第1話「B」夕闇の追跡者

 私の名前は『鹿波エマ』

 普通の高校生って言いたいとこだけど違う。

 私は生まれた時の記憶がなく覚えているのは私がFHで実験用のオーヴァードとして拷問されていた点だけだった。

 何度も死にたいと思い神に願ったけど叶えてはくれなかった。

 けど、神様は代わりにいい人を私のもとに寄越してくれた。

 現在UGN支部長であり私の義父でもある『小田嶋ユウサク』彼が私の捕らえられていたFHの実験場を潰して私達を助けてくれた。

 親がいる子供は親元に帰れたんだけど、

 私にはいなかった。

 すると、小田嶋ユウサクが私のパパになってくれた。

 そこから、私はUGNの養護施設に入り、『UGNチルドレン』となった。



 突如、私のスマホがなり画面を確認する。

 画面にはパパとかかれており義父からの電話だと分かり私は電話に出た。

「エマちゃん学校どうやったかぁ?」

 間の抜けた口調と関西弁で語り書けてくる毎回そうだ仕事の前にはこの電話が来る。

「大丈夫だよパパ心配しないで良いよ。」

「ほんまかぁ?ビビってオシッコとかチビっとらん?」

「.....パパ?」

「すまんすまん!堪忍したってやエマちゃん(笑)」

 下らない話をしつつも内心は嬉しかった。

 今回の任務はFHが取引に使っている現場を本隊が制圧し別動隊の私達が取引で取り零されたトラックを押収するというもので危険度は高くないものの油断の出来ない任務だった。


 雑談を、パパと楽しんでいる

 私の前を1台のトラックが通り過ぎた。

 作戦説明の時に見せられたトラックだと分かり私は気分を切り替える。

「あっ!ターゲットのトラックが来たみたい」

「おっ、ほんまか?なら気張るんやでぇ

 ファイトォーー」

 気の抜けた応援を聞いた私は笑いながら通話を切りヘルメットを被るとバイクのエンジンを吹かし、大きな爆音を鳴らしながら、

 夜の闇を走る。


「全く楽な仕事だぜ。」

 トラックの運転手がぼやく。

 トラックの中身を聞かない開けない条件で高額な報酬が約束されている。

 警察にも警戒されていないから危険もない本当に楽な仕事....そんなことを考えている刹那トラックの横を光が通り過ぎ目の前で止まった。


 急いでブレーキを踏み、前を確認するとバチバチを音を立てているバイクに乗ったライダース姿の女性が目の前を塞いでいた。

「無駄な抵抗は止めて出て来てくれないかな?」

 トラックの運転手に向かって私は警告を発したがどうやらちゃんと聞いてくれなかったようでトラックがUターンし逃げようとしたので、バイク内に帯電している電気をトラックに当てて回路をショートさせトラックを停止させた。


 トラックが動かないのに気づいた運転手が外に出たので捕まえようとバイクを動かそうとした瞬間、逃げようとした運転手の身体に鮮血が走り倒れた。


 見るとトラックの横にフード付きの外套を来た謎の人物が二人見えた。

 その内の一人が話し出す。

「やはり、只のちっぽけな人間を仕事に使うべきじゃなかったな....余計な手間が増えてしまった。」

「貴方達は何者?」

 私の質問に顔を伏せながらも答える。


「これから死ぬ君に教える必要性が無いな」

 そう言って片手を私に向かってふる。

 嫌な予感がした私はハンドルを切り無理やり回避をすると、ズバンという音と共に、

 私のいた地面に大きな亀裂が入った。

(全く見えなかった!この攻撃かなり危ない。)

 自分に向けられた攻撃の危険度を正しく理解した私は身体を帯電状態にしたままバイクで光速に近いスピードで攻撃していた人物にタックルをかました。


 しかし、バイクの攻撃が謎の人物に当たる前に目の前に急に現れた大木により攻撃を防がれてしまう。

「...ヤテベオ邪魔をするな、コイツは俺の獲物だ。」

「私達の目的はトラックを持ち帰る事で戦闘じゃない....無駄なことしてる暇何て無い筈だけど。」

「....それに」

 するとヤテベオは自分の横に大きな大樹を生成する。

 その瞬間、風切り音と共に何がが数発大樹に着弾した。


「どうやら、スナイパーからも狙われているみたいだしね。」

 そう言いながらヤテベオはズボンのポケットから"何か"を取り出す。

「これ以上、ここにいるのは危険ですね逃げますよスラッシュ。」

 そう言うと"何か"は急激に成長しトラックを飲み込み大きな籠のような大樹になった。

 スラッシュと呼ばれた男が地面に手をかざすとヤテベオとスラッシュ、そして籠の大樹は空に浮かび上がり空の上へと消えていった。



 この後、私は作戦本部に任務の失敗と状況を説明した。

「本当にソイツはヤテベオと名乗っていたのか?」

 今回の作戦を指揮した人物から電話越しに質問をされる。

「知っているのですか?」

「あぁ、ヤテベオはFHに所属している"危険度Aクラス"のエージェントだ。」


『危険度』とはオーヴァードの犯罪者が起こした事件により付けられるランクの事である

 ランクが高いほど危険で沢山の犯罪に関与している可能性がある。

(因みにFHのトップやプレデター等はSクラス、カーネイジはAクラス、ディアボロスはBクラスとなっている。)


「そんな危険な人物が護衛についていたなんて....」

「いや、この取引を纏めていたのは春日 恭二ディアボロスだった。

 それに、他の押収したトラックにはも盗難された絵画や宝石類などの金目の物だけだった。」

「じゃあ、"スラッシュ"については?」

「そっちに関してはFHのデータではヒットしなかった...現在別の方面から調査している。」

 現状を説明し終わると電話の相手は私を安心させるように付け加えた。

「今回、君に任務を頼んだのは我々が調査した中でも新米の君が比較的安全に任務が行えると思ったからだ。故に君一人に任務を頼んだ。

 この失敗は君のせいではない安心したまえ」

「....はい、ありがとうございます。」

「これから先の捜査は我々のみで行う。

 君は『援護課』に戻って構わん。」


『援護課』とは、UGN日本支部長である『霧谷雄吾』が設立した。

 UGN捜査援護課、UGNに存在する班の仕事の援護が主任務になっている....とここまでは聞こえがいいが実際はオーヴァードとしての能力が弱くエージェントとして不適合と判断された者が送られる場所。

 だから、他のエージェントからはカドリーラット《掃き溜め》と呼ばれ影で笑われている。

 そんな状況を変えたくて私は援護課に所属しながらも積極的に任務に参加をしている。

(.....それなのに失敗しちゃった。)


 自分の失敗に落ち込みながらも電話の相手に了解の返事を言うと私は電話を切りそのままバイクで家に帰った。

 着替えて自分の部屋のベットにくるまりながら反省していると部屋の扉をノックする音が聞こえる。

「エマちゃん....お父さんやで。」

 いつもと違うトーンで私に話しかけてくる。

 きっと、傷つけないように言葉を選んでいるのだろう会話がかなり辿々しい。

「本部から話聞いたで....何と言ったらいいか....その....失敗はしゃーない...じゃのうて....間違うのは人間だれにでもあ....間違っていなかったか....あの....えーと....」

「大丈夫だよお父さん無理して慰めなくても私は大丈夫。」

「ただ、今日はそっとしておいて欲しいかな」

「.....分かったすまんのエマちゃん。」

 そう言い終わるとユウサクは自分の部屋に戻っていった。

(ごめんね、パパ。)

 彼女がここまで落ち込むのは援護課の課長が父親である小田嶋ユウサクだからである。

 彼女は父親の為にこれまで数々の任務を受けては功績をつんできた。

 そんな彼女が始めて任務で失敗をした。

 Aクラスのエージェントが護衛をするような荷物、それをみすみす渡してしまった事を反省しながら彼女は眠りにつくのだった。




 続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る