刺身

見知らぬ男三人がやむを得なく

一つの部屋に泊まることになり

何を語るべきか考えた末に

刺身の話題を選んだという


釣る人と食べる人と山の男が

一つの部屋で出した結論は

もはや海のなくなった世界では

刺身の話題すら胸を締め付ける


最後に残された部屋の最後の三人は

架空の刺身を食べながら朝を待った

誰も知らなかった夜の静寂の中で


最後に分かち合った最後の虚無は

無数の涙で新しい海を作った

誰も知ることのできない永遠の翌日



(「無責任」第二十四号より)

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