第54話面白い結界と声

「おもしろいねぇ」


『ねぇ、フワフワ?』


『ぷゆゆゆん?』


『うん、ぷるちゃんの中に入ってるみたいだね。色はおんなじ』


『ガウガウガァ!』


『ダメだよ触っちゃ。ね、シューおじさん』


『俺はおじさんじゃないぞ。お兄さんだ。エリアスだってそう読んでるだろう?』


『でも、僕、みんなおじさんに見えるよ。お兄さんはラッセルお兄ちゃんとダレルお兄ちゃん』


『それならほとんどがおじさんじゃねぇか』


 すぐにお城に向って歩き始めたシューお兄さん。でも歩いたんだけど、歩いたんじゃなかったの。あのね、僕達を結界で包んでくれてるでしょう。その結界がムウちゃんが練習した魔法のボールみたいにフワフワ浮きながら動き始めたんだ。

だからシューお兄さんは歩き始めたけど違くて、飛んでるみたい。


 後、他にも面白い事。木と木の間を通るとき、僕木の結界がぶつかって、割れちゃうと思ったんだ。そう言ったらシューお兄さんが、結界が割れる訳ないだろうって。でももしかしたら割れちゃうかもしれないでしょう? だってフワフワなんだよ。


『はぁ、結界は割れないし、それにこの結界は特別なんだ。普段は俺は走った方が楽なんだが、今はお前達が居るからな。スピードを上げる訳にいかない。だからこのとくべつな結界を張って、城に向ってるんだ。良く見てろ』


 木と木の狭い所を通るシューお兄さん。通る瞬間、木が斜めになって、僕達を通してくれました。


「わぁ、木が避けたよ」


「凄い結界だな!」


 みんなで拍手しちゃいます。シューお兄さんはふふんってお顔して、どんどん木と木の間を進んで行きます。


 でも、そうやって真っ直ぐお城に帰ってたんだけど、急にシューお兄さんが横に曲がりました。にぃにがどうしてって聞いたら、まっすぐふよふよ進んじゃうと、悪い魔獣さんに会っちゃうんだって。

なんかねぇ、お城の周りにさっきまで居なかった悪い魔獣さん達が集まって来ちゃったから、その魔獣さん達に合わないように、離れながらお城に行かないといけないの。だから今は横に曲がったんだって。


 あっちに行って、そっちに行って、なかなかお城に近づけないんだ。僕早くかあ様の所に行きたいのに。それにさっきの爆発、とう様もかあ様もみんなも、お怪我してないと良いなぁ。


 なかなか進まなくて、途中でシューお兄さんが休憩だって言いました。僕達が最初に飛ばされちゃった所からお城まで、半分くらいの場所でお休みです。木の実がなってる木の場所で、僕達を下ろしたシューお兄さん。高い場所に木の実があったから、シューお兄さんが取ってくれて、それをみんなで食べました。


「この実は元気になる木の実だからな。これから城に戻るまで、もう少し時間がかかりそうだから、今のうちに食べて元気になっとけ」


 僕達が木の実を食べてる間に、木の上に上るシューお兄さん。


『魔獣の集まりが早いな。このまま鉢合わせしないで戻るにはどうしたら良い? 少し無理をすればなんとか行けなくもないが、ムウたちが平気か分からん』


「シューお兄さん、何?」


 シューお兄さんが何かお話して、聞こえなくてラッセルにぃにが、何て言ったか聞きます。


「いや、なんでもない。気にせず早く食べてしまえ。その後はトイレだな。俺が浄化の魔法をかけてやるから、お前は弟たちの面倒を見るんだぞ」


「分かったぁ!」


 にぃにがお返事して、むしゃむしゃ木の実を食べます。それを見てた僕やぷるちゃん達も、一緒にむしゃむしゃ。それで木の実を食べた後はみんなでおしっこ。

 シューお兄さんが戻って来て、僕達がおしっこした所綺麗にしてくれて、お休み終わりです。


 またみんなでシューお兄さんの背中に乗って、木の間を進み始めます。でもやっぱり横に曲がったり、何でか後ろに下がっちゃうシューお兄さん。その時でした。


『…こ? だ…と…』


 また声が聞こえたんだ。お城に居る時に聞いた声とおんなじ。僕は振り返って、声をした方を見ます。でも誰も居ません。う~ん。僕の間違えかな? だって、ぷるちゃん達はお話したまんまだし、にぃに達はシューお兄さんとお話してるし。

 僕は前をむきます。


『…だ。あ…り、…でよ』


 ほらやっぱり聞こえるよ。僕はもう1度後ろを見ます。そしたらムウちゃんがどうしたのって聞いて来ました。僕はムウちゃん達に声のことお話します。


『僕聞こえないよ? ぷるちゃん達は?』


『ぷゆゆん?』


『がうがぁ?』


『ぷるちゃん達も聞こえないって』


 でも僕聞こえたよ。ちゃんとは聞こえなかったけど。


『何を騒いでいるんだ。煩いぞ』


 僕達がお話してたら、シューお兄さんが煩いって。だって、僕ほんとに声が聞こえたんだもん。


 僕はシューお兄さんに、声のことお話します。そしたらシューお兄さんが止まって、周りを知らべるから、静かにしてろって。だから僕達はみんなでお口押さえます。

 シューお兄さんはじっと前を向いたまま、お耳をぴくぴく。


『確かにこの気配。城で感じたものと一緒だな。悪い物ではない事は分かっていたし、それにあいつに似ていたから、調べようと思っていたんだが。飛ばされて忘れていたな』


 ぶつぶつ何か言ってるシューお兄さん。声のこと分かった?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る