鬼門の麒麟児
属性と適性
街外れの野原、まばらに木々が生えているだけの見晴らしが良く、思いっきり暴れても迷惑が掛からないだろう場所で、シライシの”
「【居合】!」
その身を、命を、シライシの前に晒してまで、誰よりも近く、誰よりも濃厚に観察した【
武器や道具を使った【武道】は、生前では金銭の問題で習得することは無かったが、基本的な身体の動かし方は変わらない。
拳を、肘を、膝を、脚を、無駄な動きを排し、素早く鋭く相手に繰り出すことと通ずるところが多い。
「ふん! まあ、
俺に新しく憑いた
「【居合】!!!」
先ほどの素振りとは違う、
俺が【居合】によって生み出した”斬撃力”を朱雀の
シライシから託された”
「ふん!
俺の飛ばした斬撃は、バットの太さも無いような細い木ですら両断出来ずに三分の一程度の傷しか付けられていない。
これは俺の【居合】が木を両断するレベルでは無いか、【仙術】で斬撃を完全に”刃”に変換出来ていないからである。
「私達、精霊の補助無しで、アナタが使える【仙術】は
「地道に練習あるのみだな。先のことを言っても仕方ないが、ド派手に物語のような【
俺の将来的な”夢”の話を聞き、養豚場の豚を見るような目でホンが見てくる。
「それは私達の補助を、
「”
「……その程度の認識なのね。その段階の話をしてないなんて。タイチと適性が一致してた
良く分からないが、シンには『ご愁傷様』と伝えておこう。
ーーーーーー
遠距離攻撃の練習も兼ねていたので、あらぬところに斬撃が飛んで怪我をしないように、野原には俺とホンの二人だけしか居なかった。
「まず、補助について説明するわね。【仙術】を、
玄武の精霊のシンが憑いているはずなのに、何一つ発動出来なかった。
「補助は、タイチに憑いて繋がることで出来るわ。範囲は
ホンに何故、シンが
「タイチ。アナタの言う【魔法】については
実戦で、わざわざ精霊達に近づくのは攻撃の種類を教えるようなモノで、的が集まるだけの行為なので確かに現実的なことではない。
「”水”の青龍、”風”の白虎の適性が有るから、水や風を飛ばすことが出来たら撃てると思ったんだけどな」
「”属性”と”適性”は別物よ。”火”を出す青龍様の【仙術】使いも居るわ。”
基本的に態度がキツイが、面倒見が良く、疑問を聞けば丁寧に教えてくれるホンのおかげで、【仙術】に関してのことが詳しくなった。
さすがに精霊の”属性”は一致していて、水のリウ、風のガン、土のシン、火のホンらしい。
ちなみに、
俺より、よっぽど
「ガンが”
不確定要素に頼るのでなく、地力を鍛え上げろと言っているようだ。
「…………どうしても。どうしてもと、泣いて懇願するなら……試しに、ド派手なのを撃たせてあげるわ」
「どうしても!!!」
ホンの説明に考え込んでいた俺を、”夢”が叶わなくて落ち込んでいると思ったのか、嬉しい提案が飛び出した。
厳しいが”優しく慈悲深い”とは、このことだと、どこかの神様の精霊に教えてやりたいくらいだ。
ーーーーーー
「うおおおおおお!!! 見つけましたよ!! さあ! 一手、ご指南お願いします!!!」
ホンの情けで撃たせてもらう”火”属性の【神技】による地形を変えるような【魔法】に心躍っていると、俺の【武道】見たさに漫遊して来て、誘拐された皇女の
「あれは”推進力”、”浮力”なんかを利用した【仙術】。朱雀系統の【
撃つ前に出鼻をくじかれた俺の行き場の無い想いを知ってか知らずか、ホンが退屈そうにシーが飛んで来た方法を説明してくれる。
フェイ・ラン同様に顔を合わせると【武道】を教えろと迫ってくるのが嫌で、練習を口実に逃げていたのだが、空から探しに来る相手では簡単に見つかってしまうな。
「私が【武道】を見に、
帝都での他国も招いた国を挙げての武術大会”
この世界は大きく分類して四ヶ国が存在しており、中央の”
戦争の代替え的な意味合いが強く、各国から猛者が選ばれ、その雌雄を決するのだ。
”武器”、”仙術”、”無手”の三部門が在り、驚いたことに数年前まで
六年前からフェイ・ランに”無手”を、三年前から”武器”を他国の”ダーフォ”と”タルワール”の猛者に奪われており、奪還がしたいのだそうだ。
フェイ・ランと同様に多すぎる
「
突っ込んでいくだけの単純なことで優勝できるだけでも十分だと思うのだが、それでは満足できないようだ。
「駄目よ! タイチは
シライシとの死闘からの心配させるから言っていなかった体調の不良を、ホンに言い当てられて少し驚いた。
「教えることについては止めないけどね、自分と他人の区別は付けるべきよ。自分の為の無茶なら止めないわ。他人の為の無茶はタイチの為にならないわ。体調不良の無茶をしてまで教えるのは許さない!」
俺の命の為、実力を付けるための練習は許しても、他人の、いつでも良いような事柄で無茶は許さないという強固な意志を感じた。
「お加減が悪いんですか? なら、無理ですね……」
体調不良と聞いて、学ぼうといき込んでいたシーも諦めたのか、少し落ち込んでいた。
ーーーーーー
「タイチ殿! 夕餉の支度が出来たようなので呼びに来ました。譲り受けた武器の”
俺が面倒を見ることになった
シーと同じくポニーテールがトレード・マークになっており、マスクのように黄色い
俺が”
「え!? タイチ様の武器は”クトネシリカ”にしたのではないのですか!!? 遠い昔に私の国から嫁入りした他国の言葉に似ているので、私は好きだったのですが」
「ふん! そんな古臭い言葉は言いづらいわ。”
ーー”クトネシリカ”・別名”虎杖丸”ーー
雪深きアイヌの英雄・ポイヤウンペが使っていたとされる
”
前の所有者、雪深き地方の出身であるシライシと、多くの精霊が憑いている俺が持つのに適していると名付けた俺の新しい武器。
ーーーーーー
シーが”クトネシリカ”、ホンとツァィが”虎杖丸”、言いやすい方で言えば良いと思うが、日本人の俺としては
武器の命名でアレコレ考えていると、置いてきてしまった遠き日の
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