第9話「B」育てられた悪意
爆弾魔シルエットを取り逃がした私達はそれから一週間かけて捜査を続けたが、シルエットはあの事件以降、爆発事件を起こさなくなり一時の平和な時間が訪れていた。
私と共に捜査してくれていた高崎さんもF市のUGN支部が安定してきた事が本部に伝わると藤崎さんの命令で別の支部に移動していった。
(結局、ちゃんとお礼を言えず仕舞いだったなぁ)
私は学校が終わり下校しながらそんな事を考えていると後ろから同級生に抱きつかれた。
「ばぁ!エ~マちゃん何ボーッとしてるのさ」
「うわっカナちゃん驚かさないでよ。」
後ろを振り向くとカナちゃんにタツヤくん、マモルくんと言った何時ものメンバーが一緒に集まっていた。
「相変わらず仲が良いね三人ともまだ一緒に帰ってるんだ。」
「うーん、住んでるマンションが一緒だからねそれで何となくこんな感じに」
「へーっそうなんだ今度カナちゃんの家に行ってみようかな?」
「!?嬉しい提案なんだけど家のマンションの管理人さんが煩くってさ友達とかあげられないんだよねぇ。」
「管理人さんって黒宮さんだよね?
バーで一緒にごはん食べている。」
「そんな気難しそうには見えないけどなぁ」
「いやいや、それがめっちゃ気難しくてさ猫一匹でも上げようものなら怒鳴られるの確実って感じの人なのよっ!」
「猫と友達は結構違うと思うんだけどな。」
私は焦っているカナちゃん言うとタツヤくんが反論してきた。
「黒宮さんは公私をきっちり分けるタイプの人なんだ友達だろうと猫だろうと住人以外入れないってポリシーがあるみたいでな。」
「そうなんだ....なら仕方ないね。」
「あははははぁー!ごめんねエマちゃん。」
カナちゃんが私に対して謝っていると
マモルくんのスマホに着信が入った。
「マモルくん今日用事でもあるの?」
「いいや、アプリの通知だよ。
都市伝説とかにハマっててさそれ関連。」
マモルくんの意外な趣味に私は驚きながら話を続けた。
「へーっ!マモルくんって都市伝説とかに興味あったんだ。」
「まぁね、いい暇潰しになるんだよ。
.....へーっ"シルエット"が復活したんだ。」
聞き慣れたワードに私は聞き返す。
「シルエット!どうしてその名前を!」
その食い付き方にマモルくんは驚きながらも答えてくれる。
「1週間前から更新がなかったサイトの管理人の名前がシルエットって言ってその人が最近またサイトを更新したみたいなんだよ。」
「ちょっとそれ見せて!」
そう言って私はマモルくんのスマホを見せてもらうと確かにそこには「シルエットの芸術」と書かれており前のサイトと同じだった違うのは今回は写真ではなくURLが貼られている事だった。
私は自分のスマホにそのURLを打ち込みサイトを開くとそこには一本の動画が納められていた。
私はその動画をタッチして再生させる。
すると、暗い部屋の中、突然フードを被った男性が現れ喋り始めた。
「お久しぶりですね私の名前はシルエット」
声のトーンと見た目から1週間前に取り逃がしたシルエットだと私は気付いた。
「今回、皆さんにご連絡したいことがあり動画を回しました。」
「私のサイトをご覧になっている皆さんにはこれまで私の"完成した作品"ばかりを提供して参りました。
しかし、私は皆さんにも作品が出来る瞬間とその偉業の一部を体験していただいたいと考え、とある提案をお持ちいたしました。」
そう言うとシルエットは恐ろしい計画を話し始める。
「今日の16:00、F市の"とある地区"に仕掛けた複数の爆弾が起爆いたします。
その光景こそが私の作品を愛してくださる皆様への恩返しとなると思っております。
近くで見たい又は作品の一部になりたい方は奮ってご参加ください。」
そう言い終わると動画が終わった。
私は時間を確認する。
(今は14:30....爆発まで時間がない。)
「どうしたのエマちゃん?」
「ごめん急用思い出したから先に帰るね
また明日学校で」
そう言うと私は急いでUGN支部に向かった。
「まさか、いきなり爆破予告とはのぉ。」
シルエットの投稿した動画を確認しながら、毛利支部長は頭を抱えた。
(爆破を止めようにも仕掛けた場所がF市の都市だけでは止めようがない。
しかし、隼人の話を聞く限りでは相手は爆発を沢山の人間に見てもらいたい筈、F市の中でも人口が多く人が多い地区は
"天谷地区"と"青葉地区"の二つだが、この推理には確証がなく二つの地区に派遣して全域をカバーは出来ない出来て1地区だけだ。)
毛利が次の行動を思案していると電話がかかってきた。
毛利は受話器をとりスピーカーにする。
「私だ。」
「小田嶋です。」
「....少し待て」
そう言うと毛利は机の中から装置を取り出し電話機につけるとスピーカーをoffにし受話器を耳につけた。
「盗聴防止のジャミング装置をつけた。
話しても構わん。」
彼が課の名前ではなく自分の名前を言うときはオフレコの話がしたい時と昔から決まっていた。
「シルエットの事件に関して有益な情報を手に入れました。」
「情報元は?」
「FHです。」
「何っ!」
意外な情報源に私は驚き小田嶋に尋ねた。
「信用できるのか?」
「私の信頼する探偵"識崎"にも相談してみましたが論理的に考えてかなり信頼性は高いとの事です。」
「オーヴァード事件専門の探偵だったな確か識崎は」
「はい。」
「それで情報の内容は?」
「場所は青葉地区、そして爆弾の仕掛けている所は....」
「それが本当だとしたら解体は不可能だ。」
「えぇ、ですので"我々"が動きます。」
「出来るのか?」
「はい、解体は無理ですが"無力化"は可能です。」
その言葉を聞き毛利は暫く悩んだ後に決意する。
「分かった、お前に一任する、"上"には俺が報告しておく。」
「ありがとうございます。」
そう言い終わると電話が切れた。
(やれやれ変わったと思っていたが存外そのままのところもあるだのぉ。)
そう思うと毛利は上と話を付けるため電話をかけ始めるのだった。
現在の時刻15:30爆発まで残り30分、
青葉地区に到着した私は無線でパパに連絡を取る。
「パパ、到着したよ。」
「ほんなら計画の説明しよか。」
そう言うと小田嶋は話し始める。
「UGNの調査で爆弾はこの青葉地区にあるっちゅーのは分かったんやけども、場所までは検討ついてへんのや。」
「せやからエマちゃんに渡したこの装置の出番が来るっちゅー訳やな。」
私はバイクのトランクからフリスビーの様な薄い板を取り出す。
「その装置にはな電流が流れた瞬間に特殊なパルス信号が出るらしくてのそのー....何やったっけ?」
「そのパルス信号を、複数から照射することで地中やビル内の異物を検知するわけよ。」
テンコさんが上手く補足説明をしてくれる
「あっテンコ!ワイのセリフとんのは駄目やでぇ。ワイこれでも課長....」
「つまりエマちゃんにはそのパルスが均等に渡るようその装置を設置してその後に全部の装置を起動させてほしいって訳。」
「えっ....ワイ無視され..」
「はい、分かりました行きます。」
「えっ....エマちゃん。」
今回は時間がないため父との会話を無視すると私は指定された場所に装置を設置するためバイクを走りはじめた。
(装置の数は10個残り時間は30分何としても間に合わせる。)
娘がバイクを走らせたことを確認すると小田嶋は無線の周波数変えて話し始めた。
「よし、作戦開始だ。」
「現刻より爆弾の無力化及びそれを妨害する外敵の排除を行う。」
「各員、応答しろ。」
「A1スナイプポイントに到着。
これより狙撃地点を確保し狙撃準備には入ります。」
"テンコ"の無線からいつもと違う緊張感のある声が聞こえる。
「A2エリアG4に到着。
不審人物に及びオーヴァードの能力は関知できない。」
「A3現在G2までトラップの設置は完了している全トラップ設置しだいA2と合流する。」
全員が任務をこなしていることを確認した。
小田嶋は冷静に言葉を続ける。
「各員の任務状況を把握したイレギュラーが発生することはないとは思うが警戒は怠るな。」
「隊長、今回の作戦も識崎が立案を?」
A2が尋ねる。
「その通りだ。」
「なら、問題ありませんね。
私達は自分の仕事をするだけです。」
そう言っていると、A3から無線が入った。
「全部隊に通達こちらA3エリアG1で敵と思われる集団を確認。」
「人数は?」
「9人内二人がデータには入ってます。
コードネーム、ヤテベオ
コードネーム、シルエットアナザー」
「やはり来たかトラップの設置は」
「G3までは完了しました。」
「よし、G4は諦めて迎撃体制を取れ。
優先撃破目標は【1.ヤテベオ】【2.シルエットアナザー】 【3.その他外敵】とする。」
「A1はエマの援護と爆弾の無力化、A2とA3侵入した敵の撃滅オーダーは以上だ。」
「「「了解」」」
小田嶋は冷静かつ冷徹にいい放つ。
「折角のお客様だ丁重お迎えして差し上げろ。」
私はメンターの同志であるヤテベオと
その他、複数の仲間を引き連れて青葉地区にに訪れていた。
メンターは私に能力の使い方を教えてくれた後、私に一つの任務をくれた。
「青葉地区で爆発事件を起こしてくれないか?それも大々的な犯罪にしてほしい。」
メンターに恩のある私は彼の願いを叶える為にこの計画をメンターに提案するとメンターは喜び私に護衛を付けてくださった。
私の事を信頼してくださったメンターの為にもこの計画は何としても成功させなくてはならない。
しかし、それにしても分からない。
ヤテベオはメンターから直々に紹介され二三話をした結果から信用できると、判断したが他の奴等は何と言うか知性の欠片すら感じないまるでオーヴァードの能力を使いたいだけの赤子の様に常に暴れたい衝動をその身から現している。
メンターに聞いたら「『WORKER躱すのだがそれにしてももっとまともな人材はいただろうと思ってしまう。
現にコイツらはヤテベオの性別が女だと分かってからは稚拙で低レベルな言葉しか吐かなくなっている。
こんな奴等と私が同じオーヴァードだと思うだけで恥ずかしいくなるぐらいにはコイツらに辟易していると。
木っ端の一人が話しかけてきた。
「なぁ、ヤテベオのねぇちゃん?俺らの仕事はこのオッサンの警護で良いんだよな?」
「えぇ、その通りよ。」
「ならよぉ、こんな冴えないオッサン警護するには報酬が少なすぎる気がするんだわぁ。」
「.....何が言いたいの?」
「つまりさぁ、仕事終わったら別の報酬として俺らと楽しいことしないか?ってこと」
「全く品がない猿だ。」
「あっ?何か言ったか?オッサン。」
「別に知性のない動物には何を言っても無駄だ。」
「テメェ、ムカつくな依頼がなけりゃぶっ殺してる所だぜ。」
すると、ヤテベオが喋り始める。
「好きにすれば良いんじゃない?」
ヤテベオの言葉に猿どもは沸き上がる。
「おっ!話が分かるじゃねーか。」
「あの"攻撃"から生き残れたらね。」
「あ?」
すると、突如私の周りから何かが成長し私とヤテベオを覆った。
その瞬間、周りが猿たちによる断末魔に覆われた。
続く
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