”雷”の化身
思い返せば、タイチちゃんと出会ってから、一目見た時から想っていたことだと思う。
どこか、ツァンに似て、信用出来る、信頼出来る人だと、漠然と感じていた。
その第一印象が間違いで無かったことが、タイチちゃんの”
ツァンの”
だから、
ツァンの、
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ーーーー
ーーー
ーー
ー
古今東西、人は自然現象に超常現象に、不可解な事に”神”を、”妖怪”を、”幻獣”を、”
河川の氾濫を”龍”神に例え、枕の位置が起きると変わっていることだけで”妖怪”を生み出した。
ことさら”鬼”は引用が多く、日本では”風”や”雷”の神の造形は”鬼”そのものである。
『アーーッハハハハ! 気分が良いわ!!
結んだ髪を振りほどき、自身が嫌悪する”
「ツ、ツァンさん? ツァンさんですよね!??」
「この
髪を振りほどいただけで、突如として様子の変わったツァンに一同が驚いていた。
たった、それだけのことで
ツァンから漏れ出ているのか、
「本性を現したということか!
『ちょっと、
___っーーー!?? --!! --!?? ____ガハァっ!!!??」
発言を遮られた
「貴様!? 何をした!___
『だ~~から、
___っぬはぁあ!!?」
即座に起き上がり、豹変したツァンを詰問しようとしていた刑天が、言葉だけで同じように地面に頭を叩きつけ
「
無様に頭を地面に擦りつけながら、刑天が怨嗟の声を上げていた。
両の腕で全力で身体を起こそうと地面を押すが、それ以上に全身全霊で頭を、
『
ツァンの言葉に従うように、刑天が今度は直立不動に立ち上がり、微動だに出来ないことに冷汗をかいていた。
草原の中央で怨嗟を声を上げる刑天と、その背後に広がる森林、その奥の小高い山を絵画やカメラで収めるように両手の親指と人差し指で、ツァンが捉えていた。
『
失敗した絵画を、要らない部分に絵筆で”線”を引くように左人差し指を、刑天の”首”を両断するように軽く振る。
「貴様! 貴様!! 貴様!!? 貴さ____
たったそれだけの所作で刑天の”首”が鋭利な刃物で斬られたように見事に____
その余波は、背後の森林の大部分、あろうことか山の一部ですら両断する程の威力を誇っていた!!
『アハッ! アハハ!! アーーッハハハハ!!!』
今までの【不死】が無くなり、過剰な仙力も無い刑天の”霧”が”首”を残したまま、周囲の仙力を搔き集める為に何処かへと流れていく。
無様に、ゴミ漁りに行く負け犬を
ーーーーーー
「アレは誰なんですか!? ツァンさんは完全な
豹変したツァンが使っていたのが、
いかに
その微細な、繊細な”電気信号”を高度な
「”適性”が成長することは有れど。ここまでの急成長は有り得ない。アレは別人よ。このドス黒い感覚。____アレは、ツァンの中の”鬼”ね」
タイチに【仙術】を一から教えられる程の知識と経験のある朱雀の精霊のホンが、豹変したツァンが、
完全な
糸のように細く凝縮した”雷”を、指を振る動作に合わせて
ーーーーーー
『長年、私を閉じ込めて来た
餓えた野生の獣のような鋭く、獰猛な視線が倒れているチュイ、ガンとシン、”
『好みではないけど、
刑天を容易く葬った左人差し指が、リウ達に向けられていた!
「____
ソレを止めるのは、その”鬼”の左腕を止めるのは!!
__雨が、降りだしてきていた。
『ぐぅ!?
「
その左腕を捻り上げるのは、
____雨が、強く、降り出してきていた。
『まだ、動けるようだけど。
「ツァンさんの”角”が!!?」
リウの指差す先、本来の”鬼”の”
ソレが主導権を強めているのを証明するかの如く、より大きく、目に見えて成長し始めていた
「言ったお! ココで!! ツァンと
「__!!? マズいわ!! リウ! 寝ているのを叩き起こすか、引き摺ってでも
『__止めなさい!?? 正気なの!!???』
ツァンの右側頭部に、
”鬼”の象徴である”角”は、仙力の塊であり、”魂”を内包するモノ。
生半可な攻撃では壊れず、本来なら二本を共鳴させるように増幅して使うモノ。
混血とはいえ人の身で、
______雨が、雷を伴い、雷雨となっていた。
”角”が”二本”になったことで共鳴を始め、人の身体では耐えきれない
「リウ!
「でも! ツァンさんが!? ツァンさんがぁぁ!!?」
長く生きてはいるが、幼い外見に相応しいように駄々を捏ねて居残ろうとするリウをホンが叱咤する。
頭で分かっていても、今までのツァンとの思い出が、自分の感情が、”魂”が、見捨てることを拒否しているのだ。
「……リウ、ちゃん、……皆を、連れて___
そんなリウを、いつものように、笑顔で、
___【逃げて】」
「__そんな!?? 嫌です!!
リウの意に反して、身体が、脚が、逃走を開始する。
この状態のツァンなら、その身に二つの”魂”を顕現している状態なら、”
タイチがシンやホンが近くに居れば、”適性”でない【仙術】を使えるように、使えるのだ!
ーーーーーー
リウがシンを抱え、ホンがチュイ担ぎ上げ、頑丈だと知っているガンを完全に引きずる形で逃走をしている。
「ああぁぁああ!!! ツァンさん! ツァンさぁぁぁん!!!」
「…………チッ!!」
遠ざかるツァンにリウが何度も、何度も、呼びかける、叫んでいる。
付き合いが浅いとはいえ、不本意な結果にホンが舌打ちをし、唇を強く噛んでいる。
「ああぁぁああ!!! 誰か!? 誰かぁ!!? ツァンさんを! ツァンさんを助けてください!!!」
トウコツと刑天のせいで村人達は家に籠っているし、辺鄙な村であるため通りかかる者も居ない。
よしんば居たとしても、この事態を収拾でき、激しくなる雨、風、”雷”の轟音の中でリウの声を拾える強者が存在するのだろうか。
「誰か!? 誰かぁ!!? ____
________一際、大きい”雷”が、ツァンの傍に落ちていた。
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ーーーー
ーーー
ーー
ー
「よく頑張ったな。やっぱり、お前は偉いよ。ツァン」
「__そんな、嘘だお。なんで……」
『何故! お前がココに居る! ____
再度、魂の傷が開き、【消滅】状態のため戦線を離脱していたはずのタイチが、傷を塞ぎ、仙力を補充しなければ立つことも出来ないはずのタイチが___
「
___”
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