴!! あれ。これってもしかして涙? あれ。私って今、泣いちゃってる?! 」


 みたいになっちゃいます。

 年を取ると、涙もろい(笑)。


 逆に。


 テレビドラマなどを観ていて、時々思う事ありませんか?


「この俳優Aさん、演技が超・ドヘタクソなんじゃないかなぁ? 」


 と。


 ……テメェは辛口評論家か!


 と、自分にツッコミを入れそうになりますが(笑)。


 分析するに、これには二つの理由が考えられます。


・俳優Aさん(あるいは作品そのもの)が『伝えようとしている事』に対する、私自身の理解力不足。


・俳優Aさんが演じている『役の人物が持つ感情』に対する、Aさんの理解力および想像力不足。


 今の私の考えも、時間と共にガラッと変わるかも知れませんが。


 自分が知らない『感情』というものは、ただの想像だけでは到底、補えるものではないような気がします。


 だからこそ、驚愕するような演技を見せてくれる俳優さん(あるいは声優さんなど)に対するリスペクトが、強くなるのかも知れません。


 例を挙げると、『死別』。


 祖父をはじめ何人かの親戚との死別は経験しましたが、今の段階で私は、それ以外の自分の肉親および親しくさせてもらっている人との別れ(死別)を、経験したことがありません。


 遭遇した瞬間、自分は一体どうなってしまうのでしょう?


 大好きな人が、たくさんいます。


 考えただけで、大変恐ろしいです。


 それを実体験として経験した事があっても無くても、役者さんは『その感情を抱いた役』を、演じなくてはなりませんよね。


 想像するしかありません。


 極端な例を挙げると、『殺人』。


 経験した人、……いませんよね?

(いたら怖いです。自首してね?)


 殺人を経験した事が無い俳優さんが想像するのは、『誰かに殺意を抱いた時の、自分の感情』という事になるのでしょうか。


 だとすると、その『誰かに殺意を抱いた時の、自分の感情』ときちんと向き合い、その感情を心の奥から呼び覚ます事が出来ないと、いい演技が出来ないという事になります。


 これって実は、小説家などの『物語を生む人』にとっても、同じ事が言えると思うんですよね。


 たくさんの魅力あふれる人々を、『キャラクター表』にして作り上げることは簡単です。


 コンピューターにだって、そのくらいの事は出来ちゃいます。


 私がテンプレとして作った、『キャラクターシート』は↓ こんな感じです。


『 』


※主人公の○○


性別:

年齢:

人種・種類: 人

容姿:

血液型:(地球人に例えると 型)

職業:

身長・体重: センチ  キロ


好きな食べ物:

嫌いな食べ物:

好きなタイプ:

家族構成:

話し方:

我慢強さ:

みんなの中での立ち位置:


性格の特徴:※苦労人かどうかなど※

好き嫌い:

興味・関心:

長所:

短所:

体調など:

その職業についたいきさつなど:


 これをしっかりと作り上げて、じ~っと見つめるうちに……だんだん、このキャラクターが動いたり喋ったりしてくれるのは無いか?!


 って、思った時もありました。


 ところがどっこい、意外とそうでも無いみたいなんですよねー(私が小説を書く場合)。


 自分の中に『落とし込めていないキャラクター』(※あるいは感情[性格])は、一切動こうとしてくれないんです。


 想像だけでは、どうにもならないものらしいんです。


 経験が不足していた若かりし折、「『悪役』が上手く書けないし、出来るならあまり書きたく無いなぁ」と思っていた事があります。


 そういう人物の『感情』を、自分自身の内側から掘り起こして想像し、露わにするのが怖かったからです。


 けれど今は違います。


 色んな人と出会い、色んな経験を通して、気づかされた事があります。


 どんな『感情』との出会いも、自分にとっての大切な宝物だったんです。


 恐ろしい感情を抱いてしまった自分も、大切な自分の一部なのだと認めました。


 そういう自分ときちんと向き合い、全てを受け入れた事により、やっと表現できるようになってきました(まだまだ未熟ですが)。


 もちろん、自分が抱く殺意や傲慢、自己顕示欲、他人に対する蔑みなどの感情を、許すつもりはありません。


 だからこそ、そんな自分の『感情』全てと、向き合う姿勢がとても必要だと思うんです。


 彼らと折り合いをつける事が出来るようになれば、どうにか自分が作る物語に登場したキャラクター達が、その感情を持ちながら生き生きと動いたり、演じたりしてくれるのでは無いでしょうか。


 うまいこと言おうとすれば……

 そう、アレですね。


 俳優さん達にメガホンを振る、監督みたいな気分ですよ。


「はい、カーット!! ちょっとちょっとー!!! そこの君、何なのその演技はぁー!! 棒読みじゃないの!! ちゃんとしてよもぅーー!! 」


 みたいな感じ。


「ああん!!? ……何様だテメェはぁ!! 」


 と返された場合は?


「あ、いえ、その、私、監督なんですけどもっ! 」


 と答えるしかありませんね(笑)。


 色々な私自身の、感情さん達へ。


 出会えた事に、心から感謝。


 まだ出会えていない、感情さん達。


 いつでも私は、待ってるよ。


 ちゃんと受け入れるから。


 どうか私と、仲よくしてね。



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