第38話 是正
「いったい 誰の術にハマっていたと言うのですか?」思わずウィリアムにつめよってしまった。
「わからん」
「わからん!とは これまたいかに!」
「重要なのは 素の状態であるお前のガードラインを互いに認識しておくことだと思うが?」
「そっちはどうなんです?」
「おれは 据え膳はおいしくいただく方だが
その気のない者に手を出す趣味はない」
「だったら ず~~~~と手を出さないでください!!
でも 四六時中警戒心を張り巡らしているのも 疲れるので・・
というか 自分が術にかからないようにするための技とかテクとかあるんですか?」
「ない」
「げ」
「俺は 術の対象となる感情を捨て去ったから 術にかかることはないと思っていたが・・それでも 迷ってしまったな。我ながらあきれたことに」
「どいうこと?」
「つまり 俗にいう色には迷わぬ自信はあったのだが
もっと素朴な『誰かと一緒に居て 安らぐとかくつろぐ』と言いう状態には流されやすかったとこの3日間で思い知らされたよ。」
「色云々は 私関わりたくないですけど、安らぐとかくつろぐとかには 激しく魅力を感じるということを知りました」
「そうか」ウィルはふっと笑った。
「ならば この3日の出来事は だれかの術にかかったのではなくて
我々二人して流されたのかもしれぬな」
「それはないと思う
警戒心が落ちるような術はあったのでは?」
「あー !」ウィルは居住まいを正しベッドから飛び降りて 居心地悪そうに行ったり来たりし始めた。
「なんです?思いあたることでも?」
「ある。そのー お前が帰ってきたときは 俺自身がくつろぐためにミストを使った直後だった。
警戒心を緩めリラックスするための薬草からの抽出物を水に溶かして 夜着にふきつけてあったのだ。
その後も そのう お前と一緒にくつろげるようにと俺のベッドの枕に その薬草を少しまぜてあった・・・
しかし まさか ・・ すまん」
ウィリアムは直角に体を曲げて謝罪した。
私は がっくりして 自分の枕に手を伸ばして彼にぶつけた。
「だけど 私が帰ってきたとき あなたはふだんのかっこうだったでしょ?」
「いや 」
少し考えてから
「確かに見た目はさほど違いがないかもしれないが、下着ナシの夜着だったぞ」
「昼着にミストをふきつけたりはせん!」
「はぁ~~~ もういいです。そういうことで・・・
もう なにがなんだか・・ 疲れました」ちょっぴり涙がにじんできた。
「す すまん 泣かせるような事態になってすまん」
「もう~~~~ 」頭をぽかぽか叩いて 自分で自分に気合を入れようとしたが・・・
「よせ」いきなりウィリアムに抱きしめられた。
おかげで 彼の腕に私の前腕があたって おかしなことになってしまった。
「もう~~~」
「頼むから 殴るなら俺の頭にしてくれ。
自分で自分を傷つけるような真似はするな」
「あのですね 今 自分で自分に気合をいれようとしたのであって
自分で自分を傷つける気はありません」
「えっ」ウィルの腕が私の体から離れたが まだ私の両腕をガードできる位置にはあった。
「展開が急でついていけません
なんで 急に出陣するんですか?
えーと えーと 人間の住むところは みんなウィリアムの王国ではないのですか?
なのになんで 水のある領土の確保って 侵略めいた話になるのです?
魔物の国に出陣するはずではなかったのですか?
いったい 全体 明日から あなたはどこに行くの?」
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