第3話「A.B」とある探偵
学校での授業中私の携帯に連絡が入った。
私は直ぐに内容を確認する。
何故ならその携帯は普通の生活用ではなくUGNでの任務の際に使用する携帯だった為である。
メールが一件入っており内容は「緊急任務あり....支部に急行せよ。」と言うものだった。
私は学校を仮病で休み学校の門から出るとオーヴァードの能力を発動する。
私の乗っているバイクには私の細胞が入っており自分の意思をある程度伝達できる。
私はバイクに(今すぐに来て)と願うと暫くして人の乗ってないバイクが私の元にやってきた。
私はバイクに素早く乗り込むと、ワーディングを発動させつつ本部に向かった。
F市にあるUGN支部は世間の目を欺くためとある運送会社として存在している。
私は支部に到着すると受付の人に話を通し確認が終わると、
「お待ちしておりました"雷鳴の追跡者様"」
受付の人が私の事をそう呼ぶ。
雷鳴の追跡者とはUGNのエージェントになる際に付けられるコードネームでエージェントは皆持っている。
毎回確認として呼ばれるのだが正直にいって恥ずかしい。
私はエレベーターに乗り先ず"援護課"に向かう。
中には入ると数個の机と椅子が並べられ沢山の資料で埋もれていた。
そこで一人項垂れている女性を発見する。
「テンコさん!大丈夫ですか?」
彼女は『的場テンコ』援護課の職員で書類整理を主に行っている。
テンコは項垂れながらも私の方を向く。
「あっ!エマちゃんどうしたの?まだ学校あったでしょ。」
「緊急の任務みたいで呼ばれたんです。
それよりテンコさんこそどうしたんですか?」
「いやね、この部屋エアコン無くてさ扇風機で頑張ってたんだけど処理する書類の束に埋もれちゃったおかげてこうなってる。」
そう言って彼女が指を指した方向に目を向けると恐らく扇風機があるべき場所に大量の書類が置かれており風どころか本体ごと押し潰されて消えていた。
そのせいもあってか部屋が更に蒸し暑くなっていた。
「エアコンはまだ付けてくれないんですか?」
私はテンコさんに尋ねる?
「ラドリーラットにそんな予算は出ませーん(笑)」
「けど、笑い事じゃなく本当に危ないんじゃ....」
「今一番危ないのは課長だと思うよ。」
テンコさんが指を指す方向を見ると窓から大量の熱を受けながら机に突っ伏しているパパがいた。
「パパ?大丈夫?」
私は恐る恐る尋ねる。
私の声が聞こえたのかパパが項垂れながらも笑顔で答える。
「そうか.....私は死んだのだな天使が迎えに来たようだ。」
(危ないパパ幻覚見てる!)
私は急いでバックから水筒を取り出して冷たいお水を飲ませるとパパは正気に戻った。
「はっ!エマちゃん来とったんか。」
意識がしっかりしたのか口調もエセ関西弁にしっかりと戻っていた。
「うん、メールで緊急任務があるっていわれて」
「せやったせやった、第三会議室で詳しい説明あるみたいやから急ぎ。」
「分かった水筒置いていくから小まめに水を飲んでねパパ。」
私は水筒を置いて援護課を後にした。
第三会議室に着くともう会議が始まっていた。
「ようやく来たかラドリーラットの分際で重役出勤とは恐れ入ったよ。」
嫌味ったらしく私に突っかかってくるのは、今回の作戦で指揮をするF市のUGN支部長だった。
この人は特にエージェントの中でも援護課を侮蔑している事で有名な人で援護課に所属している私も目の敵にされていた。
「遅れて本当に申し訳ありません。」
「ふん!まぁ、ラット程度がいなくても大差はないがな。」
そう言いながらも話を続ける。
「今回の任務は最近F市で起こっている連続放火事件の犯人がオーヴァードだと確定した為、その確保を行うためだ。
今回は任務の成功率を上げるため日本支部からもエージェントを派遣してもらっている。」
そう言うと前の席に座っていた青年が立ち上がり自己紹介を始める。
「高崎隼人っすよろしく。」
けだるげに自己紹介する彼を私は知っていた。
"ファルコンブレード"の異名を持ち日本各地で様々な任務をこなしている敏腕エージェントだ。
(こんな凄い人が任務に参加するなんて)
「高崎を中心にした本隊でオーヴァードを鎮圧捕獲する他のものは周囲の警戒を行ってくれ。」
全員への説明が終わると、私を見てUGNエージェントは付け加えた。
「あぁ、そうだラットである君が警戒に加わるとこの前みたいに失敗するかもしれないから警戒には付かなくていい適当に付近でも走っていたまえ。」
そう言い終わると支部長は部屋を退出した。
何時も通りの悪口だとは思っていてもこの前の任務で失敗したばかりの私には充分に堪える言葉だった。
俯いている私に二人の人が声をかけてくる。
「気にすることないよ鹿波くん。」
「そうだぜ、いい年した大人の癖にみっともねぇ。」
声をかけてくれた一人はさっき自己紹介をしていた高崎さんとF市で活躍しているエージェントの『梶山タケル』さんだった。
「この前の任務だってランクAのオーヴァードが相手だったそうじゃないか?生きているだけでも凄いことだよ。」
「ありがとうございます...でも」
「まぁ、気にしちまうよな。
でもよ鹿波って言ったっけ?」
「生きていれば巻き返しのチャンスなんて幾らでもある...だから悩むより今出来ることすりゃいんじゃねーの?」
砕けた言い方ではあるが優しく思いやりのこもった言葉に私は、涙ぐんでしまった。
「あっ!別に泣かせたい訳じゃねーんだわ、取りあえず言いたいことはクヨクヨすんなってことで...」
高崎さんが鹿波の涙に慌ててる姿を見て梶山が笑いながら答える。
「ふふっ流石のファルコンブレードも女の涙には弱かったか。」
「かっ、からかわないでくれよ。」
二人は笑いあっているその姿を見た私は涙を拭くとしっかりとした顔で答えた。
「高崎さん梶山さんありがとうございます。一緒に任務を成功させましょう。」
そうして笑顔で言うと梶山も高崎も笑顔で「「勿論」」と答えた。
私は今回の任務で説明された区画に到着した。
付近には学校や商店街など人が集まりそうな所は多くあるが現段階で事件が起きる予兆はなく平和そのものだった。
(このまま、なにも起きなければ良いのだけれども。)
そう願いながら辺りを巡回していると、
近くの高校付近で言い争っている男性二人を発見した。
一人はスーツ姿でもう一人はコートにハンチング帽を被った人だった。
怪しさを感じた私が彼等に声をかけようとした瞬間、学校内で大きな爆発音と衝撃を感じた。
その音が聞こえるやいなや二人の男性は学校に入っていく。
彼等を止めようと近付くと体に特殊な違和感を覚えた。
私はこの違和感の正体を知っていた。
(これは、ワーディング?
と言うことは二人ともオーヴァード。)
彼等の正体を理解した私は警戒しながらも二人に声をかける。
「二人とも待ってください。」
声をかけられた二人は立ち止まり、
私の方に振り向く。
「なっ、子供じゃねーか危ないから下がってろ。」
スーツ姿の男が乱暴に話しかける。
「待ちたまえよ黒観くん、君はUGNのエージェントではないのかね?」
ハンチング帽の男が私に訪ねてくる。
「はい、私はUGNのエージェントですが...」
「なっ!こんな子供がUGNで働いてんのか?」
「子供だからと侮ってはいけないよこの前も説明したじゃないか。」
「確かに説明はされたけどよ実際に見てみる.....おい嬢ちゃん今何歳だ?」
「えっ....17ですけど。」
「17の女の子が何でバイクなんか乗ってるんだ?免許は持ってるのか?」
私は当然の事とはいえ言われた言葉にビックリして黙っていると
「ちょっと署まで来てもらおうか。」
そう言って腕を捕まれた。
「きゃっ!ちょっと何するんですか?警察みたいなことして」
「見たいじゃなくて俺は警官だ。」
黒観と言われた男は警察手帳を見せる。
黒観ハヤタ巡査と書かれていた。
一瞬、この場の空気に流されそうになったが今起きている事態を理解し黒観の行動を止めようとする。
「ちょっと待ってください。今そんな状況じゃ...」
「言い訳は署で聞こ....」
そう言いかけると黒観と言われた男は横の男性に頭を叩かれた。
「イテッ!何すんだテメェ。」
「彼女も言っていたろう今はそんな状況ではないとそれに何度も言っているが私の名前は識崎だいい加減に覚えたまえよ。」
識崎と名乗る男は黒瀬を叩くとため息をついた。
「やれやれ小田嶋くんに応援を頼んだ筈だったのに情報が上手く入っていない様だな。」
識崎と言われた男からパパの名前が聞こえて来て私は素直に答えてしまった。
「パパの事知っているの?」
「パパ?と言うことは君は小田嶋ユウサクの娘かね?」
「はい、そうです。」
「....そうか、黒観くん計画変更だ彼女と協力しよう。」
「はっ?識崎お前何を言って.....」
「それが一番、確実だからだよお嬢さん私の名前は識崎キンザブロウ。
君の父上とは目的のためにお互いに協力しあっている間柄だ。」
「私は探偵をしていてね実は今回の放火事件の犯人を捕まえるために行動しているのだよ。」
「君の事も父上から聞いているよ鹿波エマ。
何時も自慢話を聞かされるからね。」
「そうなんですか。」
「私もそこの黒観くんもオーヴァードだ。」
「私達は今回の犯人を必ず止める....故に」
「我々と協力してくれないか鹿波エマ?」
続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます