第11話「B」互いの成長

【爆発まで残り10分】

 ある程度装置の設置が終わり残りは最後の一つとなった。

 最後の爆弾を設置しようとエマは最後の設置場所へ向かうがそこに一人の見知った男が立ちふさがっていた。

(シルエット?何でここに。)

 そう思いながらバイクを光速状態にしながら突っ込もうとした瞬間、危機感を感じ私はブレーキを踏んだ。

 すると、私が到着する筈だった場所から大きな爆発が起こった。

 衝撃に耐える為バイクのタイヤにスパイクを、生成して地面に突き刺す。


 しかし、爆発の威力が凄まじかった為、

 バイクはスパイクで地面に大きな傷をつけながら、数m後退した。

 シルエットが私の安否を確認すると静かに語り出す。

「やはり、メンターの言った通りだった。

 君が私の邪魔をしに来ると彼が言っていたからね。」

「どうかね?私の"新しい作品"の威力は?」

「新しい作品?」

「そうだ。今までの様なちんけな威力の爆弾ではない....私はメンターの教えに従い私の作品は進化したのだ!」

 そう言うとシルエットは、手に持った何かを私に向かってばら蒔いた。

 その大きさがBB弾サイズの物だったが危険性を感じバイクを変形させる。

 かつて高崎との模擬戦で使った防御形態を強化した新たな技「重戦車形態デクサメーニ」を発動し防御体制に入った。



「連鎖爆発...ですか。」

「そうだよシルエット君。」

 メンターが私にアイデアをくれた。

「君の爆発を見せてもらって分かったんだがね、君の爆弾にはまだ成長する余地があると思うんだよ。」

「そして、私の指示通り行動してくれるのなら...新たな力を君に与えることだって出来る。」

 メンターは私に笑顔でそう伝えた。

 彼の計画は私が作り上げた複数の爆弾を連続で爆破させ続けることで破壊エネルギーを増大させる連鎖爆発を意図的に起こせる様になってもらうと言うものだった。

 私はメンターの教えに従い、自分の能力を鍛え上げた。


 私の爆弾は過去にネットから集めた知識で作り上げたもので大きさもどんなに頑張っても辞書サイズまで小さくするので精一杯だった。

 しかし、彼の教えと能力強化をしていただいた結果、私の作品爆弾は新たな形へと昇華した。

(超小型高性能爆弾「ボムシード」大きさは1cmにも満たないながらその威力は....一粒で昔作っていたC4と同程度の威力を有している....いくらあの電気を帯びたバイク乗りが私の攻撃を防御したところでこの攻撃には耐えられまい。)

 強烈な爆発が連続で起き続け爆発が止んでからシルエットはバイク乗りの死体を確認する。

 しかし、その瞬間何かがシルエットの顔を掠めた。

 驚いた彼は攻撃を受けた場所を確認する....

 すると、そこにはバイクを降りて彼女が謎の武器をもって彼と対峙していた。



「自分専用の武器ですか?」

 鹿波は高崎からの意見に質問をする。

「そ、君専用の武器がそろそろ必要なんじゃないかなぁと思うんだよね。」

 高崎さんからのアドバイスに対し私は光栄に思いながらも反論をした。

「けど、私にはバイクがあるし...それに」

「光速状態になれば誰も近づけないってか?」

「確かにその考えは間違ってねー...けどそれがお前自身の弱点になっちまってるんだよエマ。」

「弱点?」

「あぁ、エマは攻撃に移る際バイクを帯電状態に移行するために一種のタメの時間が必要だ普通の相手ならその時間は然したる問題じゃないがスラッシュや俺、みたいに高速で間合いに近づいてくるヤツやシルエットみたいな遠距離攻撃出来る相手だと不利だ。」

「そして、もしお前がバイクから離れるような事態になったら完全に勝ち目がなくなる。」

「えぇ、だからバイクを変形させて攻撃に耐えれるようにしたんです。」

(私の「戦車形態」はその為に作った技なんだから)


「それだよ。」

「え?」

「君の弱点、君の攻撃は"バイクを使わないと出来ない"...だから模擬戦で俺に歯が立たなかったんだ。」

「どんなに強力な装備でも使う暇を与えなければ意味をなさない....君のバイクは強力だが大きい分、被弾するリスクも大きくなり一度、攻撃されると修理に気を回して反撃のタイミングを逃しちまう。」

「実戦だとそれが命取りになりかねない。」


 私は高崎さんから言われた私の弱点に対して愕然した。

 確かに私はこれまでバイクの攻撃を止められる事が無かった。

 だからこそ、気付いてこなかった弱点....

 この前のスラッシュとの戦闘だってバイクに乗って身動きとれない私の代わりに高崎さんが戦ってくれたから生き延びることが出来たんだ。

(もうこんな思いはしたくない。)

 無力感に苛まれながら戦いをただ見ているなんて....


 私は覚悟を決めて高崎さんに頼み事をした。

「高崎さん、私に"近接戦闘"を教えて下さい。」

 私の目をみた高崎さんは少し考えると笑顔で答えた。

「良いぜ!みっちりと鍛えたやるよ。」

 そこから私は高崎さんから近接戦闘で使う武器の使い方や自分にあった武装の探しや研究班への武器製作依頼全てに置いて私の面倒を見てくれた。

 私は今、手に持っている武器を握りしめながら思う。

(あの時の高崎さんのアドバイスは間違っていなかった...このまま弱点を放置していたら私はシルエットの爆発で死んでいたかもしれない。)

 私は研究班に作ってもらった"私専用の武器"をシルエットに向けながら、彼に良い放つ。

「勝負はこれからよシルエット!」



 シルエットは自分の攻撃で相手にダメージが無いことに驚きを隠せないでいた。

(私の爆発を回避できるなど....一体どんな能力を使ったんだ?)

 しかし、その謎もとある光景を見ることで彼の中で解決した。

(あれは、あの女が使っていたバイクの残骸....そうか!バイクを身代わりにして爆発から逃げ延びた訳か。だがバイクはもう使い物にはならないだろう。)

 そう判断するとシルエットは彼女に目を向ける。

(手に持っているのはナイフか?

 ふっ!そんな武器で私に敵うとでも)

 シルエットとエマの距離は爆発の影響もあり軽く20mは離れていた。

 ナイフでは絶対に届く距離ではないがシルエットにとっては絶好の攻撃範囲であった。

 彼は懐に入れたボムシードに手を伸ばすと、

 エマは彼に向かって走り出した。

(愚かな...爆発の餌食になれ!)

 シルエットがエマに向かってボムシードを投げる。

 そこで、彼女は自分の武器の"能力"を発動した。



 UGN研究班の一人が完成した私の武器を持ってきてくれてた。

「お待たせしました鹿波さん、やっと完成しました。」

 研究班の人が持ってきたケースを開けると中には両刃の鉈サイズのナイフが姿を表した。

「対オーヴァード用"ウィッピングナイフ"スコーピオと言います。」

「ウィッピングナイフ?」

「はい、このナイフに貴女の能力で電気を加えると刃が細かいパーツに分かれて伸縮性を持ち伸びるわけです...鞭のように」

「そして、刃は全て帯電状態になっているので触れるだけでもダメージを与えられます」

「因みに...どれだけ伸びるんですか?」

「最長で15m位です。」


 エマはシルエットに投げられたボムシードに向かってスコルピオを伸ばし帯電させた。

 電気を受けたボムシードはシルエットの近くで大きな爆発を起こし吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。

 スコルピオも爆発の余波を受けるがエマが能力を解除すると一瞬で元のナイフの大きさに戻った為、衝撃はほぼ受けなかった。


 シルエットはその衝撃により気絶した為か動かなくなった。

(よし、今のうちに....)

 エマはバックから急いで装置を取り出すと最後の設置場所に装置をセットし能力を発動する。

 すると、エマの雷は全ての装置を通りシステムが起動する。

 そしてそのデータがテンコの持つパソコンへと転送された。


「隊長!エマちゃんの仕掛けてくれたアクティブソナーから信号を受信しました。」

「爆弾は何処にある?」

「まだ、探索中です!」

「残り時間は?」

「あと1分!」

「分かった場所が分かり次第知らせろ。」

「私が対処する。」

「A2.A3!そちらの状況を知らせろ。」

 彼等は暴走したヤテベオの対処を行っていた応援を送る算段もつけたが、逐一情報を送るように連絡していたのだ。

 しかし、彼等が無線に応答することはない。

 彼等に何かあったと思ったテンコは小田嶋に進言する。

「隊長!援護に行く許可を。」

「ダメだ。爆弾の位置が分かっていないこの段階では許可できない。」

「しかし!」

「大丈夫だ、アイツら俺が集めた精鋭だ生き残ることには人一倍長けてる。」

「それにな。」



「そろそろ送った援軍が到着する頃だ。」



【爆弾の爆発まで残り1分】






 続く

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