子供の頃の話

ブッチ

第1話

テレビでアフリカの部族を訪れてその人たちがどんな生活を送っているかを体験する番組が時々やっている。その映像を見て思い出すことが私にはある。

子供の頃、親戚の家で餅つきをするというのでお邪魔した。

それほど大きくはない家に近所の人たちも集まって盛り上がっている。大人たちは出されたお酒を飲み、子供たちはつきたての餅を食べて喜んでいる。その間を親戚のおばちゃんやおじちゃんは留まる事なくせっせと働いている。汗をかきながら、楽しそうに。

子供ながらに不思議に思った。

わざわざ休みの日に大変な準備をして人を呼んで休むことなく動きまわって、時折り夫婦で言い争いながら、みんなに楽しんでもらおうと頑張っている。

大人になってその時の光景とアフリカの部族が重なるのである。


客人をもてなすのは人間特有の感情だとおもう

野生動物が同種の動物が自分のテリトリーに入ってきた時に相手をもてなそうとは考えない

千年以上文化が変わらない民族が客人をもてなすために正装に着替え自分たちでもなかなか食すことのできないご馳走を出したり歌や踊りを披露する

客が喜んでくれたら自分たちも嬉しくなる

客はもてなされることで相手の文化や性格習慣を理解する

もてなすということはお互いが相手を知るための一番の近道なのかもしれない

最近はもてなしたり、もてなされたりするのが面倒だという人が多くなったような気がする

もしかしたら自分をさらけ出すのが怖いのかもしれない

誰かをもてなすということは人間として

ごく自然なことだと思う。だから勇気を出してもてなしてみようじゃないか

客人は喜ばない事があるかもしれないが自分をさらけ出す事が案外評価されるかも知れないし楽しいかもしれない。

子供の頃の親戚も客が夕方満足顔で帰っていく姿が見えなくなるまで見送っていた。

充実感に満ちた顔だった。



その後、親族だけになった家の中で片付けをしている時に町内会の行事で仕方なくやっていたと知った時は驚いた。 あ、やっぱやりたくなかったんだ。

アフリカの部族もテレビ局から金を貰ってるからもてなしてるらしい。どちらも心底気持ちを込めてない姿が重なったのかな。

この世は民主主義であり、資本主義なんだなぁ。

家で1人テレビを見ながら缶チューハイを呑んで思った。俺は誰かをもてなせるかな。

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子供の頃の話 ブッチ @k-0312

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