”流れ”を作り、支配する者

 東・ヤー・25900、ツモられ、ロン・-1100

 南・チュイ・10900、振り込み、ツモられ・-4100

 西・ピン・26900、ツモられ、振り込み・-3100

 北・俺・36300、ロン(リー棒・回収込み)、ツモ・+9300



 俺の親で軽い手を二連荘して、東局が終了する。


「ふ~~。一区切りついたな。飲み物を頼むか。ついでに何か食う物でも。おい、軽い酒とツマミを」


「……餡蜜あんみつ。リンゴジュース


「ほっほっほ。タイチ殿が強くて、疲れますな~。渋い茶と砂糖菓子を。そちらも気兼ねなく頼んでも良いですぞ」


 東局が終わり、南局に移行する時に小休止のような時間が取られ、こちらにも注文を取りに給仕の女性が近寄ってくる。


「フフ~ン。ボクは緑茶で。お茶には、ちょっと五月蝿いので良いモノを、お願いしますね」


「私は、イチゴジュース


「僕は、ウーロン茶」


 精霊ジンリン達はに頼んでいるが、神に喧嘩を売るわけがないと判断し、そのままにしておく。



「あのぅ……まだ、タイチ様の、……ご注文を受けてないんですけど?」


「ん? ああ、俺は良い。が有る。リウやガンちゃん、精霊達のだけ頼む」


 気弱そうな給仕の女性が俺の注文を取りに来るが、手に持つタバコを掲げて固辞する。

 ヤクザの代打ちをしている頃からの防衛法で、敵地で敵に出されるものを一切、口に付けることはないのだ。



【実体化】していない精霊達の注文を聞きとれる給仕を、むやみに近づかせることも危険だからな。




 ーー南一局ーー



 東・25900

 南・11900、ロン・+1000

 西・26900、振り込み・-1000

 北・35300



 ーー南二局ーー



 東・26900、ロン・+1000

 南・11900

 西・25900、振り込み・-1000

 北・35300



 ーー南三局ーー



 俺が二万五千点原点割れの時にしたかっただろう戦法で、あっという間に南三局、ピン爺さんの親になった。

 俺からの直取り、ツモで点棒を奪うのは実力が拮抗してるピン爺さんに任せて、長丁場で倒す算段なのだろう。

 よほど手が良くない限りは、親以外で無理はしない考え___



 ___と、思うと思ったか!!!



「それを許す程の、ぬるい環境で鍛えられた訳じゃないんでね! ロン! 12000跳満!!」


 熱い茶で溶かした砂糖で、牌にあめ状の目印を付ける”ガン牌”。

 戦法を変えてきたことに気を取られていたら、見落としていただろう熟練の技。

 他の二人も自分達なりにの目印を付けていたが、ピン爺さんの目印は

 その全てを記憶し、逆用した俺を止められる者は、この南三局には存在しない!



 生前の熟練した技術と、全盛期の肉体の記憶力と視力が噛み合った俺の闘牌は止められない!!



 東・26900

 南・-100、振り込み・-12000

 西・25900

 北・47300、ロン・+12000



 ーー南四局ーー



 汚れた牌を入れ替え、新品で再開される終局。


「ほっほっほ。久しぶりの楽しい時間だの。この歳になって、技術で上回れるとは思いもしなんだわ。長生きするものじゃわい。では、どんなモノを見せてくれるかの?」


 最初と違って、脂汗を流しながら狼狽する二人を尻目にピン爺さんが喜色満面で笑う。


「よっぽど”麻雀”が好きなんだな。かわいそうに、楽しむ余裕が無くなってるじゃないか。ヤーもチュイも」


「この国の気性に。タイチ殿には、この世界と言ったほうがよいかな? 気性に合うのだ。若い頃から、もうゾッコンよ」


 昔を懐かしみ、これからの激闘に心を馳せているのだろうピン爺さん。

 全員の理牌が終わり、親の俺の開始捨て牌を待ちきれない様子だ。



「楽しみにしてるのを悪いが。勝負は、この半荘、この局で終わりだ。


「はて? の相場は大金貨100枚。まだ半分じゃの。良くても次の半荘は必要な筈……」



 ヤクザ、マフィアの情報網を侮ってはいない。

 俺が大金を必要としている理由と金額は、遅かれ早かれバレるのは分かっていた。

 対外的な誇りメンツを守るために、色々と難癖を付けてこないようにするための”賭場荒らし”!



 ”制裁”を選ばなかった時点で、武力での難癖は付けられないと判断しているのだろう。

 身請け代を増額する、自由になったジィェンに嫌がらせをするなどの行為を取らせないための”賭場荒らし”!!



 俺と、俺の縁者に手を出したら、武力と財力の両方に甚大な被害が出るぞ! との警告のための”賭場荒らし”!!!




 懐からタバコとライターを取り出し、一服する。


「もう1度、言う。



 ーーーーーー

 ーーーーー

 ーーーー

 ーーー


 ーー


 ー














「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!?? タイチ様のバカ!!! もおおおおお!!!!?? 嘘でしょ~~~~!!??」



 ガンちゃんの絶叫が響き渡る中、伏せていた手牌を、ゆっくりと、全員に見えるように倒して、宣言する。


天知テンホー、16000オール!!!」



「ほっほ___」


「馬鹿な!!?? まさか≪燕返し≫!?? ありえん!!???」


 ピン爺さんが引き笑いになり、ヤーが勢いよく立ち上がり、チュイが目を見開く。



「しゅごいです、タイチさん……あふん、」


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!??」


「え!?? ちょっとリウ!? ガン!?? どうするんですか!!?? コレ!!?」


 予想外の大物手に感動で気絶するリウ、俺のイカサマに気づいたガンちゃんがショックで転げまわり、そんな驚天動地に困惑するシン。




 うん、控えめに言っても、地獄絵図だな。




 東・10900、-16000

 南・-16100、-16000

 西・9900、-16000

 北・95300、天知・+48000






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