第6話 作曲は鼻歌から

「じふちゃん、お母さんアレ聴きたい! あの曲歌ってよ! 」


 私は母に、歌をリクエストされることが時々ありました。


 生まれて初めて私が作った、記念すべき曲です。


 これは母のお気に入りだったみたいで、今でも時々思い出して笑いながら「歌ってー!」と言われます。


 お調子者の私は、頼まれると嬉しかったので、いつもノリノリで歌いました。


 せーの!


「チリカミハンカチなふだーおし〇こハミガキー!」


 ちゃらっちゃっ!(←転調!)


「チリカミハンカチなふだー〇しっこハミガキー!」


 ちゃらっちゃっ!(←転調!)


「チリカミハンカチなふだーおしっ〇ハミガキー!」


 ちゃらっちゃっ!(←転調!)


 ……エンドレス。


 何の歌なんだ??


 って感じですよね(笑)。


 小学校の学級会で決められていた『忘れ物をしないこと!』という項目に、メロディーを合わせたものだったんですねぇ。


 おそらく……


 ・ちり紙

 ・ハンカチ

 ・名札(洋服の胸元に安全ピンで留め、家からつけて登校していました)

 

 ↑ を忘れちゃ駄目だよ。


 と、学級会で言われていたから、これを作ったのではないかと。


 でも、朝はトイレと歯磨きも忘れてしまいそうになるので、自らそれら2項目も追加した模様。


 あんま経緯は、覚えていないんですけどね。機嫌のいい時の鼻歌が発端だったと思います。


 頭の中に時々ブワーッとメロディが浮かぶことが良くあり、たまにエレクトーンを弾きながら、作曲をすることがありました。


 大体いつもこんな風に、ふざけてやっていただけでしたが(笑)。


 詩を作るのも好きだったので、結構ノッている時などは、それが作詞作曲になったこともあります。


 今思うと、ちゃんと楽譜に書き残しておけばよかったのになぁ、と思いますね。


 大人になると不思議な事に、その天才的な(?!)能力がすっかり、影を潜めてしまったので。


 当時は『エレクトーン』がブームで、教室に通っている子はピアノのそれと同じくらい、私の周りにたくさんいたんです。


 兄が先にエレクトーン教室に通っており、それに続くように私は、5歳から15歳まで、習いに行っておりました。


 本当はピアノに強い憧れを抱いていたので、「ピアノを習わせて欲しい」と私は、しきりに親にねだりました。


 ですが、さすがに高価で大きな楽器を家に二つも置けないし買えないからと、親からバッサリ断られちゃいました。


 ま、それもそうですよね。

 親になると、親の事情がよくわかります(笑)。


 でも今となってはエレクトーンを習わせてもらった事に、すごく感謝しているんです。


 私にエレクトーンを教えて下さったのは背筋がぴんと伸びた、素敵な老齢の女先生でした。


 エレクトーンって通常は、右手でメロディ、左手で伴奏、左足か両足でベース部分を演奏するんです。


 高度な曲を弾く場合は、そのポジションを変える時もありますが。


 右足はペダルに乗せておいて、曲の音量に強弱をつけるために動かします。


 私はその、右足で音の強弱をつけるのがすごく下手でした。


 音量が高くなりすぎて、曲がキンキンと耳に、響きすぎてしまうんです。


 先生は、練習不足だった私に若干呆れ顔を見せながらも優しく、辛抱強く教えてくださいました。


 左手の伴奏(曲のコード)部分が、私はエレクトーン最大の武器だと思うんですよね。


 ピアノが『一人オーケストラ』なら、エレクトーンは『一人バンド演奏』だなぁ、とコードを眺めていて思うのです。


 習っている曲を練習をしたり『エレクトーン検定』を受けるうちに、作曲をするために必要な『コード進行の基礎』などを、自然と学ぶ事ができました。


 自分が作った物語のテーマ曲や挿入歌、各シーンに当てはめるメロディなども、遊びながら作った事があります。


 先生はエレクトーンだけではなく、ピアノも教えていらっしゃいました。


 広々とした先生の家(スタジオ)の中や外の庭には、色んな種類の9匹の猫が自由に伸び伸びと、飼われていたんですよ。


 一番気難しいクロブチ猫の『モンちゃん』が、他の子のレッスンが終わるのを待っていた私の膝の上に自ら乗ってくれた時は、すごく嬉しかったですね。


 先生は同じ学年くらいの(エレクトーンかピアノを習っていた)メンバーを集めて『みんなでサンドイッチを作ろう!』的なお茶会ガーデンパーティーを開いてくれて、生徒同士の交流をさせて下さいました。


 その中の5人くらいをチームにまとめ、発表会で『エンターティナー』という曲の、アンサンブル演奏をさせてくれたりもしましたっけ。


 先生、お元気でしょうか。

 すごく懐かしいです。


 仲間の中でずば抜けてピアノが上手な同学年の男の子がいて、確か小学5年生くらいでショパンの中でも難易度の高い曲を、彼はいとも簡単そうに弾いていました。


 練習熱心な彼の、ピアノに向かう真摯な姿勢は、今でも瞼の奥に焼き付いています。


 彼のショパンを聴いた私はモーレツに感動し、中学に入ってからはショパンの名曲を聴きまくりましたねー。


 私がエレクトーンで習ったのは、ボサノバやジャズのスタンダード曲が多かったです。


 弾いているうちにどんどん愛着がわき、それらはしっかりと自分の中に、根を下ろしました。


 私、よく同じCDをヘビロテして聴くんですよ。


 続く時は何年でも(笑)。


 今から10年前くらいに、大好きだったボサノバの2枚組CD(カフェでよく流れているような感じのもの)を、ずーっと家の中の環境音楽みたいな感じで、流し続けていたんですよねー。


 最近になって家族の一人に、その事について文句を言われました。


「あのボサノバのメロディ、どんな曲を聴いて上書きしようとしても、ずーっと頭にこびりついて離れないんだけど!! どうしてくれんのさ!! 」


 という感じです。


 私のヘビロテ、結構マジで迷惑かけちゃったみたいです。


 私は大変申し訳なく思い、神妙な面持ちで謝罪しました。


「あ、ごめんごめ~ん!! 」


 ……みたいな感じで。


 私にとって音楽は、かけがえのない存在だったりします。


 創作を再開したのは最近なので、またムクムクと頭の中にメロディが沸き上がってきそうな気がして、実はワクワクしています!!


 音楽よ、本当にありがとう!!







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